転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。

いよいよ『仮初の黄金時代編』完結です。
どうぞお楽しみください。





第170話 プレートの光

 

 

プラントへの食糧輸送は、依然として中断されたままだった。

評議会は「早く再開を!」と狂ったように催促したが、海賊に襲われる危険を冒してまで輸送を引き受ける船主は一人もいなかった。

その結果、プラントは餓死者が出る寸前にまで追い詰められた。

やむを得ず、プラントは輸送船団を丸ごと買い上げ、護衛隊を付けて強引に輸送を再開させた。

しかし当然ながら、そのコストは跳ね上がった。

オレンジ一個を買うために、平均的な市民は月収の半分を費やさねばならない。

それが、今のプラントの現実だった。

 

「子供の頃、母は誕生日にオレンジを一つ買ってくれた。

父の月給の十分の一もする贅沢だった。

それでも笑って『今日は特別だからね』と言ってくれた。

今ではそのオレンジは、父の月給の半分を出しても一つしか買えない」

 

当時のある市民の述懐である。

この現実をもたらしたのは他の誰でもない、プラント自身によるものであった。

しかもこれは“現状維持”に過ぎない。

数年もすれば第2プラントが稼働を始める。

そうなれば、プラントの存在意義は完全に失われる。

食糧の輸送どころか、食糧の購入そのものが不可能になる未来が見えていた。

そこでプラントは、現状で購入できる食糧を見境なく買い漁り、すべてを長期保存可能な状態に加工した。

その結果――

十数年は餓死者を出さずに済む程度の備蓄は確保できた。

だが、それは“食事”と呼べるものではなかった。

嗜好品は完全に街から消え、栄養だけを優先し、味覚は完全に無視された。

薄いプレートに盛られたペースト状の物体。

それが、完全にプラント市民の日常食となった。

数年も経つ頃には、ユニウス産や地球産の食料の価格はもはや天井知らずで、

「オレンジひとつで家が建つ」とまで言われるようになった。

 

さすがのプラント市民も、ついに疑問を口にし始めた。

 

「独立した結果がこれか?……」

 

「独立は間違いだったのでは?……」

 

だが、すべては手遅れだった。

 

先を見据えた市民は、すでにプラントを見限り他国への移住を試みていた。

しかし――

他国はプラント市民の移住を“拒否”し始めていた。

正確には、拒否ではない。

移住条件が徹底的に厳格化されたのだ。

独立前は理事国に所属していたので、同じ国内だったから自由に移動出来た。

それが独立した結果、入国審査が行われる事も、不審な移住希望者に対して審査が厳しくなる事も当然だった。

• 申請書の些細な不備

• 記載漏れ

• 入国管理官との会話でのわずかな不審点

それらがあれば即座に移住申請は却下された。

 

火星への移住を打診した者もいたが、火星からは逆に食料の長期保存のノウハウの提供を求められた。

火星の過酷な環境では食料の長期保存は地球やプラントよりも重要だった。

 

ペーストの食事から逃れた先でも、環境はさらに過酷で同じ食事だと?

冗談ではない!

 

それが火星へ移住を打診した者の本音だった。

その為、火星への移住を決断する者はほとんどいなかった。

 

もはやプラントのコーディネーターは、プラント以外に生きていける場所を世界のどこにも持たなくなっていた。

 

十数年が過ぎる頃には、プラントの市民は子供の頃からペースト以外の食料を口にする事はなくなっていた。

例外は唯一、独立記念日に国民全員に配給される『一個のパン』だけだった。

それはかつての繁栄を知るプラント市民にとって、かえって『独立』という自分達の現状の惨めさを思い知らされるものでしかなかった。

そしてさらに地球のNJ撤去の負担や戦前・戦後の違法インサイダー取引の追徴金の負担がプラントに重くのしかかった。

負担に耐えかねた市民は評議会へ「地球へのNJ撤去の負担免除」を要求するよう求めたが、それは評議会議長となったレオンに「プラントの滅亡」を決意させる要因となった。

そしてレオンによって「プラント破滅への道筋」が整えられると、もはやプラントにそれを覆す力は残っていなかった。

 

――――

 

「……何でこんな事になってしまったんだ……」

 

一人の評議員が虚しく呟いた。

かつては栄光と希望に溢れ、輝きに満ちていた評議会議場は、

現在では埃だらけで薄汚れ、崩れ落ちるに任せるままに荒れ果てていた。

その姿を、議場の壁に飾られたエヴィデンス01が見下ろしていた。

そして、その下には人の世の移り変わりとは関わりなく、変わらずにプレートが掲げられていた。

 

「人類の未来を照らす新人類である我らコーディネータに栄光を!」

 

そこに刻まれた文字が放つ光は――

今や、荒れ果てた議場を虚しく照らすだけだった。

 

これが“新人類”を自称した者たちの末路の姿であった。

 

 

 







※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

「何で感想欄でこれから書き込む内容を予想出来るんだ〜!」

「何でこうしようとしている事が分かるんだ〜!」

と、感想欄での皆様の予想に戦々恐々している作者です(汗)

それでも皆様からの感想を受け取るたびに「これだけの人が私の作品を読んでくれているんだ〜(喜)」と感激しています。

もうこうなったら「皆様の予想と同じものが書き込まれても、書き直さずそのまま更新しよう!」と開き直った作者の無駄な覚悟をお笑いください(涙)


これにて『仮初の黄金時代編』完結になります。

いったんは詳しいプラントの描写はこれまでになりますが、プラントが落ちた先にはまだ“底”があります(笑)
後年パトリックがプラントに帰還した際にはこれで終わらず、さらに変わり果てたプラントの“現実”を直視する事になります(笑)

雰囲気を変えて閑話が続いた後、次章からいよいよ『ファウンデーション王国編』開始になります。

次回お楽しみください。



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