転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。

お気軽に読んでいただければ幸いです。




第14話 帰国8

 

 

「では、そのように」

「ああ、よろしく頼む」

 

タイガはスーツ姿の男と握手をすると送り出した。

 

「ええ、次は・・・」

 

カルアが次の予定を読み上げる。

 

相変わらず完璧な仕事振りだ。

 

タイガの希望通り余裕を持たせて、自分から相手に出向くのではなく、相手を呼び寄せてタイガの負担を減らしていた。

 

(いや〜、楽になった。これならなんとかなるな)

 

今までは出来るだけ多くの者に会う為に、あっちに出向き、こっちに戻り、次はあそこと休む間も無く走り回っていた。

 

しかし話の内容はほとんどがタイガへの追従、ウズミへの取りなし、娘の売り込みなどタイガにとって意味にあるものでは無かった。

 

(アレ? 俺は何でそんな話を聞く為に必死で走り回っていたんだ?)

 

「出来るだけ多くの者に会いたい」

 

タイガの希望にカルアが全力で答えた結果である。

 

だが、タイガが望んだのは「自分の目的に必要な者」であったが、それを表に出す事は無かった。

 

その為カルアは「オーブ代表の弟が会うのに相応しい者」を基準に予定を組んでいた。

 

自分の希望をカルアに伝えていなかったタイガの自業自得である。

 

――

 

「次は法務局の氏族の方です」

 

勝手に自分で自分を追い詰めていた事に気付いて憮然とするタイガに、カルアの事務的な声がかけられた。

 

「では、そのように」

「ああ、よろしく頼む」

 

氏族の男を送り出すとタイガは大きくため息をついた。

 

「これで今日の予定は終わりだな?」

 

「はい、本日はこれで終了です。お疲れ様でした」

 

「やれやれ、やっと終わったのかい? じゃあちょっと街へ行ってみようよ? ろくに観光も出来なかったから詰まらなくてねえ?」

 

「お前は綺麗なお姉さんさえいれば満足だったんじゃなかったのか?」

 

「タイガ、こういう言葉を知っているかい?」

 

「なんだ?」

 

「それはそれ、これはこれって、言うんだよ!」

 

悪びれもせず断言するアズラエルに苦笑してタイガも同意する。

 

「そうだな、せっかく帰って来たんだ街の様子を見ておくのも悪くない」

 

「それでは車を用意します」

 

カルアの仕事はここでも完璧だった。

 

――

 

目に付いた小綺麗なレストランに3人は入った。

 

「う〜ん、なかなか良い所だねえ?」

 

洒落た店内を見渡してアズラエルが感心したように言う。

 

アズラエル財閥の後継者の目から見ても及第点ならば相当レベルが高いと言って良いだろう。

 

もっとも学園都市ではアズラエルは場末の居酒屋でも全く文句を言わないので信用には欠けるが。

 

「それよりさっさと飯にしよう。けっこう腹が減った」

 

「そうですね。それではコレとコレのコースを3人分」

 

カルアはウェイターに注文を伝える。

 

しかしそれだけでは終わらなかった。

 

「後、コレとコレを2人分、コレとコレを2人分、コレをひとり分お願いします」

 

「おいおい、俺達はそんなに食べられないぞ?」

 

「そ、そうだよ。ちょっと無理かなあ?」

 

「??? いえ、ご心配なく、コレは私が1人で食べますので」

 

キョトンとした顔でカルアが信じられない事を口にする。

 

「はあ?」

「ええ?」

 

「私は昔から燃費が悪いので、たくさん食べる必要があるんです」

 

「しかし・・・、なあ?」

「そうだよねえ?」

 

珍しくタイガとアズラエルの意見が一致した。

 

「まあ、ここで話していてもしょうがありません。食事にしましょう」

 

そう言ってタイガ達は運ばれて来た食事に手を付けた。

 

――

 

「ふう〜、やっぱり値段の割には良いお店でしたね」

 

食事中は取り留めのない話をした。

 

どこの氏族が没落しただの、就任式の準備である氏族が面目を施しただの、兄がもうすぐ結婚するだの、関連の無い話が脈絡もなく飛び交った。

 

食事を終えて満足そうなカルアを、タイガとアズラエルは信じられないものを見るように見つめた。

 

「6人分、いや8人分はあったぞ」

 

「あの細い体のどこに入っているのかねえ?」

 

完全記憶を持つカルアは常人よりもエネルギーの消費量が多いのだろう。

 

それを知らない2人はただ絶句するだけだった。

 

――

 

食後は街中を散策した。

 

「いや〜、けっこういい街並みだね。綺麗でいいところだ」

 

「恐縮です」

 

オーブの街並みを称賛するアズラエルの言葉にカルアが礼を述べる。

 

「いやいや、本当だって、ゴミひとつ落ちていないし、皆礼儀正しくて親切だし」

 

アズラエルの言葉に嘘は無い。

 

学園都市であればメインストリートであってもゴミが散乱し、人々は勝手に歩き回り、秩序よりも混沌という言葉が相応しいであろう。

 

「それに綺麗なお姉さんも多いし!」

 

そう言うとアズラエルは街を歩く女性にあれこれと声をかけ始めていた。

 

「あいつは全く」

 

オーブでも全くぶれない友人にタイガは苦笑した。

 

「あいつは放って置いて行くぞ」

 

「よろしいのですか?」

 

仮にもアズラエル財閥の後継者だ。

重要度で言えばタイガと大差ない。

 

「心配するな。ちゃんと影から護衛が付いている」

 

先日の一件から、さすがにアズラエル財閥の後継者を留置場に放り込むような事態になるのは憚れたのか、影から護衛が付くようになっていた。

 

アズラエルはせっかく自由になったのにと文句を言っていたが、後数日の我慢だ。

 

タイガとアズラエルがオーブに滞在出来る時間は残り少なくなっていた。

 

――

 

「もうすぐですね」

 

それを理解したカルアが口数少なく言葉を発する。

 

「そうだな。お前には世話になった。オーブに戻ったらまたお前に頼みたい」

 

思ってもいなかったタイガの言葉にカルアは目を瞬かせる。

 

「私はタイガ様に嫌われていると思っていましたが?」

 

カルアは目の前の本人に直接ストレートに疑問を尋ねる。

 

苦笑しながらタイガは答えた。

 

「俺の個人的感情は関係ない。お前より有能なやつが見つかるまではお前がやれ」

 

「それは依頼ですか?」

 

「いや、命令だ」

 

今度はカルアが苦笑した。

 

自分の本当の主人はウズミだ。

ウズミの許しがなければタイガの下に来る事は無いし、そうなればタイガの命令を聞く理由もない。

 

それはタイガの命令という名のお願いだった。

 

「ご命令であれば」

 

ウズミの許しがなければ自分のその答えには何の意味もない。

 

それを理解していながら、カルアは一礼してタイガの言葉に答えを返した。

 

――

 

それは突然だった。

 

猛スピードで暴走する車がタイガの目の前で街灯に激突した。

 

車は横転し部品が周囲にばら撒かれた。

 

その内のひとつがタイガの方へ猛スピードで飛んで来た。

 

カルアはそれを見て冷静に判断した。

 

(大丈夫。私が盾になればタイガ様は無事だ。何も問題ない)

 

カルアは両手を広げるとタイガの前に飛び出した。

 

しかしそこでカルアの予想外の事が起こった。

 

タイガが飛び出した自分を守るようにさらに前に飛び出したのだ。

 

(なっ!)

 

護衛される者が護衛する者を守ろうとする。

 

本末転倒で意味の無い、人間としては正しく、護衛対象者としては論外な行動だった。

 

(間に合わない!)

 

カルアに出来る事は全力でタイガを突き飛ばすことだけだった。

 

次の瞬間カルアは強い衝撃を受けて意識を失った。

 

――

 

「カルア!」

 

タイガの呼び掛けにもカルアは答えない。

 

そこには頭部から血を流し倒れ伏すカルアの姿があった。

 

 

 

 






※あとがきです。

読了ありがとうございます。

本話は少し緊張感のある内容でしたが、物語の転換点として描きました。

続きも楽しんでいただければ嬉しいです。


次回お楽しみください。
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