転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
お気軽に読んでいただければ幸いです。
本作の最強ヒロイン登場!(笑)
(最強とは言っていない)
カルアは病室の白いベッドに横たわっていた。
頭部には包帯が巻かれ赤い血が滲んでいた。
命は取り留めたものの意識が戻る事は無く、医師の話では脳に損傷がある可能性があるという事だった。
タイガは意識が戻るまでカルアの側にいる事を望んだが、それが叶えられるはずもなかった。
代わりにアズラエルがカルアの側にいた。
「お前は街を見回っていても良いんだぞ」
というタイガの言葉に、
「知り合いがこんな状態なのに放っておいてお姉さんに声をかけても楽しめないよ。それにそんなの相手に失礼だよ」
というアズラエルの言葉に「そうか」とだけ返して、タイガは自分の仕事に戻って行った。
――
カルアは夢の中にいた。
仮初ではあるが護衛対象であるはずの主人が逆に自分を庇おうとしたのだ。
自分の立場をわきまえない腹の立つ行動だった。
しかしどこかでそれを喜んでいる自分がいた。
そんな事はありえない。
自分は従者だ。
仮初とは言え主人を守るのが役目だ。
その役目を全う出来なければ自分は……
答えの出ない夢の中にカルアは漂っていた。
――
「では、そのように」
「ああ、よろしく頼む」
「では次の予定です」
「ああ」
新たにタイガの侍従に付けられたのはカルアと同年代の少女だった。
年齢の割に大人びてスタイルも良い。
どう見てもタイガの好みを調べて選ばれた少女だ。
その割にはタイガに積極的にアプローチしようとせず秘書の役割に徹している。
しかもカルアに負けず劣らず優秀だった。
(カルアのやつだったらここでこう文句のひとつでも……違う! カルアとこの娘を一緒にするな! それはカルアだけじゃない、この娘に対しても侮辱だぞ!)
頭を振って雑念を振り払う。
そのタイガの様子を見ながら少女はクスクスと笑い、
「そんなにカルア様の事がご心配ですか?」
と揶揄うように聞いてきた。
「心配なんかしていない。気になるだけだ」
「それを心配していると言うのですよ」
と返されて、タイガはぐうの音も出なかった。
「しかし君も変わっているな?」
「何がです?」
「いや、邪魔をしていたカルアがいなくなったんだ。もっと大勢で押しかけて来るかと思ったんだが?」
そう、少女達とタイガの接触はカルアの手で完全にブロックされていた。
正確には接触出来る時間すら存在しなかったのだが。
そのカルアがいなくなれば少女達がタイガの所へ殺到するのは目に見えていた。
しかし少女達にそのような様子はない。
「今はタイガ様はカルア様の事で頭がいっぱいでしょう? そんな時にご寵愛を頂いてもカルア様が回復されれば直ぐに忘れられてしまいます」
「私達はタイガ様を支えて差し上げたいのであって、ご寵愛を頂くのはついでにすぎません」
と言う少女の言葉にタイガは呆然とした。
自分はお前達にそんな立派な事をした覚えはないと言うタイガに、少女は言葉を返した。
「タイガ様にとっては当たり前の事で覚えていらっしゃらないのかも知れませんが、2年前タイガ様は私達を救ってくださいました」
2年前、世界中でS2型インフルエンザが大流行した年だ。
「タイガ様は手に入れたワクチンを私達に無償で配布してくださいました。そのおかげで妹は救われました」
と続ける少女に、タイガは言葉を返す事が出来なかった。
「当時ワクチンは開発されたばかりで、首長家で独占する事も出来たはずです。でも、タイガ様は自分の分を率先して私達に配布してくださいました。首長家の方でそのような事をしていただいたのはタイガ様だけです。
だから今度は私達がタイガ様のお役に立つ番です。多かれ少なかれここに来た皆そうです。皆タイガ様にお救い頂いたその御恩を少しでもお返しさせて頂きたいのです。
その為であれば私共の身体でも生命でも自由にお使い下さい。それが私達の望みです」
少女の言葉にタイガは叫びそうになった。
(違う、そんなつもりは無かった。原作で生存している連中の側にいれば助かるだろう、だったら自分の分で少しでも助かる人が増えるならその方が良いと思っただけだ)
しかしそんな事に意味は無い。
少女達にとっては、周囲の誰も救いの手を差し伸べてくれなかった状況でタイガによって救われた事が全てなのだ。
「私共はタイガ様の為に働きます。その他の事は些事に過ぎません」
――
「差し当たってはカルア様の容態をお知らせする事でしょうか?」
とイタズラっぽく微笑む少女に、タイガは尋ねた。
「名前は?」
「え?」
「まだちゃんと名前を聞いていなかったと思ってな? 俺はタイガ・ウラ・アスハだ」
「お名前はもう存じておりますが?」
「相手に名前を尋ねるならこちらから名乗るのが礼儀だろう?」
と言うタイガの言葉に、少女は声を出して笑った。
(ああ、私共にそんな事をする必要なんかないのに……本当にこの方は)
「アリサ、アリサ・ジル・サカトと申します。末永くお願いいたします。タイガ様」
彷徨える魂が仕えるべき真の主を得た瞬間だった。
――
蛇足
「みんな〜! タイガ様に名前を聞いてもらえたわよ〜」
おお〜という歓声が周囲の少女達から上がる。
「これからゆっくり皆の名前を覚えていってもらうわよ! でもいきなり行ってもタイガ様を混乱させるだけだからひとりずつね! 基本的にはタイガ様がオーブに戻られてからね!」
え〜という落胆の声が上がる。
「何言ってるの? タイガ様に御恩をお返しするのに2年や3年程度待てないの? 例え一生かかってもタイガ様に受けた御恩はお返しするのよ! 分かったわね?」
おお〜! という少女達の声が上がる。
既にタイガの知らぬ所で周囲の外堀は完全に埋められていた。
第15話でした。
本作における最強ヒロイン登場の話でした(笑)
何が最強かって?
そのうち分かります(笑顔)
既に外堀を埋められたタイガは、果たして少女達から逃れられるのか?
(無理なんじゃないかなあ?)
次回お楽しみください。