転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
キラがプラントの評議会議長に就任しておよそ一年がたった。
これまでにキラが行った事は、
国家予算を凌駕する巨額な追徴金の無利子無利息での分割返済、
軍縮と同時に国内治安の安定化、
地球側の情報収集と万一に備えてのカーペンタリアとジブラルタルの再編成、
最重要事項である食糧輸送の安定化、
それに伴う軍規の徹底と地球へのアピール、
画期的な医療技術の確立、
国内人事の徹底だった。
どれか一つでも困難なのにキラはこれを悉く成し遂げた。
これにより市民は
「さすがスーパーコーディネーターだ」
「優秀な遺伝子を持つ者はやはり優秀だ!」
と何も考えずに称賛した。
これらの中で最も不安定なのは国内人事だった。
キラの活躍により、プラントでは「遺伝子の優秀さ」が今までよりもさらに重視されるようになった。
「遺伝子の優秀な者」の意見が優先され、「優秀ではない」とみなされた者の意見は無視された。
そこでキラは効率良く命令を伝える為に、一見優秀に見える者を名目上の責任者にして、
実務はその下の者に担当させる手段を取った。
イザークが実際には護衛隊を統率していた様に、トップはあくまでも名前だけに過ぎなかった。
そしてわざわざ「遺伝子が優秀な者に従うように」という通達を出してまで徹底させた。
もちろんそれが上辺だけのものでしか無い事は言うまでもない。
お飾りの責任者に好きなように喚かせて、
実務は本当に実権を持つ者に担当させる事で、業務が円滑に回るようにしたのだ。
お飾りの責任者が不満を言い出しても
「下の者はあなたの指示通りに従っています。何か問題でもありますか?」
と反論されれば何も言い返せなかった。
これにはタイガの下で実際に組織運営の経験を積んだ事が大きかった。
タイガの下で経験の為にある部署を任され、タイガの補佐として偉そうな肩書きをもらったものの、
肩書きだけの「まだ二十歳にもなっていない子供の言う事」に大の大人が従うはずもない。
実務は実際に組織を動かす謂わゆる「ナンバーワン」に全て任せるしかなかった。
その為、自分の意思とは異なる指示になったり、全く逆の結果になる事もあった。
また、他の部署には首長の一族が名前だけトップにいて、
実務はキラと同じように「ナンバーワン」が全て取り仕切っている事も珍しくなかった。
そこでキラは「ナンバーワン」やその下の者たちに、
「自分は年齢も経験も足りないのでどうか助けてください」と頭を下げて回り助力を乞うた。
大の大人が、自分の息子みたいな年齢の子供に頭を下げられれば「手助けしてやろう」と思うものだ。
その結果、キラの部署はキラの意思の通りに動くようになった。
首長の一族がトップにいる部署には、実務を取り仕切る「ナンバーワン」に直接依頼をするようにした。
トップには「ナンバーワン」から適当に報告してもらう事でトラブルになる事は無かった。
キラがそこで学んだのは「トップがどんな肩書きを持っていても、実務を動かす人間がいなければ無意味」という事だった。
逆を言えば「実務を動かす人間がいれば、トップが無能でも組織は動く」という事だった。
トップが有能であれば、実務を動かす「ナンバーワン」を自分で動かそうとする。
しかし、プラントにはそのような「有能なトップ」はほとんどいなかった。
なにしろコーディネーター自身がそこそこ有能なのだ。
トップが適当な指示をしても、部下のコーディネーター達はそれを何とか形にしてしまった。
その為、キラは「表」では「遺伝子が優秀な者に従うように」という通達で無能なトップをおだてて良い気分にさせ、
その「裏」で実務を取り仕切る者達には「プラントの未来は君たちの双肩にかかっている!君たちの働きに期待している!」と直々に激励していた。
評議長直々に期待の言葉をかけられた実務者たちは奮起した。
無能なトップに悩まされてきたが、評議長直々に「それは形だけのもの」とお墨付きをもらったのだ。
その結果、「表」と「裏」の意思が一致する事で、キラが議長に就任して一年も経つ頃には、地球の復興の特需もあり、
プラントは戦前を凌ぐ空前の好景気に沸いていた。
それによりプラントでのキラの人気は不動のものになっていた。
後日、評議会がキラのこの政策の「表だけ」を真似た結果、プラントが未曾有の混乱に陥るのはもはや必然であった。
もちろんキラがプラントの全てに支持されたわけではない。
キラと最も敵対していたのは他の評議員たちだった。
彼らは自分の息のかかった者たちを利権のある地位に付ける事が出来ず、
再三キラから「プラントの存続がかかっているのに邪魔をするのか!」と批判されていた。
それだけではなく、メンデルのデータをキラに握られた事により「いつかそれを公表されて失脚させられるのでは?」と強い被害妄想に囚われるようになっていた。
キラにプラントの実権を握られ、醜聞を把握され、その人気は絶大。
もはや自分たちなどキラには不要であろう。
そう考える彼らの思考の行き着く先が「キラの排除」になるのはある意味当然だった。
キラがいなくなった後のプラントの方針は?
キラ自身が「遺伝子の優秀な者に従う」という仕組みを確立している。
それをそのまま引き継げば何も問題ない。
実際それで上手くいっているではないか?
いくらキラがスーパーコーディネーターと言っても、優秀な自分たちであれば、同じことは十分可能だ。
反発する者がいても「スーパーコーディネーターの議長の指示に逆らうのか?」と言えば逆らう者などいない。
議長がいなくなれば、あの議長が得ている名声も、称賛も、プラントの発展も、全て我々が受け継ぐ事になるのだ!
スーパーコーディネーター?
あんなメンデル生まれのバケモノに自分たちの命運を握られたままなど、耐えられるものか!
こうした評議員たちの勝手な思惑によってキラへのテロが実行された。
彼らは自分たちの考え方が、『かつてのブルーコスモスと全く同じ』という事に気付く事はなかった。
視察中の車が爆破されキラは意識不明の重傷を負ったと発表された。
評議会は「テロはブルーコスモスによるもの」という声明を発表した。
地球側でこの声明を支持する国家は存在しなかった。
ブルーコスモスの現状を知るのであれば当然である。
これによりプラントは「信用出来ない国」として地球から益々疑いの目で見られる事になった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。