転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





第141話 綺麗事

 

 

 

シンは両手を拘束され、カガリたちの前に引き出されていた。

トモはカガリたちから一歩離れ周囲を警戒していた。

 

「デュランダル議長?我が国は少なくとも貴国に対して不利益になるような事をした覚えはありません。

貴国の兵士がカガリ様を襲撃するなど──これはあなたの指示ですか?」

 

「いえ!とんでもない!そのような事は決して!」

 

アリサの追及に、デュランダルは必死で否定した。

当然である。

どこから見ても非はプラント側にある。

それこそオーブが核の雨を降らせても、世界中の誰もオーブを非難しないほどの非が。

 

「中立だった我が国に対し、一方的に『敵のMSを製造している』と決めつけて攻撃してきたのも貴国でしたね?

我が国は前大戦に関わるつもりがなかったからこそ中立を選択していたのに。今回もまた同じ理由ですか?」

 

「いえ!決してそのようなつもりは!」

 

「これまでの事を考えますと、あなた方の中で“一方的に結論が出ていて”、それを理由に戦火を拡大しているようですが?」

 

アリサの声は冷たかった。

 

「あなた方が何を思おうが、何をやろうが自由です。ですが──他国にそれを強要するなら、こちらも相応の対応をさせていただきます。

よろしいですね?」

 

「そ、それは……」

 

デュランダルは反論できず、口をつぐむしかなかった。

アリサの主張は事実しか述べていない。

客観的に見れば、どちらが正しいかは明白だった。

しかも実行犯が目の前にいる。

弁解の余地はなかった。

 

「アリサ、そのぐらいにしておけ」

 

「カガリ様?」

 

「私は無事だった。それでいいじゃないか」

 

「……本当によろしいのですね?」

 

「ああ……今さら戦争なんて御免だ」

 

「わかりました」

 

アリサはデュランダルに向き直った。

 

「デュランダル議長。カガリ様のご希望により、今回の件は不問とします。

ただし後ほど大使館を通じて正式に抗議させていただきますので、ご了承下さい」

 

「はっ!それはもちろん」

 

デュランダルは安堵しかけた。

──その瞬間。

拘束されたシンの口から、その安堵を吹き飛ばす言葉が飛び出した。

 

「さすが“綺麗事”はアスハの御家芸だな!」

 

「シン!」

 

「戦争は御免だと?大層な綺麗事だな!防衛は大成功?犠牲はほとんどなかった?

そんな綺麗事で誤魔化せれば、あんたらにとっちゃ巻き添えで死んだ奴は“ただの不運”で片付けられるんだろうな!」

 

「シン!」

 

「……連れていけ」

 

衛兵がシンを連れていく中、アリサはデュランダルに尋ねた。

 

「彼はいったい?」

 

「オーブからの移民で……オーブに侵攻を受けた際に家族が亡くなったようです。その逆恨みでしょう」

 

「オーブの侵攻って……」

 

カガリは絶句した。

あれは軍にも民間人にもほとんど被害が出ず、戦史では「理想的な防衛成功例」とされている。

それを恨まれるなら、他の戦争などどうなるのだろう。

しかもあれは一方的な侵略。

撃退する以外の選択肢はない。

犠牲者が出るのが嫌なら、交戦せず降伏すればよい──

だがそれは独立国家としての自殺行為だ。

オーブの対応は何も間違っていない。

そして完璧だった。

それでもシンのように国を恨む者は存在する。

 

(そんなの……どうすればいいんだ)

 

カガリは答えの出ない問いに沈んだ。

 

翌日。

カガリたちは、アーモリーワンを離れる前に独房に入れられているシンに面会した。

トモは周囲を警戒していた。

“昨日と同じ”どころか今度は“複数での襲撃”があっても不思議ではない。

トモの警戒は当然だったがそれには理由があった。

 

「アリサ、カガリ様を襲おうとしたのがあの兵士だけとは限らないわ。

プラントの連中であれば、自分達の利益の為であればどのような理由をこじつけても不思議は無いわ。

プラントがどのような苦境に陥っても“自分の利益の為”であればどんな愚行もためらわないでしょうね」

 

トモの言葉にアリサは絶句した。

 

「そんな事があり得るの?仮にもコーディネーターは自分たちを優良種と自称しているんでしょう?

カガリ様を襲撃して『それが何を引き起こすのか?』という程度の事さえ理解できないなんて・・・」

 

「プラントの連中は『何があっても自分だけは大丈夫だ』と何の根拠も無く信じ込んでいるわ。

それこそプラントが滅ぶような事になってもね。

そして『優良種の自分達はナチュラルにどんな事をしても許される』と本気で思い込んでいるわ。

他人を詐術で言いくるめて、自分が直接実行しなければ大丈夫と思っているんでしょうね」

 

地球ではもはや誰にも顧みられる事がない『コーディネーター優生主義』はプラントではまだ一般的だった。

いや、一般的どころかそれがプラントの『常識』だった。

プラント出身であるトモの言葉は説得力があり過ぎた。

 

「あの兵士の背後関係を確認した方が良いわ。何もなければそれで良し。そうでない場合は・・・」

 

「そうね。確認が必要ね・・・」

 

こうしてカガリとアリサはシンが入れられている独房の前に立った。

 

アリサはそんな独房の中のシンに冷たく声をかけた。

 

「あなたがシン・アスカですか。オーブ防衛線で被害にあった“不運な民間人”の生存者」

 

「不運だと?」

 

「それ以外にどう言えというんです?

軍にも民間人にもほとんど犠牲者は出なかった。あなたの家族の周辺にいた者を除いて。

オーブで誰に聞いても同じことを言うでしょうね。『あれは不運だった』と」

 

「貴様!取り消せ!そんな言葉一つで父さんを!母さんを!マユを!みんなの死を片付けるな!」

 

鉄格子越しにシンを見つめるアリサの目は、どこまでも冷たかった。

 

「オーブは完璧に護られました。タイガ様が、『オーブの虎』が何年も前からオーブの護りを固める手筈を整えていたからです。

そしてそれを『オーブの白い流星』が成し遂げました。

これ以上、世界中のどこの国が『完璧に国を護る』事が出来ると言うのです?」

 

「そ、それは・・・」

 

「『オーブの虎』と『オーブの白い流星』でも出来なかった事が、他の国でなら可能だったとでも言いたいのですか?」

 

「うっ・・・」

 

そんな事は不可能だった。

他の国ならむしろ何の対策も打てず、そのままストライクダガーに国土を蹂躙されていても不思議ではない。

タイガはそれを防ぐ為に囮の巨大砲台を建設し、敵を集め、それをまとめて撃破する状況を作り出した。

しかもそれを実行したのは、もはや伝説の『オーブの白い流星』なのだ。

それ以上は人の手では不可能だ。

それ以上を望むであれば、それはもはや全てを見透す神の領域でしかない。

 

「『オーブの虎』と『オーブの白い流星』でも出来なかった事。それが『不運』以外の何だと言うのです?」

 

シンの家族を襲った流れ弾は、囮の巨大砲台に集まった部隊とは別の部隊によるものだった。

いくらアムロでも同時に遠く離れた別の場所への対処は不可能だった。

しかもその敵部隊は即座に出撃したアストレイによって撃破されている。

オーブの対応はこれ以上ないほど完璧だった。

流れ弾はその間隙に起こったものだった。

それは『不運』以外の何物でもなかった。

 

「・・・だ、だが、それでも俺は・・・」

 

シンは何も言い返せず黙り込むしかなかった。

 

「・・・カガリ様」

 

「な、なんだ?」

 

「この者は本当に個人的理由でカガリ様を襲ったようです。誰かにそそのかされたわけでも、思考誘導されたわけでもない。

ただ“家族が死んだ理由”に納得できず、それをぶつける対象としてアスハ家──手近にいたカガリ様に向けただけのようですね」

 

「アリサ……お前、それを確かめるためにわざと……」

 

「背後関係がないのなら、この者に用はありません。行きましょう」

 

「あ、ああ……ちょっと待ってくれ」

 

カガリはシンの前に立ち、静かに言った。

 

「お前の家族が亡くなったことは、残念で悲しく思う。だが私は──お前に謝らない」

 

シンが息を呑む。

 

「もし私が謝ったら、あの戦いが間違いだったことになる。オーブを守るための戦いが、間違いだったことになる。

それは国を守ろうと必死に戦った皆の努力を否定する行為だ」

 

カガリは続けた。

 

「だから私は謝らない。でも──納得できないなら、また私を殺しに来い。今度は間違いなく私を殺してみせろ。

ただし私も死にたくないから抵抗する。その結果がどうなろうと、私は受け入れる」

 

「カガリ様、そろそろ」

 

「今行く。……家族を亡くしたのはお前だけじゃない。それは忘れるな」

 

そう言い残し、カガリは去っていった。

 

――

 

「……わかっているよ、そんな事!」

 

独房に残されたシンは、誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「俺のやってる事は……ただの八つ当たりだって……!」

 

オーブ防衛戦が話題になる時、誰もが誇らしげに語る。

自分たちの国が、軍が、アスハが、自分たちを守ってくれたのだと。

戦争なのだから犠牲が出るのは当たり前。

それが“ほとんど無かった”のだから、喜ぶのは当然だ。

だが──

シンはその喜びの輪に入れなかった。

その中に、自分の家族はいない。

周囲が喜びにあふれる中、自分だけが異物だった。

あの国には、自分の居場所はない。

それがプラントに来た理由だった。

 

アスハが無能なら憎めた。

卑怯者なら恨めた。

臆病者なら諦められた。

だが──

アスハは正しかった。

国も軍も全力を尽くしていた。

それでも家族は死んだ。

何が悪い?

何も悪くない。

何か間違った?

何も間違っていない。

なのに──

なぜ自分の家族はいない?

答えは出ない。

 

「・・・」

 

シンが見上げる独房の天井は、どれだけ見つめても何も返してこなかった。

 

シンが再び立ち上がるには、それから少なくない時間が必要だった。

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。

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