転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
独房の天井は、どれだけ見つめても何も返してこなかった。
薄暗い照明。
冷たいコンクリートの床。
鉄格子の向こうには誰もいない。
シン・アスカは、膝を抱えたまま動けずにいた。
(……やっちまった)
カガリを殴ろうとした瞬間のことを思い出すと、胃の奥がひっくり返るような感覚が襲ってくる。
(なんで……なんであんなことを)
理由は分かっている。
分かっているからこそ、苦しい。
怒りをぶつける相手が欲しかった。
憎む相手が欲しかった。
自分の家族を奪った“何か”に、拳を叩きつけたかった。
でも──
本当は分かっていた。
(オーブは、カガリ・アスハは……悪くない)
オーブは正しかった。
国を守るために戦っただけだ。
誰も間違っていない。
間違っていないのに──
自分の家族は死んだ。
(……なんでだよ)
シンは拳を握りしめた。
(なんで俺だけ……なんで俺の家族だけ……)
怒りが湧く。
でも、その怒りはすぐにしぼむ。
怒りの奥にあるのは、もっと重くて、もっと暗いもの。
(俺は……ただの八つ当たりだ)
アリサに言われた言葉が胸に刺さる。
「不運な民間人」
「不運だった」
「それ以外にどう言えというんです?」
あの冷たい声。
あの無表情。
(……あいつは正しい)
正しいからこそ、腹が立つ。
正しいからこそ、逃げ場がない。
(俺は……不運だっただけなのか?父さんも、母さんも、マユも……ただの“不運”で死んだのか?
それが“運命”だったとでも言うのか?)
シンは頭を抱えた。
(そんなの……そんなの認められるわけないだろ……!)
涙がこぼれた。
悔しさでも、怒りでもない。
ただ、どうしようもない虚しさだった。
カガリの言葉が胸に残る。
「私は謝らないぞ」
「納得できないなら、また私を殺しに来い」
「家族を亡くしたのはお前だけじゃない」
カガリの言葉は、優しさでも慰めでもなかった。
しかし──
嘘もなかった。
(……あの人は、逃げなかった)
自分の怒りを正面から受け止めた。
謝って誤魔化すこともしなかった。
(……強いな)
シンは悔しくて、しかしどこかで羨ましかった。
自分は弱い。
怒りに飲まれ、悲しみに溺れ、誰かに噛み付かなければ立っていられない。
(俺は……どうすればよかったんだよ)
答えは出ない。
独房の中は静かだった。
静かすぎて、自分の呼吸音だけがやけに大きく聞こえる。
(……俺は、どこに行けばよかったんだ)
オーブには居場所がなかった。
喜びの輪に入れなかった。
誰も悪くないのに、自分だけが取り残された。
だからプラントに来た。
でも──
ここにも居場所はなかった。
(俺は……どこにもいないんだな)
胸が締め付けられる。
(父さん……母さん……マユ……俺、どうすればよかったんだよ……)
返事はない。
返ってくるはずもない。
シンは膝に顔を埋めた。
涙が床に落ちる音だけが、独房の夜に響いた。
泣き疲れて、シンはいつの間にか眠っていた。
目を覚ました時、独房の外には誰もいなかった。
昨日と同じ。
何も変わらない。
でも──
シンの胸の奥には、ほんのわずかに“何か”が残っていた。
怒りでも、悲しみでもない。
(……俺は、まだ終わってない)
それが何なのかは分からない。
でも、確かにそこにあった。
シンはゆっくりと立ち上がった。
(俺は……まだ、生きてる)
その事実だけが、彼を支えていた。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
皆様に『大人気』のシンちゃんの内面にスポットを当てた回でした(笑)
何故彼はここまで『大人気』なのでしょう?
今までで最大級の感想欄の皆様の反応に恐れおののく作者です。
実際、家族を亡くした10代半ばの少年に『現実を受け入れろ』というのは難しいのではないでしょうか?
だからと言ってシンちゃんの行動は原作でも到底正当化出来るものではありませんが。
やはり周囲の大人たちのフォローが足りなかったのでは?としか思えないですね。
まあ、何せC.E.ですからねえ?
しばらく期間は空きますが、この後もちゃんとシンちゃんには『活躍』の機会があります(笑)
次回お楽しみください。