転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
新章“仮初の黄金時代編”開始です。
どうぞお楽しみください。
第155話
オーブからキラを評議会議長に推薦されたとき、アイリーンは最初こそ戸惑った。
プラントでは成人扱いとはいえ、まだ二十歳にも満たない若者を議長に――。
推薦とは名ばかりで、敗戦国であるプラントにとってはほとんど“命令”に等しい。
だが、キラがヒビキ博士の実子であること。
そして“メンデル生まれ”であることを知った瞬間、アイリーンは全面的に賛成へと転じた。
遺伝子工学の天才・ヒビキ博士。
その実子であり、メンデルで生まれたコーディネーター。
それだけで、事情を察するには十分すぎた。
メンデルで行われたとされる数々の噂――
非合法、非人道、後ろ暗い実験の数々。
キラはその
事情を知る者にとって、「メンデル生まれ」という言葉はそれ以上の詮索を諦めさせる呪文だった。
むしろプラントの上流階級こそ、メンデルに依頼していた“罪”を隠したい立場だった。
何しろメンデルに関してはプラントが、それも上流階級の者が全面的に関わっていたと言える。
わざわざヒビキ博士に依頼するような者は、ラウ・ル・クルーゼを産み出した
アル・ダ・フラガのように、非合法もしくは合法すれすれの行為で依頼した者が多く、
表沙汰に出来るようなものではなかった。
しかもヒビキ博士に依頼するような者は自分の要望を叶える事を最優先し、
依頼と異なる形で生み出されたコーディネーターを省みる事はほとんどなかった。
• 望んだ目の色と違う
• 髪の色が違う
• もっと高い知能を望んでいた
• この程度の能力しかないのか
そんな理由で“商品として不良品”扱いされ、生まれた子どもたちは放置された。
クルーゼが受けた仕打ちは、決して例外ではなかった。
だからこそ、キラの出自が「メンデル」と知れた瞬間、プラント上層部は一斉に口を閉ざした。
自分たちの醜聞が暴かれることを恐れたのだ。
しかもキラの能力は、既存のコーディネーターを遥かに凌駕していた。
ヒビキ博士の実子であり、プラントの罪と技術の“結晶”。
疑う余地など、どこにもなかった。
プラント市民はキラの議長就任を歓迎した。
自分たちの頂点に立つ“スーパーコーディネーター”が国家の頂点に立つ――
それは彼らの理想そのものだった。
「遺伝子的に優れた者が、遺伝子的に優れた者を統治する」
彼らは“理想の時代”が来たと信じて疑わなかった。
だが、その頂点に立つ本人の内心は――
「理想を抱えて溺れ死なないといいねえ?」
という、冷たく突き放したものだった。
誰も、その心の内を知る者はいなかった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。