転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
タイガの主張は簡潔だった。
「人は争うから危険なのではない。争いが起きたとき、何を失うかを知っているから、恐れる」
「あなたの計画は、その恐怖にこう答えた」
「――“最初から役割を決めておけば、失うものは最小で済む”」
断定ではない。
要約だ。
「それは、正しい“対策”です」
一瞬、視聴者の思考が揺れる。
「……え?」
そのままタイガは言葉を続ける。
「社会全体にとっては」
「ですが」
声が、わずかに低くなる。
「恐怖が他者によって“管理される事”と、恐怖を自分で“乗り越える事”は、同じではありません」
「議長」
タイガの言葉は続く。
「あなたは、人類から“選択する自由”を取り上げようとしている」
タイガは一拍置いてから続けた。
「次の質問は、ここからです」
「『競争が激化する』『選択が奪われる』『遺伝子による固定化が行われる』
それで恐怖を“管理する”ことが出来ますか?」
スクリーンの中で、デュランダルは一瞬だけ目を伏せた。
怒りではない。
計算でもない。
静かな呼吸。
落ち着き、慈しみ、そして“上からの理解”。
「アスハ特別顧問。あなたの主張は、すでに理解しています」
市民のざわめきが落ち着く。
議長は相手を敵として扱わない。
それだけで、多くの人は「公平さ」を感じてしまう。
「競争が激化する」
「選択が奪われる」
「遺伝子による固定化」
デュランダルはタイガの言葉を復唱し、そして言う。
「ですが――それは、無秩序な自由を前提にした恐怖です」
微笑む。
「人は皆、同じ才能を持って生まれてくるわけではありません。
努力だけでは越えられない壁があることを、私たちは歴史から学んできました」
スクリーンに、労働事故、貧困、戦場の映像が流れる。
「ディステニープランは、才能を“縛る”ものではない。才能を最も活かせる場所へ導く道標なのです」
市民の中に、小さな安堵が広がる。
「……確かに」
「向いてない仕事で苦しむよりは……」
デュランダルはその反応を逃さない。
「人生を他者が決めるのではありません。遺伝子という事実が示す“可能性”を、社会が正しく受け止めるだけです。
不可能なことに挑戦し続け、傷つき、憎しみを生む社会――それこそが戦争の原因でした」
一拍。
「私は争いを終わらせたい。誰もが無理を強いられない世界を作りたいのです」
画面の向こうで、デュランダルはタイガを見る。
「あなたの理想は尊い。ですが――人は理想だけでは救われない」
その言葉は鋭くはない。
だが、重い。
群衆の多くが、まだこの時点ではデュランダルの側に立っていた。
論理は、まだ彼の手の中だった。
タイガは、デュランダルの言葉が終わるのを最後まで待った。
被せない。
遮らない。
それだけで、彼が「扇動ではない」ことは伝わる。
「議長の言葉は、一見するととても優しい」
タイガの声は低く、落ち着いていた。
「『才能を活かす』『無理をさせない』『争いを減らす』――どれも否定しません」
市民の視線が集まる。
「ですが」
タイガは、そこで初めて語気を強めた。
「競争は、なくなりません!」
デュランダルは姿勢を正し、声を整えて反論する。
「ディステニープランは、遺伝的適性に基づき、最も社会に貢献できる役割へ配置する――
それだけです。競争は減り、努力は報われ、無意味な衝突は消える」
市民の中から、「それなら平等だ」という呟きが漏れる。
「では確認します」
タイガは、淡々と問いを重ねる。
「あなたの制度では、同一適性の人間が複数存在した場合、どうなりますか」
デュランダルは迷わない。
「より優れた成果を出した者が――」
タイガは静かに頷く。
「つまり、競争は消えない」
「むしろ――同じ土俵に立つ者同士でより激化する」
ざわり、と空気が揺れる。
「特にコーディネーター社会では」
ざわり、とさらに空気が揺れる。
「なぜなら、ディステニープランは“最適化”を前提にしているからです」
「最適化とは、常により良い結果を求める行為。つまり――同じ適性を持つ者同士で、競争が起きる」
スクリーンの向こうで、デュランダルの表情がわずかに動く。
「議長が言う『向いていない仕事をしなくていい』という世界では」
「向いている者同士が、永遠に比べられ続ける」
タイガは、兵士、技術者、研究者――あらゆる職種を列挙する。
「軍人は、より優れた軍人と」
「技術者は、より効率のいい技術者と」
「研究者は、より成果を出す研究者と」
「敗者はどうなりますか?」
沈黙。
「“適性はあるが、最適ではない”」
「その烙印を押された者は、次に何を選べます?」
誰かが息を呑む。
「再挑戦ですか?転向ですか?」
タイガは首を横に振る。
「いいえ」
「次は、“もっと下の適性”へ送られるだけです」
声は冷静だが、内容は冷酷だった。
「これは競争を無くす制度ではない。競争を人生全体に拡張する制度です」
市民の中で、理解が追いついた者から顔色が変わる。
「しかも」
タイガは続ける。
「この競争に参加しない自由は、存在しない。拒否すれば、社会の最適化を阻害する存在になる」
「つまり――制度そのものが、従わない者を
ここで初めて、デュランダルが言葉を挟もうとした。
だが――タイガは止まらない。
「そして、これはコーディネーターだけの話ではない」
視線が地球側へ向く。
「ナチュラルは、この競争に最初から不利な立場で強制的に放り込まれる」
声が重くなる。
「才能がないからではない」
「遺伝子で“劣っている”と定義されるからです」
タイガの脳裏には、幼い頃からコーディネーターに追いつこうと努力していたというアズラエルの姿が浮かんでいた。
論戦の軸が、「理想 vs 理想」から「構造 vs 現実」へと変わった。
タイガは一度だけ視線を落とした。
迷いではない。
言葉を選ぶための間だった。
「議長は、『努力では越えられない壁がある』とおっしゃった」
静かな声。
「――その通りです」
デュランダルの表情に一瞬安堵が走る。
だが、それはすぐに消える。
「ですが、ディスティニープランは」
タイガははっきりと言う。
「その“越えられない壁”を、ナチュラルにだけ登れと命じる制度です」
空気が張りつめる。
「コーディネーターは遺伝子で最適化された状態から競争を始める」
「一方で、ナチュラルは最初から“劣った存在”として定義された上で、同じ競争に放り込まれる」
タイガは一切感情を込めない。
だからこそ、残酷だった。
「努力しろ、と言うでしょう」
「挑戦しろ、と言うでしょう」
「ですが」
「勝てない前提の競争に参加し続けることを、挑戦とは呼びません」
誰かが喉を鳴らす。
「それは、消耗です」
タイガは踏み込む。
「しかも、この競争は一代で終わらない」
「子どもに引き継がれる」
「孫に引き継がれる」
「曾孫に引き継がれる」
「遺伝子で“適性が低い”と判定された家系は」
「未来永劫、『挑戦し続けて負ける役』を割り当てられる」
スクリーンの前で、誰かが小さく首を振る。
「……それは、努力じゃない」
タイガはその呟きを拾うように続ける。
「不可能なことへの挑戦を否定するのがディステニープランなら」
「同時に」
「可能性がある者だけに未来を与える制度でもある」
「その可能性が与えられるのはコーディネーターだけです」
まっすぐデュランダルを見る。
「それは、平和ではありません」
「身分制度です」
一拍。
「しかも、遺伝子という覆せない理由を使った世襲制の身分制度です」
この言葉で、初めてデュランダルは即答できなかった。
「議長」
タイガは静かに問いかける。
「ナチュラルに、何を望めと?」
「勝てないと知りながら走り続けろと?」
「それを“平和の代償”と呼ぶのですか?」
沈黙。
この瞬間、論戦は決定的に変わった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
デュランダルの持論は
「コーディネーターはナチュラルより優れている」
「優れている者は劣った者より優遇されなければならない」
「だからコーディネーターは常にナチュラルより優遇されなければならない」
という論理に基づいています。
極論すれば根拠も無く「無条件にコーディネーターを優遇しろ!」と主張しているだけです。
しかし、コーディネーターは「“真のナチュラルの天才”に劣り、戦闘ではニュータイプに劣る」という現実があります。
つまりデュランダルの持論は最初から破綻しています。
彼がそれに気付く事がなかった事がその後、彼に破滅をもたらす原因になります。
そしてプラントの『常識』として
「優れたコーディネーターがナチュラルより優遇されないのは差別」
「ナチュラルと同じ扱いを受けるのはコーディネーターに対する弾圧だ!」
というのがあるのではないか?
原作を見ているとそう思えてなりませんでした。
そうでなければ「いくら民度が終わっているC.E.でもあそこまで酷くならないじゃないかなあ?」と言うのが私の感想です。
次回お楽しみください。