転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
私は護衛官である。
それもただの護衛官ではない。
オーブの五大氏族筆頭、アスハ家の護衛官である!
その任務の重要性は言うまでもない!
アスハ家の方々をいかなる危険からもお守りする!
それが私たちの使命なのだ!
その為にはどのような苦難にも耐えなければならない!
例え心の中に不満などあっても、口にする事は許されない!
いかなる時も沈着冷静に、アスハ家の方々をお守りする事こそ我々の存在する意味なのだから!
そう思っていた私はアスハ家の三男、タイガ様の護衛を申し付けられた。
この方の護衛に就く際に上司から気の毒な目で見られたような気がするがあれは何だったのだろう?
タイガ様は噂通り聡明な方で、正に“オーブの神童”と呼ばれるのにふさわしい方だった。
私は「何があってもこの方をお守りせねば!」と誓いを新たにした。
それから数日後、私は上司の視線の意味を身をもって知る事になった。
タイガ様は噂通り聡明な方だった。
聡明すぎて家庭教師の課題を早々に終わらせると、暇を持て余したのか度々屋敷を抜け出そうとされるようになった。
アスハ家の方を無防備に街に出歩かせるなど論外である!
そう言ってお停めしたが、タイガ様はいつの間にか屋敷から姿を消していた。
大騒ぎして周囲を探し回ったが、数時間後に街中に配置している護衛から「タイガ様をハンバーガー屋で発見した」という報告が入って安堵する事になった。
帰宅されたタイガ様にきつく小言を申し上げたものの、「途中の道中にも、街中にもちゃんと護衛はいるんだろ?だったら別に問題ないだろう?」と全く堪えた様子はなかった。
それからもタイガ様は度々屋敷から姿を消すようになった。
ある時は船を見る為に港へ行き、ある時は宇宙船を見に宇宙港へ行き、ハンバーガーや牛丼の為に街中を出歩くようになった。
いくら途中や街中でも陰ながら護衛が就いているとはいっても、危険な事に変わりはない。
しかしタイガ様の行動は一向に改まらなかった。
ある時など屋敷中の者で探し回ってもタイガ様を見つける事が出来ず、監視カメラを確認した。
すると護衛の待機部屋から全員出払った隙に、天井のメンテナンスハッチから降りられたタイガ様が、
護衛たちの後を着けて堂々と正面から出ていった映像を見た時は絶句した。
タイガ様?
あなたの前世はニンジャか何かですか?
(・・・残念ながらただの社畜です)
またある時は「いつも迷惑をかけてすまないな。お詫びのしるしだ」と言って菓子の詰め合わせを持ってきてくれた。
護衛など仕事なのだから当然の事をしているだけなのに、私どものような者にまでここまで気を使っていただけるとは・・・
感動してタイガ様の持ってきてくれた菓子を口にすると2時間ほど眠り込んでいた。
その間にタイガ様は悠々と屋敷を抜け出していた。
護衛される者が護衛する者に危害を加えるとはどういう事か!
これでは護衛などできない!と上司に抗議(本当は配置換えの懇願)したが上司の答えは無情だった。
「護衛対象者が予想外の行動をとる事などいくらでもあるだろう?
これはその場合の対応力を養う訓練も兼ねている。
少なくとも現状でタイガ様の身に危険が及ぶ恐れはない。護衛任務は継続だ」
私は上司の答えに絶望した。
そしてふと疑問に思った事を尋ねた。
「護衛対象者であるタイガ様を使った訓練は護衛の主旨から外れるのでは?」
「タイガ様のお慈悲だ。油断していたとはいえ薬を盛られて護衛できなくなるなど本来なら護衛失格だ。
しかしタイガ様は「訓練で失敗するのは当たり前だろう?俺は護衛の連中の訓練に協力しただけだ」とおっしゃっている。
お前たちの失態は単なる訓練という事になっている。タイガ様のお慈悲に感謝しろ」
私はその上司の言葉に感動した。
自分達は護衛の任務も果たせず醜態を晒したのに、タイガ様はそんな私達を「訓練に協力した」と言ってかばっていただけるなんて・・・
ん?
しかし元々原因はタイガ様が屋敷を抜け出そうとされたからでは?
怒り心頭の私に上司が無情な声をかけた。
「タイガ様から『軽めの睡眠薬ではなく、強力な下剤の方が良かったか?どちらが良いか希望を聞いておいてくれ』とも言伝されているが?
希望を聞いておこうか?」
「・・・睡眠薬でお願いします・・・」
下手に答えたら次は言葉通り強力な下剤が仕込まれるだろう。
それ以降、もはや私が屋敷で口にできるのは自分で持ち込んだ飲食物のみとなった。
「次は何を仕込まれるのか?」そう考えると、私は恐ろしくて菓子のひとつ、茶の一杯どころか、水の一滴に至るまで何一つ口にする事は出来なくなった。
ここはオーブのアスハ家の屋敷である。
周囲は大西洋連邦やユーラシア連邦に比べれば劣るとはいえ充分大都会である。
その大都会の真ん中で何故サバイバルじみた事をしなければならないのか?
当然だが、私のその疑問に答えてくれる者は誰もいなかった。
こうして私は最初に上司から向けられた「気の毒そうな視線の意味」を身体で理解する事になった。
それからも私と屋敷を抜け出そうとするタイガ様の攻防は続いた。
タイガ様が姿を隠し、私がタイガ様を探して疲労困憊する。
そんな日常が続いていた。
そんな日々の疲れを癒してくれるのは、家に帰った時に無邪気な笑顔で出迎えてくれる息子の笑顔だった。
息子の笑顔を眺めながら私はこの平穏な日々をハウメアに感謝していた。
だから偉大なる慈悲深き大地の女神ハウメアよ。
別に大それた願いではありません。
たった一つ、たった一度で良いので私の願いをかなえてください。
『一度で良いからあのクソガキを思いっきりぶん殴らせてください!お願いします!』
しかし、残念ながら私の願いもむなしく、その願いが叶う日は来そうになかった。
・・・いや、やっぱり訂正します。
あの方が無事でいるなら、それでいいです。
それが仕事ですから・・・
私は改めてハウメアに祈った。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
本編とはガラッと雰囲気を変えて、「気の毒な護衛官の話」でした(笑)
彼に救いはあるのでしょうか?
もちろん、ちゃんと用意してますのでご安心ください(笑)
(本当かなあ?)
次回お楽しみください。