転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
その時バルトフェルドは久しぶりの感覚を味わっていた。
肌がひりつく。
背筋に悪寒が走る。
どこからか、誰かから狙われているという、かつては日常的に感じていた感覚。
それは戦場での感覚だった。
(どこだ?この警戒厳重な最重要区画まで侵入してきて、これだけの殺意を放つなど只者ではない!)
しかし同時に奇妙な事も感じていた。
(ここまで侵入してきたのであれば、私の事など放っておけばフリーダムの元へは一直線だ。それが出来ない理由でもあるのか?)
油断なく周囲を見渡すと床に這わせられたコードの束が不自然にぐにゃりと歪んだ。
【まるで誰かに踏みつけられたように】
「!?」
バルトフェルドは手に持っていたコーヒーを、コードが歪んだ場所に放り投げた。
「!!!」
効果は覿面だった。
誰もいないと思われた場所に人型をしたコーヒーの跡が浮かび上がっていた。
光学迷彩の類か、奇妙な機械を全身に身に付けた、男と思われる人型がそのままバルトフェルドに襲い掛かってきた。
その動作は素早いものの、体術の類の動きではなく、軍事格闘術の心得があるバルドフェルトであれば簡単に制圧できると思われた。
だがバルトフェルドはぞくりと背中に悪寒を感じていた。
(体術の心得がある動きではない。警戒厳重なこの場に侵入してきた者にそんな事があり得るか?
つまり体術が必要なくても私を無力化できるという事だ。
それは何だ?銃?毒?スタン?閃光弾?)
思考は一瞬で、行動は刹那だった。
男の攻撃を躱すとバルトフェルドは距離を取った。
次の瞬間男はバルトフェルドに背を向けるとフリーダムの方へ走り出した。
「しまった!」
男の攻撃を躱した事で位置が入れ替わり、バルトフェルドとフリーダムの間に男が入り込む形になってしまったのだ。
それは男とフリーダムの間にさえぎる者が存在しない事を意味していた。
「くっ!」
バルトフェルドは必死に追いかけるが男は特別な装備をしているのか、奇妙な機械を身に付けているにも拘らずスピードは全く落ちなかった。
そして男がフリーダムの格納場所にたどり着こうと細い通路に足を踏み入れた瞬間それが起こった。
男の足元の床全体が数メートル先まで全て落下したのだ。
細い通路と言っても両手を広げても壁に手は届かず、周囲には掴まる場所も、突起物もない上に、
床が全て落下した事で、男は姿を隠す事も、何かに掴まって落下を防ぐ事も出来ず、
そのまま水の張られた最下層まで落ちる事になった。
ハイテクの極みである光学迷彩も、人智を超えた身体能力も、すべてが無意味なものとなった。
「ぷはっ!」
水から顔を上げた男は空気を貪ったが、男が落ちた水面付近には催眠ガスが漂っていた。
無防備にそれを吸い込んだ男は何とか意識を保とうとしたが、同時に水に流された高圧電流によって意識を手放した。
「落とし穴なんて前時代的なものと思っていたが、床全体が抜ければ掴まる事も出来ず、空を飛べない以上落ちるしかないか。
しかもガスで意識を刈り取り、どんな機械でも高圧電流が流されれば役立たずか。
あの人の性格の悪さがわかるな」
その様子を上から見ていたバルトフェルドの呟きが、この罠の悪辣さを現していた。
「ハイテクに頼る奴ほど、地面がなくなるなんて想定もしないもんさ」
このセキュリティ、いや罠を設置した時のタイガの黒い笑みを思い出して、バルトフェルドは捕まった侵入者に同情した。
オーブの最重要機密区画に侵入者を許した事は大問題になり、セキュリティの徹底見直しが行われた。
唯一、フリーダムの機密が公にならなかった事が救いだった。
尋問した結果、侵入者を送り込んだのはファウンデーション王国と判明した。
それはタイガが「あり得ない」と判断した直接的なオーブへの侵略行為だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。