転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
ファウンデーション王国への威力偵察を終了したアーク・エンジェルはオーブに帰還していた。
もっともその外見はボロボロであり、アーク・エンジェルが無事に戻ってこれたのは、
戦闘ではなく逃走に主眼を置いていたからであろう。
「いやー、参りましたよ。ちょっとばかり相手を甘く見ていたかもしれませんねえ」
そう言うバルトフェルドは傷ひとつ負っていない。
「そうそう、もうこんな任務は勘弁してもらいたいなあ?」
ムウもそうぼやいているがこちらも無傷だ。
「俺、よく生きているよなあ?」
大人二人と違い、ディアッカはタイガに文句を言う気力もないようだ。
「せめて、もう少し任務の内容を考慮してほしいのですが?」
マリューもさすがに自分の艦をボロボロにされて頭にきているようだ。
額に浮かぶ青筋を隠せていなかった。
「まあ、君たちのおかげで相手の情報は手に入った。これでオーブは救われる。
君たちの働きは間違いなく多くの生命を救ったんだ。それは誇るべき事だ」
「でも、表沙汰には出来ないんですよね?」
ムウの突込みにもタイガは動じなかった。
「功績を表沙汰にされて民衆から英雄扱いされるのがお望みかね?アムロ一尉のようになりたいのかね?」
アムロは最終決戦で戦場を支配していた、当時の最新最強のプラントのMSを単独で撃破しており、
既に存在していた伝説も加わり、もはや軍神に等しい扱いをされていた。
もっとも表立ってはアムロの名前は公表されていないのだが、もはや「公然の秘密」というものだった。
その結果アムロはもはや変装せずには街も歩けなくなっていた。
さすがに官舎の中までは追いかけてこないものの、四六時中マスコミや熱狂的な市民に追いかけまわされ、
一挙手一投足に視線を向けられ、アムロが買ったものと同じものを購入しようと、街中でハンバーガー一つ買う事も出来なくなっていた。
「さすがに、それはちょっと・・・」
「まあ、後でちょっとした休暇をプレゼントしてやるからまずは報告を頼もうか?」
タイガの言葉に4人は姿勢を改めた。
タイガの執務室の画面にアーク・エンジェルの戦闘の様子が映し出される。
「まずファウンデーション王国のMSですがこの黒いMSが中核と思われます」
画面に映し出されたのは4機のブラックナイトスコードだった。
「これにそれぞれプラントから購入したと思われるジンとディンの改修機を3機ずつ随伴しています。
本体の武装はビームライフルで、他は近接メインのようで、これらの随伴機からのミサイルで火力を補っているようです。
ただし随伴機はパイロットの練度は大したことがないようで、攻撃の開始も回避も全て指揮官の指示で行っているようです。反応が悪すぎます」
「ふむ?」
「この黒いMSですが近接戦闘はかなりのものです。射撃ではこちらのビーム兵器は殆ど通用しませんでした。
アーク・エンジェルの十字砲火に引き込んだのですがイーゲルシュテルンの直撃でも無傷でした」
「なに!」
「俺のバスターの超高インパルス長射程狙撃ライフルでも無傷だったぜ?」
「射撃が通用しないなら近接装備なのも当然だよなあ?」
「・・・」
ディアッカとムウの言葉にタイガは黙り込んだ。
画面には機体の周囲にマントのように展開されたビームによって、バスターからの狙撃を悉く防いでいる黒いMSの姿があった。
「しかし実体弾にはそれほどでもないようです。
通常の砲ならともかく、フリーダムのクスィフィアスレール砲で損傷しています」
画面にはアーク・エンジェルの対空砲やビームライフルを軽々と跳ね返していた黒いMSが、
フリーダムのレールガンで装甲を破壊され撤退する様子が映っていた。
「近接戦闘の能力はかなり高いですが、ビームサーベルであれば撃破可能です」
画面の中の黒いMSは追撃のビームサーベルによる斬撃で片腕を失っていた。
「さすがに無敵ではないか・・」
安堵しかけたタイガだったがバルトフェルドの次の言葉に顔色を変えた。
「問題なのはMSよりもこのパイロットです。下手をしたらNTに匹敵する可能性があります」
「なんだと!」
バルトフェルドはアムロと模擬戦を行った時の事を思い出しながら言った。
「アムロ一尉のように「何をしても躱される」「何をしても躱せない」という感じではありませんが、
まるでこちらの思考を読んでいるかのような動きをしていました。
そして他機との連携も通信を用いていた様子はありませんでしたがかなりのものです」
「・・・」
「それと索敵能力は通常と変わらないようです。
こちらが撤退しようとした時に援護したブリッツに気付いていませんでしたからね」
そう、ムウのやった事はミラージュ・コロイドを展開して周囲に潜伏し、バルトフェルドの撤退を援護する事だった。
ブリッツは無事に撤退する事を目的としていたバルトフェルドの文字通り「最後の切り札」だった。
ムウが無傷だったのは当然でもあるが、その重要性は何も代わりはない。
それを理解した上でのムウとバルトフェルドの軽口だった。
「もし、アムロ一尉のようにミラージュ・コロイドにも対応出来たらと思うと、気が気じゃなかったなあ?」
ブリッツでアムロと模擬戦をやった時、ミラージュ・コロイドを展開していたのに的確に攻撃されて瞬殺されたムウは、ブラックナイトは同じ事を出来ない事が分かって安堵していた。
レーダーにも映らず、センサーの探知範囲外の敵でさえ捕捉出来る
「近接重視のビーム兵器が通用しないMSが連中の中核か・・・」
「まあ、相手の手の内はわかったんです。対応のやり方はいくらでもあります。後はお任せしますよ?」
タイガに面倒事を押し付けられると分かってバルドフェルドは上機嫌だ。
しかし返されたタイガの言葉に顔を引きつらせる事になる。
「・・・そうだな?対応を考えるのはこちらの仕事だな?
まあ、俺がどんな無茶な対策を考えても、普通の連中には無理でも君たちなら実行できると信じているよ?」
バルドフェルトはタイガの考えた「無茶な対策」が、自分たちに押し付けられる未来を幻視して暗鬱たる気分になった。
「まあ、ご苦労だった。報酬は弾んでおくし、特別に長期休暇も許可するから今はゆっくり休め」
タイガの執務室から退出した後、恨めしげにバルトフェルドの方を見ながらムウはぼやいた。
「あ~あ、せっかくの休暇だってのに後の事を考えると楽しめるもんじゃないなあ?」
「結局、スポンサー様の提案を実行するのは私達だ。知るのが遅いか早いかの違いだけで変わらんよ」
「それでも、少しでも長く希望は持っていたいじゃないか?」
軽口を叩き合うムウとバルトフェルドの横でディアッカがマリューに尋ねた。
「隊長達っていつもこんな感じなんですか?」
「まあ、あなたも早く慣れた方がいいわよ?」
「俺、早まったかなあ?」
プラントから戻ったディアッカはキラの護衛という任務から解放されて一時的に暇を持て余していた。
そんな時自分の乗っていたバスターが使われている部隊があると聞いて、興味を持ったのが「傭兵部隊・大天使」だった。
その隠す気ゼロのネーミングに呆れたものの、再びバスターに乗る事が出来るのであれば何も言う事は無い。
しかも報酬も破格だ。
そしてディアッカはその破格な報酬の理由を身をもって実感しているところだった。
核動力のMSとミラージュ・コロイドのMS。
どちらもユニウス条約によって国家所有と使用が制限されているMSだ。
しかし国家と関係ない一介の傭兵部隊が所有しているのであれば条約は関係ない。
一介の傭兵部隊がどうやって核動力のMSとミラージュ・コロイドのMSを維持しているのかは不明だが――
報酬が破格な理由だった。
「俺って無事に帰って来れるんだろうか?」
ムウとバルトフェルドの軽口の応酬を横に、そんな事を考えるディアッカであった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。