転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
タイガは、スクリーンの向こうの群衆ではなく、まだ生まれていない『誰か』に向けて語り始めた。
「議長の構想は、一世代の問題ではありません」
声は淡々としている。
「ディスティニープランは、出生時点で人生の選択肢を狭める制度です。
それは、本人の意思や努力以前に“どの家に生まれたか”で未来が決まる」
ざわめきが走る。
「才能がある者の家系は、次の世代でも『期待される才能』を前提に育てられる。
才能がないと判定された家系は『挑戦すること自体が無駄だ』と、最初から教え込まれる」
タイガは一度だけ間を置いた。
「これが一代で終わるなら、まだ救いはある。ですが、評価基準は遺伝子です」
「変えられない」
「努力でも」
「意思でも」
「覆せない」
「つまり、この社会は、“改善の余地がない前提”で未来を設計している」
誰かが息を呑む。
「努力は評価されます。成果も評価されます。しかしそれは、最初に許された範囲の中でのみ」
タイガは、はっきりと告げる。
「ディスティニープランにおいて、人生は“選択”ではなく“割り当て”です。
割り当てられた枠からはみ出ることは、
空気が凍る。
「議長は、争いを終わらせたいと言いました」
タイガは静かに首を振る。
「ですが、それは争いを“未来に持ち越す”だけです。
今の世代が我慢すればいい?次の世代が受け入れればいい?その次も?」
「それは平和ではない。沈黙を世襲させているだけです」
そして、決定的な一言。
「子供に、『お前の人生はもう決まっている』と告げる社会が、どうして『人類の未来』を語れるのですか?」
スクリーンの中で、デュランダルはついに言葉を失った。
「議長」
タイガは問いかける。
「ヘルマン・アインシュタインという人物を知っていますか?」
「それは・・・」
アインシュタインという名前から想像はつく。
「20世紀最大の科学者アルバート・アインシュタインの父です」
「彼は遺伝子的に優れた学者の家系でもなく、豊富な知識を持っていたわけでもない」
「ただの営業マンです」
「もし、アルバート・アインシュタインがディスティニープランが施行された国に生まれたらどうなるでしょうか?」
「アインシュタインに才能に応じた環境が与えられるでしょうか?」
「・・・」
デュランダルは沈黙した。
「アインシュタインが書いた論文は受け入れられますか?」
「いいえ」
「ディスティニープランの“割り当て”からはみ出た
「!!!」
周囲に戦慄が走った。
「アインシュタインがいなければ、我々が現在こうして宇宙まで進出する事は出来なかったでしょう」
「20世紀最大の科学者でさえ、その才能を認められず、“貴重な人類の財産”が失われる事になります」
「“たかが一国家の”「遺伝子を優先する」という政策によって“貴重な人類の財産”が失われ人類の歴史は停滞する事になります」
「同じ事が起きないとなぜ言えますか?」
「例え20世紀最大の科学者と同等の才能を持っていても、それが認められる事はない」
「そんな世界が人類の未来ですか?」
「・・・」
デュランダルは答える事が出来なかった。
「議長」
タイガは問いかける。
「ディスティニープランでは、誰が人生を選ぶのですか?」
沈黙。
「本人ですか?評議会ですか?遺伝子ですか?」
タイガは、答えを待たなかった。
「――いいえ」
「親です」
空気が重くなる。
「生まれる前に、どれだけ遺伝子調整に金をかけたか」
「どの国で?どの階層で?どの情報を持って?」
「そのすべてが、子どもの人生を決定します」
タイガは告げる。
「ディスティニープランは、人生の選択を“本人以外”に委ねる制度です」
誰かが声を飲み込む。
「努力しても、成果を出しても『遺伝子的に適性がない』と判定されれば、それは“選択ミス”ではなく“設計ミス”になる」
タイガは強く言う。
「責任は、本人に帰ってこない!」
「失敗したのは努力不足ではない!才能不足でもない!“生まれさせ方”が悪かったことになる!」
多くの市民が息を止めた。
「つまり」
タイガは結論へ進む。
「この社会では子どもは自分の人生に責任を持てません。なぜなら“最初から他者が決めた人生を生きている”から」
一拍。
「それを、自由と呼べますか?それを、平等と呼べますか?」
タイガは視線をカメラへ向ける。
「これは、人生の他者責任を固定化する制度です。
親が悪い。社会が悪い。制度が悪い
――そう言い続けるしかない人間を、量産する」
デュランダルの喉が動く。
彼は理解してしまった。
この制度では、誰も“大人”になれない。
そして、タイガは比喩を捨てた。
「議長」
「これまでの話は理念でした。ここからは現実です」
「ディスティニープランは、遺伝子を基準に人生を配分する制度です」
「そして――
遺伝子は、調整できます」
空気が凍りつく。
「誰でも同じだけ調整できるわけではない」
「技術はあっても、費用は有限」
タイガは淡々と告げる。
「つまり、遺伝子の質は経済力で決まる」
ざわめきが広がる。
「裕福な家庭は、より高度な調整を受けさせる。貧しい家庭は、最低限か、あるいは何もできない」
「結果、才能は、世代ごとに“蓄積”される」
タイガは結論を言った。
「これは、資本による遺伝的階級社会です」
誰かが呻く。
「議長は“貴族制ではない”と言うでしょう。ですが、違いは名前だけです。
評議会に集まるのは、最も高額な調整を受けた者たち。彼らの子どもも、同じ水準の調整を受ける」
「一方で、調整に金をかけられなかった家系は、永遠に“適性が低い側”に留め置かれる」
タイガは静かに言い切る。
「これは、遺伝子による世襲貴族制です」
沈黙。
「そして」
タイガは最後の釘を打つ。
「その下にいるナチュラルは、制度的に“従うしかない存在”になる」
「適性で劣る」
「選択肢が少ない」
「競争に勝てない」
「だから、従うのが合理的」
タイガは首を振る。
「それは平和ではない」
「支配です」
ここで、デュランダルは完全に言葉を失った。
反論は不可能だった。
なぜなら、ディスティニープランは“より良い人類”を作るために経済力を否定できない。
それを否定すれば、制度そのものが崩れる。
タイガは静かに告げた。
「議長」
「あなたの計画は、争いを終わらせない。争いを“固定化”するだけです」
「あなたがやろうとしているのは
『評議会が貴族』
『コーディネーターが平民』
『ナチュラルは奴隷』
として階級を永遠に固定化する、
『遺伝子の名を借りた奴隷制度』です。
しかも経済力の差によってコーディネーターの間でさえ、子々孫々、未来永劫階級が固定化されます。
それが“平和”ですか?」
デュランダルの返事を待たずにタイガは続ける。
「議長」
「ディスティニープランが実行されれば、一部の富裕層のみを子々孫々まで優遇する“世襲制身分制度”となります」
「それは未来永劫コーディネーターが支配者として君臨するための“奴隷制度の創設”に他なりません」
「経済力によって人生が決定され、富める者は栄華を極め、逆に貧しければ、アインシュタインのような才能を持っていても、血の滲むような努力をしても報われない」
「これが『平等』だと、『競争』だとおっしゃるのですか?」
「・・・」
デュランダルは反論できず沈黙するしかなかった。
タイガはこれまでの議論から導かれる結論を口にした。
「議長」
「ディスティニープランとは、コーディネーターに対して、極論すれば『経済的に裕福なコーディネーターにのみ有利なシステム』でしかありません」
「それがあなたの理想ですか?」
スクリーンが沈黙に包まれる。
この瞬間、ディスティニープランは論理的に、完全に敗北した。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
ディスティニープランで分かるのはあくまで「可能性」だけです。
「可能性」を持つ者のみが集まれば競争は却って激化するのでは?
ナチュラルにそれに参加しろと?
それって唯の奴隷制度では?
原作を見てそれらを疑問に思っていました。
ディスティニープランが破綻するのは当然でしかありません。
次回お楽しみください。