転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





第169話 回答

 

 

 

無策の果てにプラントへ食糧危機をもたらした評議会は、全員その地位を追われた。

新たに選ばれた評議員たちは、さすがに現状の深刻さを理解していた。

 

「キラ議長の言う通りにしていれば……」

 

そう思う者は一人や二人ではなかった。

なまじ“成功例”があるため、それを真似ようとするのは自然な流れだった。

だが――

もう遅い。

これからはキラに頼らず、自分たちの手で生き残らねばならない。

そう決意を固めたものの、現実は厳しかった。

 

――――

 

「食糧の輸入は現時点では問題ありません。ただし半年以降は不明です。

その時点で改善がなければ、最悪餓死者が発生します」

 

国内担当官の報告に、新議長は深く溜め息をついた。

 

「宇宙で餓死か……冗談のようだな」

 

「対価を支払っている間は問題ないのでは?」

 

担当官の言葉は正論だった。

だが――

第2プラントという“代替品”の存在が、その正論を無効化する未来を示していた。

議長もそれを理解していた。

 

「こうなったら業腹だが……あの連中に頼むしかないか?」

 

「あの連中、ですか?」

 

「ああ。散々我々にテロ行為を行ってきた連中だ。

その罪を償ってもらおうじゃないか」

 

議長の目的は――

ブルーコスモスにプラントを支援させること。

ブルーコスモスは地球では“慈愛の集団”と呼ばれ、ナチュラルもコーディネーターも区別せず救っている。

口では「プラントの独立は認めない」と言っておきながら、コーディネーターがプラントへ行く事を妨害していない。

 

「慈愛の集団とまで呼ばれる連中なら、我々の苦境に手を差し伸べるはずだ!」

 

「いや、今までのテロ行為を清算するためにも、助けるのが当然だ!」

 

「劣ったナチュラルが優れたコーディネーターに従うのは宇宙の真理だ!」

 

議長は本気でそう信じていた。

 

所詮彼も、“前評議会より多少マシ”なだけの典型的なプラントのコーディネーターでしかなかった。

 

日程が調整され、アズラエルと新議長の会談が設定された。

多忙なアズラエルの予定に割り込ませるのは苦労したが、議長は「成果さえ出せば帳消しだ」とほくそ笑んでいた。

だが――

アズラエルがそんな思惑に付き合うはずがなかった。

 

――――

 

「盟主。まずは会談を受けていただいた事に感謝する。

ついては現在我々が直面している苦難に助力いただきたい」

 

挨拶も社交辞令もなく、相手の都合も考えず、一方的に要求を述べるだけ。

これが議長の“会談”だった。

アズラエルは苦笑しつつ答えた。

 

「苦難と言われましても……具体的に言っていただかないと理解できませんよ?」

 

当然の指摘だった。

議長は内心、(下等なナチュラルは黙って従えばいいのだ!)と思っていたが、

それを口にすればどうなるかくらいは理解していた。

 

「プラントへの食糧輸送が危険だと言って拒否されているのです。

盟主のお力で輸送を命じていただきたい」

 

アズラエルは呆れた。

 

「民間業者が危険だと判断したものを、私が強制的に命じることはできませんよ?

私は船主ではありませんし、危険に見合う報酬を支払えば解決するでしょう?」

 

正論だった。

だが議長が求めていたのはそのような正論ではなかった。

 

「盟主!あなたなら命じることなど簡単でしょう!

それで多くのコーディネーターが救われるのです!

哀れな彼らを助けようとは思われないのですか!」

 

アズラエルはさらに呆れた。

 

「あのですね……

私が何故、危険だと判断して出発を中止している者達に「危険で死ぬかも知れないが行け!」と命じなければならないのです?

そのような義理も理由もありませんよ?」

 

「あなたはコーディネーターのために尽くしてきたではないですか!」

 

「……何か勘違いしているようですね。

私たちが助けてきたのは“被災した人たち”です。

ナチュラルかコーディネーターかなど区別したことはありませんよ?」

 

議長は絶句した。

議長は「ナチュラルは無条件でコーディネーターを助けるのが当然」と思っており、

コーディネーターを助けないナチュラルの存在など想像もしていなかった。

典型的な「プラントのコーディネーター」の考えである。

 

「では、被災したコーディネーターをプラントに送り届けたのは何故です!」

 

「あれは“人道的判断”です。行き場がないと言うから送っただけで、それ以上の意味はありません」

 

議長は追い詰められ、最後の頼みを口にした。

 

「せめて困窮している我々のために、食糧輸送の再開を働きかけていただきたい!」

 

「困窮ね・・・」

 

アズラエルはそんな議長の様子を見ておもむろに静かに尋ねた。

 

「プラントでは餓死者は何人出ましたか?」

 

「は?餓死者ですか?」

 

「そうです。何人です?」

 

「いえ、まだ出ておりません。しかし遠からず――」

 

「そうですか。わかりました」

 

おお、と議長が安心しかけた時にアズラエルは議長が信じられない事を口にした。

 

「餓死者が出ていないのであればまだ大丈夫ですね。餓死者が出るようであれば助力しましょう」

 

議長は叫んだ。

 

「盟主!」

 

「何かご不満でも?」

 

「それでは意味がない!それが「慈愛の集団」と呼ばれる連中の盟主ですか!」

 

そして――

議長は取り返しのつかない言葉を口にした。

 

「いいからお前たちナチュラルは黙って援助すれば良いのだ!」

 

「・・・」

 

「あ……」

 

議長は自分の失言に青ざめた。

 

「いや、これは、つまり、その・・・」

 

アズラエルはそんな議長を前にしても声を荒げるでもなく静かに声を発した。

 

「“慈愛の集団”ですか。私たちがそう呼ばれるようになった理由をご存知ですか?」

 

「あ・・・」

 

議長は理解した。

以前はテロ組織と同一視されていたブルーコスモスが、その評価を覆す事になった出来事をもたらしたのが誰なのか。

 

《エイプリルフール・クライシス》

 

あの惨劇で、ブルーコスモスは“慈愛の集団”と呼ばれるようになったのだ。

 

「凍死、病死、餓死……私たちが救えなかった命も多い。

あなたたちは地球に大量の餓死者を出しておきながら、自分たちが同じ目に遭ったら“助けてくれ”ですか。

随分都合が良い話ですね」

 

「うっ・・・」

 

議長は言葉を失った。

 

「せめて私たちと同じ苦しみを味わってからでなければ助ける気にもなりませんね。

いや、あなたたちのやった事を考えればどこに助ける必要があると思いますか?」

 

「盟主!プラントには罪のない女子供もいるのですよ!」

 

議長は叫んだ。

 

「被災者の中には、自分のパンを家族に与えて餓死した人もいます。

その人たちにはそのような目に合う罪があったのですか?

あなたたちも同じ目に合って見れば、それがどれだけ理不尽なものか理解出来るのではないですか?」

 

「・・・」

 

女子供を盾にしようとした議長の反論は客観的な事実の前に粉砕された。

 

「ではこうしましょう。

NJの餓死者と同数の餓死者が出れば、助力を検討します。

両者痛み分けというものです」

 

議長は凍り付いた。

NJの犠牲者は一億数千万、2億には満たなくても極めてそれに近いと言われている。

死因を凍死、病死、餓死で三等分すればおよそ六千万。

ほぼプラントの人口に匹敵する。

 

つまりアズラエルは、

「助ける気はない」

と明言したのだ。

 

本来であれば「痛み分け」どころか、被災者には何の落ち度もなかったのだから当然の事だ。

 

「しかし、それも無情でしょう。助力を“検討”しても良いですよ」

 

喜色を浮かべて議長が俯いていた顔を上げる。

だがアズラエルの次の言葉で凍り付く事になる。

 

「世界中に聞いてみましょう。

 

《プラントを助けるべきか、否か》

 

あなたたちの普段の行いが問われます」

 

「盟主、そ、それは・・・」

 

「あなたたちの普段の行いが世界中に問われる事になるのですよ?

あなたたちが皆に愛されて、皆に利益をもたらしてくれるのであれば

誰も助力に反対しないでしょう?」

 

NJで被災した者たちが、プラントへの助力に同意するか?

結果は予想するまでもなかった。

 

こうしてアズラエルとプラントの新議長の会談は、

 

『プラントが世界中の誰からも必要とされていない』

 

という現実を確認するだけの結果に終わった。

 

 

ブルーコスモスはこの会談の様子を世界中に公開した。

最後には――

「プラントに助力するか? 否か?」

の回答欄。

 

結果は、記すまでもなかった。

 

 

 

 

 







※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。


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