転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
護衛隊の指揮官が決まったとキラから通達された時、
イザークは露骨に不満げな顔をした。
「おや?随分納得できないようだね?」
「それはそうです。こいつは見かけの能力だけは高いが、
実際には何も満足に出来ない役立たずです。護衛隊に必要ありません」
キラは軽く肩をすくめた。
「いやいや、彼には立派な能力があるじゃないか。
“自分は優秀な遺伝子を持っている!”と言って、
部下や能力の低い同僚に面倒事を押しつけて逃げ回るという能力が」
「それが分かっているなら何故!」
イザークは理解できなかった。
プラントの命運を握る護衛隊の指揮官に、
なぜこのような人物を任命するのか。
「評議会の推薦だからね」
「はあ?」
「評議会で揃って推薦されれば、僕も無視はできない。
大方、利権の大きいポストを評議員の知り合いで固めようとしたんじゃないかな?」
イザークは激昂した。
「この重要な任務をそのような理由で!
議長なら拒否できるのではないですか!」
「ん〜?今拒否してもまた同じ事を繰り返すだけだからね。
それならいっそ、この機会を活用しようかと思ってね」
「活用……ですか?」
キラの答えを聞いたイザークは絶句した。
「そ、そのような事を……」
「君には負担をかける事になるけど、
今後二度と評議会にこんなふざけた真似をさせないためにも必要な事だ。分かったね?」
「……ハイ。了解しました」
通信が切れた暗い画面を見つめながら、イザークは呟いた。
「議長……恐ろしい人だ」
プラントのためなら、ここまで非情になれるのか。
イザークはキラの“政治家としての恐ろしさ”を実感した。
――――
彼は優秀だった。
コーディネーターの中でも優秀な部類に入り、大抵のことはそつなくこなせた。
だが努力はしない。
同僚や部下の功績は「劣った者が優れた者に尽くすのは当然!」と言って横取りした。
部下からの信望は地に落ちていたが、上に媚びることだけは怠らなかった。
評議員に便宜を図り、依頼に応え、自分を売り込む。
その結果、プラントの最重要任務である「食糧輸送の護衛隊指揮官」という地位を手に入れた。
地球に行けばほとんどは自分より劣るナチュラルしかいない。
口うるさい部下がいるが、そんなものは放っておけばいい。
地球に行けば自分を止められる者などいない。
本気でそう思った彼は思っていた事をそのまま実行した。
地球に行く度に傲慢な言動を繰り返し、露骨に女や賄賂を要求し、ナチュラルを侮蔑した。
敗戦?
コーディネーターがナチュラルに負けるはずがないではないか?
事実、敗戦したなら何故プラントは独立を保っている?
本当に敗戦したのならそんな事はあり得ない。
ナチュラルにそんな力が残っていなかった証拠ではないか?
そんな勝手な理屈で地球で愚行を繰り返し、地球側の忍耐が限界に達しようとした時、
彼は特務部隊FAITHに拘束された。
彼の数々の不正行為は物証と証言付きで突きつけられ、評議会議長の指示により、
軍管理下の現地で即決裁判が行われた。
判決は――死刑。
彼を苦々しく思っていた地球側の面前で刑は執行され、ザフトの規律の厳格さを内外に示すことになった。
「ユウキ教官……」
「イザーク。私はもう教官ではないぞ」
「失礼しました!」
FAITHとして現れたユウキに、イザークは敬礼した。
「証拠や証言者の確保、ご苦労だった。
議長もお前の働きを評価している。今後も頼むぞ」
「しかし、ここまでする必要があったのでしょうか?
叱責や配転だけでも十分だったとは思いますが?」
ユウキは首を振った。
「ふむ。お前はまだ危機感が足りないようだな」
「危機感……でありますか?」
「そうだ。この食糧輸送がプラントの生命線だということは理解しているな?」
「はい。それはもちろん」
「地球側はな、プラントへの食糧輸送など即刻中止したいのだよ。
例え我らが飢えて死のうともな」
「な……!」
「プラントがやった事を考えれば無理もない。
地球側は同じ目にあっているのだからな」
「NJ……ですか」
「そうだ。今は親プラント国の存在や理事国の対立でなんとか輸送が続いているが、
状況が変われば即刻中止されても不思議ではない。
そうなればプラントは終わりだ」
イザークは息を呑んだ。
「そのためにも、地球側に口実を与えるわけにはいかない。
今回の例は、“プラントはここまで厳格に規律を守る”という証明でもある」
「“不正を行ったら処罰する”とは聞いていましたが……そこまでとは」
「評議会のふざけた要求も、これでなくなるだろう。
同じことがあれば、また同じように処理されるだけだ」
イザークは気づいた。
「あの男が指揮官になったのは……」
「早々に問題を起こすだろうからな。
一罰百戒の見せしめとしては丁度良い、という議長の意図だろう」
「もしかして俺の所には、またあのような男が……」
「プラントの最重要任務を理解せず、軽率な言動を繰り返す者が処罰されるのは当然だろう?」
疑問に答えず、逆に問い返され、イザークは絶句した。
「お前の任務は食糧輸送だけではない。
国内の不正分子の処理も含まれる。
我々FAITHが処理するための証拠固めを、お前にはしてもらう」
「……了解しました!」
自分の任務が重要なものとは思っていたが、その意味が何重にも重なったものである事を理解して、
イザークは思わず溜め息をついた。
「まだまだ前途多難だな……」
その彼の呟きは、残念ながら的中することになる。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。