転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
本話は感想欄での読者の方の感想から着想を得て作成しました。
拙い話ではありますが、皆様の暖かいお言葉によって、より深く世界を掘り下げる話をひとつ作成する事が出来ました。
この場を借りて、感想をいただいた皆様にお礼を申し上げます。
「あら?・・・」
オーブ行政府のタイガの執務室でカルアはプラントのデータと向き合っていた。
「おかしいわね?こんな事があり得るのかしら?」
プラントのデータに疑問を持ったカルアはプラントの情報を統括するトモを呼び出した。
――――
「ただ今参りましたカルア様。どういった御用ですか?」
「ああ、トモエ。プラントの人口について訊きたい事があるのだけれど、分かる範囲でいいから教えてくれないかしら?」
「プラントの人口ですか?」
「ええ、これを見てちょうだい」
カルアが示したデータにはコーディネーターの人口推移が表示されていた。
C.E.15 ジョージ・グレンの告白
C.E.20 コーディネート技術ほぼ確立(C.E.22シーゲル・クライン誕生、C.E.23パトリック・ザラ誕生)
C.E.30 第一次コーディネーターブーム
C.E.41 第二世代コーディネーター誕生
C.E.44 プラント完成
C.E.45 コーディネーターの人口、全世界で推定一千万人を突破
C.E.55 トリノ議定書 新規コーディネーター作成禁止(キラ、アスラン、ラクス誕生)
C.E.70 コーディネーター総人口は全人類で5億人、その内プラントに6千万人
「C.E.30に第一次コーディネーターブームでコーディネーターが増えているはずなのだけれど、
15年後のC.E.45でもコーディネーターの人口は全世界で推定一千万人しかいないのよ。
それがたった25年後のC.E.70でコーディネーター総人口は全人類で5億人、プラントに6千万人。
15年で1千万人しか増えなかったのに、それが25年で5億人?
プラントに限定しても25年で6倍?
いくらなんでもあり得ないわ。
プラントにいたあなたなら何か知っているかと思って」
カルアの疑問を理解して、トモは溜息をつきながら答えた。
「ああ、これですか?これは地球とプラントでは“コーディネーター”の定義が違うんですよ」
「どういう事?」
トモの言っている事が理解できず、思わずカルアは訊き返した。
「地球では医療や美容目的の軽度な調整しかされていない人は“コーディネーター”とみなされません。
地球で言う“コーディネーター”とは、それこそジョージ・グレンのような高度な調整を受けた人たちの事を指します。
でもプラントでは、遺伝子の調整を受ければ、どんな軽度な調整を受けても“コーディネーター”とみなされるんです。
だから『コーディネーター総人口は全人類で5億人』というのは、多分プラントが主張している数字です。
《高度調整されたコーディネーター》の実数はその半分以下、いえ、おそらく実際には2億人もいないんじゃないでしょうか?
下手をすると1億人を下回る可能性すらあります」
「そんな事をして何の意味があるの?」
「コーディネーターの見かけ上の実数を水増しして、『自分たちはこれだけ大きな勢力なんだ!』
とでも主張したかったんじゃないですかね?
民主主義国家では数は力ですし、背後に無視できない数のコーディネーターがいれば、
プラントの言う事を聞くようになるとでも思ったんじゃないでしょうか?」
あまりにも幼稚なプラントの政治認識にカルアは絶句した。
「C.E.55にはトリノ議定書で新規コーディネーターの作成は禁止されています。
つまりそれからC.E.70までに増えたコーディネーターは第二世代しかいないはずなんです。
でもコーディネーターの出生率を考えればC.E.55から大幅な増加は考えられません。
そうなるとC.E.70 時点で5億人の《高度調整されたコーディネーター》が存在するには、C.E.55時点で数億単位でそういったコーディネーターが存在しなければならないのですが・・・」
トモの言いたい事をカルアも理解した。
「C.E.45で1000万人しかいないコーディネーターが、C.E.55までの10年程度で10倍以上、下手をすると20倍から30倍以上増えないと有り得ないという事ね」
「そういう事です。元々の母数である「1000万人」は「高度なコーディネーター」で、
「5億人」という数字は「軽度なコーディネーター」なのですから、数字に整合性があるわけがありません」
「確かにね」
「それでも数字に整合性を持たせようとすれば、『C.E.45からC.E.55までに数億人の高度調整コーディネーターが自然発生した』という事になります。
それか、『10年に渡って、表沙汰にできない年間数千万人の闇コーディネーターが誕生した』とかですね」
「どちらもあり得ない話ね」
「全くです。それにC.E.45の1千万人ですが、これにはカラクリがあります」
「と言うと?」
「プラント完成直後のコーディネーターは1千万人ですが、これは表に出せる“完成品のコーディネーター”です」
「“完成品”?」
「『意図した能力を持っていない』『目の色や髪の色が希望と違う』『健康なだけで他に取り柄がない』
そんな理由で“失敗作”とされた人たちは、その1千万人に含まれていません」
あまりの不条理にカルアは言葉を失った。
「最初期のコーディネート技術は試行錯誤の連続です。
それこそ“メンデルでのスーパーコーディネーターの失敗”の比ではないほど大量に発生したはずです。
私の推測ですが、おそらく最低でも“完成品”の2倍から3倍、2千万人から3千万人、
少なくともそれ以上のコーディネーターがいたはずです。
その人たちがプラントに移住した結果、プラントの人口は第一世代約4千万人、第2世代1千数百万人、第3世代と移民その他が数百万人で計6千万人というところです。
この数字を説明するには、それくらいしか考えられません」
「それって・・・」
「それにプラントへの移住は基本的に“優秀な”コーディネーターが優先されます。
低レベルのコーディネーターは移住申請も後回しにされる場合が多いです。
C.E.55以降の移民は数百万人で確かに多いですが、プラントの主流ではありません。
そもそもC.E.55前後に地球からの移民が本格化する以前から、プラントには最初期に調整された“失敗作”とされた人たちも含めて、4千万人近いコーディネーターが既に住んでいました」
「ちょ、ちょっと待って!それなら最初期に差別や搾取でプラントに移住してきたコーディネーターって・・・」
「そんなのはいません。
ナチュラルの反コーディネイター感情が最悪になってプラントへの移住が本格化したのは、C.E.55前後のトリノ議定書によるコーディネーターの禁止や、S2型インフルエンザの大流行後です。
それ以前の最初期の超高額なコーディネートを子供に施す事が出来たのは、世界の富の数%を握る“超富裕層”です。
彼らが“差別”されるような教育環境に子供を放置するなど考えられません。
“搾取”などもありえません。
逆に彼ら“超富裕層”が差別する側であり、搾取する側です」
今までの認識と正反対のプラントの実情にカルアは絶句した。
「プラントではその“完成品”とされた人たちと“失敗作”とされた人たちの諍いが凄かったですよ?
親同士どころか子供にまで徹底されていましたからね。
『あの家の子供とは遊ぶんじゃない!』『あの家とは関わるな!』って感じで」
オーブの氏族家の争いも目ではないプラントの内情にカルアは何も言えなかった。
「プラント完成がC.E.44、コーディネーターの人口が全世界で約1千万人、プラントの人口がC.E.55時点で4千万人としたら、10年程度で3千万人の移民が行なわれた事になります。
年間約300万人です。
“差別”や“搾取”から逃れ、迫害されながらそれだけの人数が移住するなどあり得ません。
逆に“完成品”の1千万とは別に、最初期の超高額なコーディネートを受けた“失敗作”も含めた約3千万の人たち、つまり“超富裕層”がプラントに移住してきただけです」
「なっ!」
それは衝撃的な答えだった。
「プラントの初期移住者のリストですが凄いですよ?
それこそ当時の世界の“超富裕層”の名前が並んでいます。
学校では毎日のように彼らの子供が転校してきていました」
「何でそんな人たちがプラントに・・・」
「当時のプラントは最新設備を備えた超先進都市ですからね。
最先端の医療技術が完備され、コーディネーターは最初から経済的に優遇されています。
経済的に利益が得られるなら誰でも先を争って移住しようとするのではないでしょうか?
それと「“失敗作”でも再度調整すれば良い」とでも思ったんじゃないですかね?
プラントが当時“超富裕層”に向けた移民の案内の文句が凄いですよ?
『税金は地球の半分!』とか『収入は地球の倍!』とか『最高、最先端の医療をあなたに!』とか『あなただけに再度、特別なこの機会をご案内します!』とか。
まるでプラントが『天上の楽園』であるかのように美辞麗句が並んでいます。
表では“完成品”のコーディネーターだけで『コーディネーターは全世界で1千万人』と言っていたのに、
裏ではコーディネートされていれば“失敗作”でも移住を認めるのですから、言ってる事とやってる事が違いすぎます。
最もプラントが“超富裕層”の移住を拒否するはずもありませんが」
「・・・」
トモの言葉は説得力があり過ぎた。
誰だって税金が半分になったり、今の収入より倍の収入が得られる場所があるなら、そこへ移住しようとするだろう。
さらに最先端の医療が受けられるなら言うまでもない。
それは既に十分な資産を形成している富裕層でさえ例外ではない。
むしろ多少の金銭で当時の最先端、最高峰の医療の恩得を得られるなら、富裕層が移住を躊躇う事などあり得ないだろう。
さらに“失敗作”の子供でも、プラントでなら再調整すれば“完成品”に出来るかも知れないのであれば、移住しない理由はない。
人の欲望に際限は無い。
「それに優先的にプラントに移住出来るのは、高度調整されたコーディネーターか、高額な資産を持つ者たちでした。
例えコーディネート技術が驚異的にコストダウンされて、一般人のコーディネーターが爆発的に増えたとしても、プラントの人口は現在でも6千万人しかいません。
逆に言えば『5億人の内6千万人しかプラントに移住出来ない』という事です。
いくらコーディネーターが億単位で増えても、結局プラントに移住出来たのは、『高度調整されたコーディネーター』か『高額な資産を持つ者』だけです。
どちらも主に富裕層の事です。
例外もありますが、基本的に『プラントに移住出来るのは富裕層だけ』というのは初期から現在まで変わっていません」
「・・・じゃあ、プラントの主張していた『コーディネーターは差別や搾取から逃れてプラントに移住してきた』っていうのは・・・」
「それは多分、独立戦争の正当性を主張する為の対外的なプロパガンダですね。
『自分たちは被害者だ!』と思い込めば内部で結束を高める事も出来ますし、攻撃しても『自分は被害者で身を護っただけ』という言い張る事が出来ますから」
「・・・」
前大戦時の
『我々は地球で差別され、搾取され、追われてこの地に辿り着いた。
だから地球のナチュラルどもに何をしても、それは『正当防衛』であり『聖戦』である』
というプラントの主張を考えれば十分あり得る話だ。
「それにこれは表立って言われていた事ではありませんが、『一部の遺伝子の“再調整”も可能』という噂がありました」
「!!!」
コーディネーターは受精卵の段階で遺伝子に手を加えるのだから、一度遺伝子を調整してしまえば変更など出来ない。
その筈だ。
しかし、それが可能だとすれば?
プラントの遺伝子技術を考えれば不可能と断言する事は出来なかった。
それが可能であれば、後からいくらでも自由に“性能”を変更する事が出来る。
親の勝手な希望により、生まれてきた我が子に着せ替え人形のように“性能”を付け加えたり、削ったりする。
それはあまりにも“身勝手な親の醜いエゴ”でしかなかった。
「ほ、本当なの?」
流石のカルアの声も震えていた。
「あくまでも噂です。実際には確かめられていません。
成長して髪の色や目の色が変わった人はいたようですが、そんな人はナチュラルにもいます。
そういう話に尾鰭が付いて噂になっただけでしょう。
そういった噂を信じた“超富裕層”が移住して来たので、信憑性があるように思われただけだと思われます。
それに移住して来た“超富裕層”は子供が“失敗作”だったから“次”を求めたのではないでしょうか?
仮に子供の“性能”に不満を覚えても、わざわざ“再調整”するよりも、“次”を用意する方がプラントだったら簡単です」
自分が親に“不用物”として捨てられた時に「自分が悪いから親に捨てられるのでは?」「自分のどこが悪かったのか?」と思い、
必死で調べ回った時の事を思い出してトモは暗い気分になった。
自分の身の上から出たトモの言葉はどこにも否定できる余地がなかった。
「タイガ様もおっしゃってました。「アズラエルの奴が『富裕層の連中が資産を抱えたままプラントに逃げ出したおかげで、残された連中が苦労している』と嘆いている」って」
「じゃあブルーコスモスがプラントにテロを行っていたのは・・・」
「おそらく地球の資産をプラントに持ち逃げした富裕層への恨みですね。
富裕層は会社や工場を売り払ってプラントに移住して、地球に残ったのは空っぽの倉庫と会社だけです。
端金の退職金を渡されて放り出された従業員が恨んでも当然ですね。
それに富裕層は会社の所有していた知的財産、特許等は握ったままプラントに移住したようです。
特許等を握られていれば、地球に残った者が新たに起業する事も出来ませんし、起業しても特許収入等は全てプラントに流れるだけです。
搾取していたのはむしろプラントです」
「・・・それが仮にも社会的責任のある富裕層のやる事なのかしら?」
「そんなものがあればプラントはもっとまともになっていたでしょうね」
「どういう事?」
トモの言葉と表情には隠し切れない苦みが浮かんでいた。
「プラントに移住してきた連中の子供の特権意識は凄かったですよ?
物心つく前から親の金で何でも思い通りになりましたし、周囲には自分より劣ったナチュラルしかいなかった事もあって、
『他人を思いやる』とか『嫌な事をされたら相手がどう思うか?』といった他人への共感や、想像力が欠けているんです。
周囲が同じコーディネーターになった途端、自分の思い通りにならなくて癇癪を起して暴れまわるなんてしょっちゅうでした」
「ちょ、ちょっと待って!それなら最初期の移住してきた富裕層のコーディネーターは・・・」
「多分『子供の頃から全て自分の思い通りになり、周囲の者は全て自分より劣っていて、自分は生まれながらに優秀なコーディネーターだ!』
と思い込んだまま大人になってますね。
『他者への共感』や『自分の行動の結果の想像力』が欠如したまま大人になったのが『プラントの連中』という事でしょうね。
実際、プラントでは年齢が高いほど、嫌な言動の者が多かったですね」
子供の頃のプラントの様子を思い出し、トモは顔をしかめた。
「じゃあ、プラントがNJを散布して、大虐殺を引き起こしたのは・・・」
「『他人の痛み』を理解できず、『想像力が欠如して』『自分の行動が何を引き起こすのか?』という事を理解していなかったからでしょうね。
つまりプラントの連中は我が儘放題に育った『唯の身体の大きな幼児』と変わりません。
そんな連中の集まりにまともな国家運営が出来るはずがありません。
プラントは『国』などではありません。
いわばプラントは『唯の身体の大きな幼児』が我儘放題に振る舞うだけの『幼児の王国』です。
オーブに居て、プラントを外から見ているとそれが良く分かりますよ」
「・・・」
カルアはトモの言葉に何も言い返す事が出来なかった。
自分たちが相手にしてきたのは『優秀なコーディネーター』でも『人類史上最大の虐殺者』でもなく、
『唯の身体の大きな幼児』でしかなかった。
それならばプラントの現状も、確定している未来の破滅も、当然の結果でしかない。
それでもカルアは意味のない事だと理解していても、エイプリル・フールクライシスが実行されたのは、
ナチュラルには理解出来ない理由だとしても、もっと別の『何か重大な理由』があるのでは?
という思いを捨て去る事が出来なかった。
1億数千万人の人の営み、約束されていたはずの平穏な未来、希望に満ちた明日、それが一方的に奪われた理由が『唯の幼児の我儘』などと誰が認める事が出来るだろう?
プラントは『国』ですら無く、唯の『幼児の王国』でしかない。
その事実はカルアに途方もない虚しさしかもたらさなかった。
※あとがきです。
プラントの人口推移からの考察でした。
C.E.45時点での全世界のコーディネーターは推定一千万人。
C.E.70時点でのプラントの人口は六千万人。
プラント完成はC.E.44ですからプラントが出来てから26年しか経っていません。
ジョージ・グレンの告白がC.E.15、コーディネーターの生産開始がC.E.20前後とすれば、コーディネーターの出生率から考えても、
C.E.45時点で1千万人のコーディネーターのほとんどが成人で、即座にプラントに移住し、結婚して子供を作ってもC.E.70時点で人口が六千万人になる事はあり得ません。
第一次コーディネーターブームがC.E.30前後。
それでも全世界のコーディネーターは15年後のC.E.45でさえ全世界で一千万人前後しかいません。
以前から誕生していたコーディネーターを含めても、コーディネーターブームが起こっても一千万人弱しか増えていないのです。
アスランがC.E.55誕生ですから、この年代の前後から第二世代が増え始めたと考えられます。
つまりC.E.55時点でのプラントの人口はほとんどが20〜30代、C.E.70に人口が六千万人だという事から考えても、
最低でもC.E.55時点では4千万人前後のコーディネーターが存在しなければなりません。
それはほぼ地球からの移民と考えられます。
約十年前後で三〜四千万人、年間三〜四百万人の移民です。
これだけの人数が「差別」や「搾取」を理由に生まれ育った場所を捨てて移民を決断するでしょうか?
何より作中のディスティニープランの章でも指摘しましたが、コーディネートには多額の資金が必要です。
開発されたばかりのコーディネートを我が子に施す事が出来るのは富裕層に限られます。
約十年前後で三〜四千万人、年間三〜四百万人もの富裕層が「差別」や「搾取」を理由にわざわざプラントへの移民を選択するでしょうか?
我が子に開発されたばかりのコーディネートを施す事が出来るほどの富裕層であれば、「差別」から我が子を守る事など簡単です。
「搾取される」などあり得ないのは言うまでもありません。
論理的に考えて、初期のコーディネーターのほとんどは富裕層です。
彼らの移民には経済的優遇や先進的な医療など、プラントへの移民を選択するだけの理由があったと判断できます。
「地球より税金が安い」「地球より進んだ医療を受けられる」「コーディネーターというだけで多額の収入が保障される」という状況であれば、富裕層は先を争ってプラントへ移住するのではないでしょうか?
「差別」や「搾取」が無かったとは言いません。
しかしそれは極一部であり、大部分のプラントのコーディネーターは「差別」や「搾取」とも無縁だったと判断すべきです。
むしろ「差別」や「搾取」が特殊な例外だったからこそ、大きく取り上げられたのではないでしょうか?
そして一般市民が気軽にコーディネート出来て、移民を決断しなければならないほど差別されていたのであれば、
プラントの人口が六千万人程度である理由が説明出来ません。
もし数千万人の移民の大部分が「差別から逃れた一般市民のコーディネーター」であれば、C.E.45では富裕層でも1千万人しか調整を受けられないのに、
数千万人の一般市民が「開発されたばかりのコーディネートを多額の資産を費やして我が子に施した」事になります。
そんな事がありえるでしょうか?
仮にコーディネート技術が驚異的にコストダウンされ、それこそ街角での美容整形レベルで気軽に行えるようになったとしても、ある程度の子供の成長には10年以上かかります。
生まれて間もない赤ん坊や幼児を「コーディネーターだから」という理由だけで差別したり、迫害する事などいくら民度が終わっているC.E.でもあり得ないでしょう。
つまりC.E.45以降にコストダウンされて産み出されたコーディネーターが差別を受けるようになるのはC.E.55以降になります。
仮にC.E.55以降の移住者が全て「差別から逃れてきた一般市民のコーディネーター」だとしても、C.E.55以前は富裕層が数十万、数百万人規模でプラントへの移住を考えるほど差別されるなどあり得ないとしか言えません。
もし、日常的にコーディネーターが差別され、安住の地がプラントしか存在せず、
数億人のコーディネーターの中でも「『選ばれた者だけ』しかプラントに移住出来ない」のであれば、
その場合、プラントに移住できるのはシンのように『優れた遺伝子を持つ者』か、『経済的に裕福な者』になる事は明らかです。
《つまり最初期のプラントへの移民と同じく『プラントに移住できるのは富裕層だけ』という事は変わりません。》
このような状況では、プラントが『自分たちは選ばれた者だ!』と思い上がるのも当然かも知れませんが。
(その場合、彼らはそれが『差別』という事に気付く事は無いでしょうが)
そして開発されたばかりの超高額なコーディネートが施された富裕層の子供が、果たしてまともに育つでしょうか?
おそらく幼少の頃から、思い通りにならない事などほとんど無く、『現代の貴族』と言えるほど我儘放題に育つと思われます。
これに生まれた時からの『優秀な遺伝子』が加わります。
周囲はナチュラルで能力は自分より劣り、失敗も挫折も経験せず大人になると思われます。
そんな人たちがプラント完成後、コーディネーターしかいないプラントに集まります。
彼らが『現代の貴族階級』のように振る舞うのはもはや必然ではないでしょうか?
本作でのデュランダルの周囲にそのような者たちしかいなかったのは当然の事でしかありません。
『自我を抑える事なく、我儘放題に育った幼児』
それが『プラントのコーディネーター』の正体ではないでしょうか?
少しでも想像力があればNJの散布が何を引き起こすか、それが『人類史上最悪の大量虐殺』をもたらす事が理解出来ないはずがありません。
原作でのプラントの『他者との共感能力の欠如』や自分の行為の結果に対する『想像力の欠如』を見る限り、十分あり得ると思いますがどうでしょうか?
プラントのコーディネーターですが、彼らの主張は、
「(優れた存在である)コーディネーターがナチュラルと同じ扱いを受けるのは差別だ!」
「(同じ仕事をしても)コーディネーターが優遇されないのは搾取だ!」
「(無条件で)コーディネーターがナチュラルより優遇されないのは弾圧だ!」
という事ではないか?としか思えません。
「差別」や「搾取」以前の話として、そのような言動を繰り返す連中が社会から弾き出されるのは当然ではないでしょうか?
プラントはそのような『社会不適合者の集団』としか思えません。
その結果が原作でNJ散布による10億もの人命を奪う事になったのではないでしょうか?
最もあり得るのは、評議会などのプラント上層部が独立に対する『建国神話(言い訳)』として、
「コーディネーターは差別されている」
「コーディネーターは搾取されている」
「迫害されているコーディネーターに安住の地を」
と言い出したのではないでしょうか?
それがいつしかプラントの公式見解になったのではないでしょうか?
しかしながら、例えプラントの主張が全て事実であったとしても、
『差別』もあったでしょう。
『搾取』もあったでしょう。
『安住の地』を求めるのも理解出来ます。
しかし、それを『口実に』他人の生命や財産を暴力で奪う事が許されるはずがありません。
拙作においてプラントの扱いはこのような理由から決定されています。
感想欄での読者の方の感想から
「こんな事もあり得るのでは?」
「こんな事だったのではないか?」
と想像を膨らませて今回の話を作成いたしました。
結果、本作におけるプラントの背景を明確に説明出来る話が出来上がりました。
読者の方の感想が無ければこの話は出来上がりませんでした。
これもいつも暖かい感想を届けてくれる皆様のおかげです。
この場を借りて、感想をいただいた皆様に再度お礼を申し上げます。
どうもありがとうございます。
さて、次回から本編の再開です。
アーク・エンジェルとブラックナイトの激突直前の様子です。
次回お楽しみください。