転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





閑話23-2 護衛の憂鬱2

 

 

 

 

今日も男とタイガの攻防は続いていた。

 

「きゃっ!」

 

屋敷を抜け出したタイガを追いかけていると、塀の角で侍女を連れた氏族の令嬢とぶつかりそうになった。

 

「も、申し訳ない!怪我はないか?」

 

「い、いえ、別にぶつかっていませんので・・・」

 

「すまないが先を急ぐ!では!」

 

男はそう言って街中へ抜け出したであろうタイガを追いかけた。

ぶつかりそうになった令嬢は、そのまま侍女と一緒に屋敷の中へ入って行った。

 

(年齢から見てタイガ様がお目当てだろう。しかしタイガ様は今は屋敷にいらっしゃらない。

無駄足だな。気の毒に)

 

そう思った男は、当然ながらその令嬢の連れていた侍女がタイガで、抜け出した屋敷に正面から堂々と戻り、

侍女としてまた正面から堂々と出ていった事など知る由もなかった。

 

――――

 

「良いんですか、イチローくん?」

 

屋敷に向かう途中、トモが傍の侍女―カメラの死角でトモと合流し侍女の服を身に付けたタイガ―に声をかけた。

 

「何がだ?」

 

「あの護衛の方です。以前お見かけした時も随分お疲れのようでしたが?」

 

タイガに初めて会った時に、声をかけてきた男の疲れ切った様子が脳裏によみがえる。

 

(何か、もう壊れかかっているような感じがしたけど?)

 

傍から見ても疲労困憊しているのが分かる体を、死んだような目で無理矢理動かしているような男の様子は哀れを誘った。

 

「あいつの仕事は護衛だ。護衛という仕事に全力を発揮させてやっているんだ。むしろ感謝してほしいほどだ」

 

「それはいくらなんでも無理があるんじゃないですかね?」

 

「その分、手当は弾んでいるぞ?労働に対して正当な報酬が支払われているんだ。何も問題は無いな」

 

どんな労働をしても報われなかった前世を思い出し、タイガは素っ気なく言い放った。

 

「それはそうかもしれませんが・・・」

 

(自分だったらどう見ても労働と報酬の対価が釣り合っていないから絶対に断るだろうなあ?)とトモは思った。

同時に(タイガ様の側にいられるんだったら報酬なんかどうでも良いんだけど・・・)とも思ったが。

 

「さて、それよりも行くぞ。牛丼が俺を待っている!」

 

「ああ、待ってくださいよ!」

 

タイガとトモはそのまま街の中へ繰り出していった。

護衛の男は今日もタイガを見つける事は出来なかった。

 

――――

 

今日も疲れ切った男が帰宅すると息子が駆け寄ってきた。

 

「おかえり!」

 

その笑顔を見るたびに、どれだけ疲れていてもどうでもよくなる。

 

(・・・あのクソガキの護衛さえなければ、完璧な人生なのだが)

 

男は心の中で不満を漏らすが、当然だが男の想いが外に現れる事はなかった。

 

――――

 

数年の後、世界中でS2型インフルエンザが大流行した。

 

オーブでも、五大氏族、下級氏族、市民、ナチュラル、コーディネーターを問わず感染者は拡大した。

 

護衛の男の息子も感染して生死の境をさまよっていた。

 

(神よ!偉大なるハウメアよ!どうか!どうか息子を助けてください!お願いします!

私の生命を差し出せというなら差し上げます!だから、だから、どうか息子だけは!・・・)

 

そこには隔離された病室で息子の回復を必死に祈る男の姿があった。

 

しかしどれだけ必死に祈っても息子の病状は回復する事はなかった。

 

ややあって、ようやく息子の病状が小康状態になって男は腰を上げた。

 

(このまま息子の側にいても自分は何もできない。まだ仕事をしていた方が自分を誤魔化せる)

 

男はそう思って医師に息子を託し傍を離れた。

 

――――

 

男の姿を見た時タイガは驚いた。

 

「おい、どうした?子供が感染したんじゃなかったのか?傍にいてやらなくて良いのか?」

 

タイガの問いに男は小さく答えた。

 

「・・・いえ、傍にいても何もできませんので。まだ仕事をしていた方が落ち着きますので」

 

「仕事と言ってもなあ?さすがの俺でもこの状況で街に出ようとは思わないぞ?」

 

「それなら安心ですね」

 

男は力のない声で笑った。

 

「・・・」

 

タイガはそれに何も答える事は出来なかった。

 

そんな時タイガに荷物が届いた。

 

厳重に医療用の小型コンテナに保管されたそれは開発されたばかりのS2型インフルエンザのワクチンだった。

タイガに渡す前に危険物確認のために、コンテナからワクチンを取り出しながら男は思った。

 

(このワクチンがあれば息子は・・・馬鹿な!私は何を考えている!私はただの護衛だ!

それにこれはタイガ様の為のものだ!

タイガ様のものを護衛が勝手に使おうなどと、そんなのは思う事すら許されるはずがないではないか!)

 

そう思ってもワクチンを持つ手の震えは抑えられなかった。

 

「・・・タイガ様。ワクチンです・・・」

 

「・・・」

 

タイガには歯を食いしばって無表情にワクチンを持つ男の内心を容易に推察する事が出来た。

 

男からワクチンの入ったケースを受け取る。

 

本数は12本。

 

「ふ~ん?これがワクチンか?」

 

そのうちのひとつ、ワクチンの入ったアンプルを興味無さげに取り出しながらタイガは呟いた。

 

(ワクチンなどひとつあれば十分だろうに・・・)

 

暗い思考を手放す事が出来ないまま、男は食い入るようにアンプルを見つめている。

 

「あっ!」

 

「!!」

 

ワクチンを手の中でもてあそんでいたタイガの手からアンプルが零れ落ちた。

 

男の目にはアンプルが落ちる光景がゆっくりと、スローモーションのように映っていた。

 

(ワクチンが!)

 

アンプルが床に落ちる直前、タイガの手がアンプルをキャッチしていた。

 

「ふう~」

 

男は安堵した。

自分には無関係とは言え、アンプルがひとつあれば確実にタイガの命は救われるのだ。

 

(そのワクチンがあれば・・・)

 

「・・・」

 

その時アンプルをしげしげと眺めていたタイガがポツリと呟いた。

 

「駄目だな。落とした時に割れてしまったみたいだ」

 

「!!!」

 

男は驚愕した。

 

(バカな!あれは床には落ちていない!割れているはずがない!)

 

「割れちまったからな。処分しておいてくれ」

 

タイガは手に持ったアンプルを男に向かって放り投げた。

 

アンプルを受け取った男は手の中のアンプルをしげしげと眺めた。

 

割れていないしどこにも皹ひとつ入っていない。

 

「???タイガ様これは?」

 

「俺が割っちまったものはしょうがない。そのゴミはお前が処分しておいてくれ。いいな?」

 

「!!!」

 

男は理解した。

 

「タ、タイガ様・・・」

 

「子供が心配なんだろう?そんな落ち着かないヤツが傍にいてもらっちゃ迷惑だ。子供が治るまで傍にいてやれ」

 

「し、しかし・・・」

 

「今日はもう仕事は不要だ。そのゴミを持ってさっさと帰れ」

 

「タイガ様・・・」

 

「さっさと帰れ!」

 

男は深く一礼すると部屋を飛び出した。

 

――――

 

男の子供は何とかワクチンが間に合い命を取り留めた。

タイガは残ったワクチンは全て配布し、自分は一つも使わなかった。

それを知った男はタイガに対する恩義を心に刻み、職務を超えてタイガの身を守る事に全力を尽くした。

 

男は今日もタイガに対する感謝をハウメアに捧げていた。

 

(偉大なる慈悲深き大地の女神ハウメアよ。

あなたの現身の如く慈悲深いタイガ様を私共に遣わして頂いた事に感謝いたします。

あの方の未来にあなた様の祝福があらん事を)

 

それはもはや信頼と言うより、信仰に近いものだった。

 

(だから偉大なる慈悲深き大地の女神ハウメアよ。

別に大それた願いではありません。

たった一つ、たった一度で良いので私の願いをかなえてください。

あの方が無事でいるなら、それでいいです。

それはそれとして『一度で良いからあのクソガキを思いっきりぶん殴らせてください!お願いします!』)

 

 

・・・どうも彼の信仰をもってしても個人的感情は抑えられないようである。

 

オーブから災厄が去ったある日の出来事だった。

 

 

 

 








※あとがきです

今までとはガラッと雰囲気を変えた閑話でした(笑)
本当は私が書きたかったのは、こういう何も考えないで笑える話なんだよなあ。
何でこうなった?
(今まで自分が書いたものから無理矢理目を逸らす)

次章からはいよいよ《ファウンデーション王国編》の開始になります。

次回お楽しみください。


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