転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「まず僕たちの状況を確認しておこうか?」
そう言ってキラが語り出したのはプラントの現状だった。
「ユニウス条約で戦力が制限されている現在のザフトでは防衛だけで精一杯だ。
君の言う通り地球連合に対抗するなど不可能だ。
しかしプラントは地球のカーペンタリアとジブラルタルに拠点を確保している。
万一の時のためにもこれらを放棄する事は出来ない。
つまりプラントは唯でさえ乏しい戦力をカーペンタリア、ジブラルタル、本国に分散しなければならない。
そしてプラントの食糧はほぼ完全に輸入だ。
これが途絶えたらプラントは滅ぶ。
ここまでは良いかな?」
イザークは頷いた。
「国内治安に部隊を回すと、自由に動かせる部隊はほぼ食糧輸送の護衛に充てる事になる。
カーペンタリアとジブラルタルの部隊にも交代要員や予備兵力は必要だからね。
この状況で地球連合とトラブルになって食糧輸入が途絶えたらどうなる?」
「それは・・・」
考えるまでもなかった。
二度までも地球に危機をもたらし、人類史上最大最悪の大虐殺を実行したプラントを
地球連合が放置する事などあり得なかった。
「今の僕たちに出来ることは、地球連合に媚びへつらい、何とか煽てて良い気分になってもらい、
地面に這いつくばってでも、何とか食糧輸入を続けてもらう事さ。他の選択肢は無い」
「それは!」
「不満かい?でも地球連合が本気を出せば僕たちは直ぐ潰されるよ?
通常戦力では地球連合に対抗出来ないし、大規模破壊兵器を使用すればどうなるか君も理解しているよね?」
「・・・」
イザークは何も反論出来なかった。
プラントでは二度も敗戦したにも関わらず独立を保てた事で
「所詮ナチュラルなどこの程度だ!」
「コーディネーターに勝てるはずがない!」
と楽観論が蔓延り、地球を軽視する風潮が広がっていたが、
実際に地球連合やオーブと対峙していたザフトの兵士にとっては
「お前は何を言っているんだ?」と大声で言いたいところだった。
撃っても撃っても減らないあの地球連合の物量に対抗する?
抵抗する事も、逃げる事も出来ない、あの「オーブの白い悪魔」と対峙する?
どちらも唯の自殺行為でしかなかった。
地球連合が本気でプラントを滅ぼすつもりになればそれは簡単な事だった。
抵抗しても滅びるまでの時間が多少長くなるだけに過ぎない。
ならば地球連合にプラント攻撃の口実を与えない事。
選択肢は他に存在しなかった。
「その重要な護衛隊をなぜ自分が指揮する事になるのですか?」
イザークの疑問はもっともであった。
「護衛隊はザフトが自由に動かせる最大戦力だ。
輸送船団に同行してプラントと地球を往復してもらう事になる。
その時に地球連合と無用なトラブルを起こした場合、その結果が何をもたらすのか指揮官が理解している事は重要だからね。
もし護衛隊が地球とトラブルを起こせばそれでプラントは滅亡だ。
正式な指揮官は別に任命するけど実質的には君が護衛隊の最高指揮官だと思ってくれて良い」
「実質ですか?」
「いくら何でも地位や年齢を無視して君を最高指揮官に任命しても誰も従わないだろう?」
納得であった。
いくら優秀であってもまだ二十歳にもならない若造、いや子供に、大の大人が「あれをやれ。これをやれ」と頭ごなしに命令されて素直に従うわけが無かった。
階級制度が導入されていないザフトであれば尚更だった。
「地球連合とトラブルを起こさない為にはザフトの兵士の素行は徹底的に取り締まる必要がある。
場合によっては兵士の感情を無視して見捨てる場合もある。
今のプラントに必要なのは「自分のプライドの為にプラントを道連れにする愚者」じゃない。
「プラントの為にプライドを捨てて地球の足を舐める覚悟を持つ賢者」が必要なんだ。
君ならそれが出来ると思っている」
「それは・・・」
自分にはプラントの独立の為であればどんな屈辱にも耐える覚悟がある。
自分が多少耐えればプラントの独立が保てるのであれば何を躊躇う必要があるだろう?
「君は兵士から恨まれ、市民からは「地球に媚びる裏切り者」と罵られるだろう。
でもプラントの独立を維持する為であれば誰かがやらなければならない事なんだ。
他の者に任せたらプラント滅亡まで一直線だ。
だからこそ君に頼みたい。
プラントの命運を託せるのは君しかいないと思っている」
そのキラの言葉が決定的だった。
「その任務、お受けいたします!」
こうしてイザークは実質的なザフトの全戦力を統率する事になった。
――――
「おい、あれで良いのかよ?」
決意に満ちた顔で帰っていくイザークを見てのディアッカの言葉である。
「ん?何がだい?」
答えるキラの言葉は深刻さの欠片もない。
「アイツはプラントの未来なんて知らないんだろう?それなのにそれを教えるなってのは・・・」
「それを知ったら護衛隊の統率に手を抜くかもしれないじゃないか?
誰でも将来滅亡が決まってる事に全力を出そうなんて思わないだろうからね。
でも知らなければプラント滅亡回避の為に全力を尽くしてくれるだろう?
適材適所というものだよ」
「でもなあ・・・」
「君たちが彼にプラントの未来を教えるのは駄目だけど、彼が自分で気付くなら何も問題はないよ。
それに彼に言った事は全部事実だよ。
プラントの最大戦力が護衛隊なのは事実だし、護衛隊が地球と何かトラブルを起こせばプラント滅亡に直結するのは紛れもない事実だよ」
「・・・」
「情報が公開されていれるのにそれを知らない方が悪い。
彼がちゃんと情報を確認していればこんな事にはならなかったはずだよ。
僕は選択肢を用意して彼はそれを選んだ。それだけの話だよ」
「・・・」
その情報が公開されていても知る者はいなかったじゃないか?
そう口に出そうとして、
情報は公開されていた。
知らなかったのは――
自分たちが無能だったからだ。
そう思い至ってディアッカは口をつぐむことしか出来なかった。
彼にはこの後、待ち受ける無意味な苦難に挑む友を思いやることしか出来なかった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。