転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





第159話 プロジェクトM

 

 

軍事を掌握したキラは次は医療関連に注力した。

具体的には富裕層に対して情報の提供を呼びかけたのだ。

何の情報か?

メンデルに関する情報である。

富裕層がメンデルのヒビキ博士に、コーディネートの依頼をした際の処置に対しての情報を求めたのである。

通常の依頼をした者は、そこまでの情報が何故必要なのか疑問に思いながらも情報の提供に応じた。

しかし、合法スレスレ、もしくは非合法な依頼を行った者たちは情報提供を拒否した。

それに対してキラは

「自分はメンデルの生まれですよ?あなたたちのやってきた事など先刻承知です。

その中には有用な物もあります。それらを再現する手間を省く為に情報提供を呼びかけたのであって、

応じないなら評議会議長の権限によって正式に要求しても良いのですよ?

自主的に情報提供に応じるなら表沙汰にする必要は無かったのですが、理解してもらえないのは残念です」

と柔らかい口調で脅迫同然の事を口にした。

これに対して情報提供を求められた富裕層は全員屈服した。

キラは集められた情報を集積し、再構築と効率化の徹底を図り、重度の身体欠損や臓器の移植に対応するクローン医療の技術を開発した。

 

――――

 

キラから“メンデル由来データの再解析”を命じられた医療班のひとりは、「資料を開いた瞬間、吐き気がした」と述懐した。

そこにあったのは、人間を“素材”として扱った記録だった。

・同意のない遺伝子改造

・廃棄された被験体の一覧

・生存率の低い実験プロトコル

・上層部の署名

仮にも“人を救うためにこの道に入った”と自負する者にとって、目の前のデータは“人を救うため”ではなく、傲慢にも人を“作る”ためのものだった。

こんなものを扱っていいはずがない。

そう思った。

……だが、キラは違った。

会議室で、医師は震える声で言った。

 

「議長……これは倫理的に……」

 

キラは静かに答えた。

 

「倫理は大切だ。でも、救える命より重いのかな」

 

その瞬間、医師は言葉を失った。

キラは続けた。

 

「罪を使ってでも救えるなら、僕は迷わない」

 

その目は、“罪を理解した上で、それでも前に進む者の目”だった。

解析を進めるほど、 メンデルの技術は“悪魔的”だった。

だが同時に、 医療としては革命的だった。

 

・四肢の完全再生

・臓器のクローン生成

・神経接続の再構築

・拒絶反応ゼロの移植

 

これが実現すれば、 救える命は数え切れない。

医療班は葛藤した。

罪の技術を使って人を救うのは正しいのか? それとも、罪を理由に救いを拒む方が罪なのか? 答えは出なかった。

しかし救いを必要としている人の存在はそれらの葛藤を凌駕した。

そしてキラは迷わなかった。

 

医療班の多くの者はこう思った。

私は医者だ。

罪を裁くのは私の役目ではない。

私の役目は―― 目の前の命を救うことだ。

メンデルの技術は罪だ。

 

「罪から生まれた技術でも、 人を救えるなら、それは救いだ」

 

こうしてメンデルの技術は表に出た。

これにより先の大戦での傷病兵の社会復帰が果たされ、キラの支持率は爆発した。

もう自分の手で持つ事は出来ない、自分の足で歩く事は出来ない、と諦めていた負傷兵や、

臓器移植しか延命の方法が無く、移植のあてがなく諦めかけていた患者たちに新たな希望を与えたのだ。

彼らや彼らの家族がキラを支持するのは当然だった。

プラントで試験治療として率先してクローン医療を受けたのはニコルだった。

ニコルは生命は助かったものの、四肢切断と重度の熱傷でほとんど身動きが取れず、

二度とベッドの上からは動けないであろうと言われていた。

両親はそれでも「生きていてくれただけでもいい」と思ってはいたものの、悲しみは隠せなかった。

そこに新たな評議会議長の肝入りによって、先行してクローン医療による治療が受けられるようになったのだ。

彼らの喜びは察するに余りある。

ニコルの両親はこうして全面的なキラの支持者になった。

 

――――

 

「おや?アスラン?何か不満なのかい?」

 

「何故この治療法をオーブに伝える!これはプラントの武器になるんだぞ!」

 

「だからだよ。アスラン。この治療法はプラントだけが独占して良いものじゃない。広く一般に広めなければならないものだよ?」

 

「しかし、だからといって無償で伝える必要はないだろう!」

 

「アスラン?君も理解しているはずだよ?この治療法は合法スレスレ、もしくは非合法な方法でなければ確立出来ないものだって事が」

 

「それは・・・」

 

「プラントでこの治療法をどうやって確立したのか尋ねても絶対に答えが返ってくる事はない。

なぜならこれは非合法な行為によって確立されたからだよ。つまり犯罪の告白に等しい。

僕がオーブに伝えなければ、この治療法を受けられる者はプラントで秘密を守れる者に限定される。

つまり一般に普及する事はない。

しかもこの治療法がプラントにしかなければ治療に対する対価は思いのままだよ?

どんな法外な要求だってもう一度自分の手足が元通りになるのなら応じない人はいない。それは世界の損失だよ」

 

「しかし、だからと言って!」

 

「タイガ様はこの治療法を無償で世界に公開するおつもりだよ?独占を図るプラントとは大違いだね」

 

「何?無償でだと?」

 

「「この治療法が世界に広まって、悲劇の傷跡が少しでも癒えれば」というのがタイガ様のお言葉だよ?

独占を図るプラントとどっちが世界の為になると思うんだい?」

 

自分がプラントの利益の事しか考えていなかったのに、 オーブは、タイガはそんな自分より遥かに高みの視点で物事を捉えていたのだ。

アスランはプラントの事しか考えていなかった自分を恥じた。

そして改めて自分たちが負けるのは当然でしかなかったとアスランは思い知らされたのだった。

 

「この治療法が手に入ったのは、数少ないプラントに来てからの利点だね」

 

「利点?何がだ?」

 

「ああ、友達がこの治療法を必要としているからね。もうすぐ良い知らせを届けられるよ」

 

「この治療法が必要って・・・」

 

「ああ、前に言っただろう?君に撃墜されたパイロットだよ。

恋人は「手助けが必要だから、一緒にいられる理由が出来てかえって嬉しい」って言ってたけどどう見ても強がりだったからね。

この治療法でまた皆で笑えるようになれると思えばこんな仕事でもやってて良かったと思えるよ」

 

「・・・」

 

戦争だったのだから自分の行為は恥じる事はない。

戦争は終わったのだから罪の意識など持つ必要はない。

 

理屈ではその通りだ。

しかしアスランは、自分の行為がどのような結果をもたらしたのか直視して、それに罪悪感を持たずにいるほど割り切る事は出来なかった。

そのアスランが「治療法の公開」に反対出来るはずもなかった。

 

――――

 

プラントで画期的なクローン医療による治療法が生み出されるとほとんど同時に、オーブはクローン医療による治療法を全世界へ無償で公開した。

プラントは抗議したものの、オーブの「この治療法をどうやって確立したのか?」という問いかけに答える事が出来ず、逆に「臨床試験を重ねた結果」というオーブの主張が世界に受け入れられる事になった。

こうしてクローン医療の独占を図るプラントの思惑は外れ、逆にプラントは世界から一層冷たい目で見られる事になった。

オーブから公開されたこの治療法は、確立された場所は秘匿されたまま、正式に「プロジェクト・メンデル」と命名された。

しかし誰もその名を口にする事はなかった。

何故なら、それは紛れもなく人の罪の証だったのだから。

誰もが知る名でありながら、誰もそれを口にせず、略称でしか呼ばれない名前。

 

「プロジェクトM」

 

それが人の罪の証によって生み出され、人に与えられた新たな希望の名前だった。

 

 

 







※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

本話のクローン治療のあたりも感想で予想されていた方がいらっしゃいまして、一時は真剣に全面的に書き直そうか迷いました(笑)

そうなると、下手をすると最終話まで書きあがった内容をまた書き直す羽目になるので、そのまま公開させていただきます(涙)

「もはや何があろうとこのまま最後まで突っ走るしかない!」と無駄な覚悟を決めた作者にお付き合いいただければ幸いです(笑)

また感想に書かれた事と似たような話がありましても「この作者は簡単に予想できる事しか書けないんだなあ?」と笑ってください(涙)

次回お楽しみください。

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