転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「ファウンデーション王国はアウラ・マハ・ハイバルの国だ。
逆に言えば、アウラ・マハ・ハイバルがいなくなればファウンデーション王国など何の脅威でもない」
「暗殺……ですか?」
「バカを言え。そんな事をしても、同じような真似をする奴が出てこないとも限らないだろう?
二度とおかしな真似をする奴が出て来ないように、奴の妄想を、正面から、完膚なきまでに叩き潰す必要がある」
「プラントと同じだな」というタイガの呟きに、軍幹部たちは納得した。
かつて世界中を覆っていた「コーディネーターは優れた存在である」という“コーディネーター優生主義”は、もはや誰にも顧みられる事はなくなっていた。
そんな事を言う連中は「現実を見てみろよ」と言ってプラントを指差されると、全て沈黙した。
そこには、かつて「自分達は新人類である!」と自称していた者達が味のしないペーストを口にし、新鮮なトマト一個に狂喜する姿があった。
さらに宇宙港で働くプラントの女達はオレンジ一個で喜んで一晩男の相手をし、それが「新鮮な食料を得られる」として憧れの職業にすらなっていた。
本当に「優れた存在」ならば、なぜそのような事になっているのか?
しかも徐々にニュータイプが現れ始めた事により、コーディネーターの肉体的な強靭さも意味を無くしていた。
MSはコーディネーターが開発したものだが、それを扱うのはニュータイプの方が遥かに優れているのである。
さらに稼働し始めた第2プラントでは、ナチュラルも、コーディネーターも、ニュータイプも区別されず多大な成果を上げていた。
もはや世界中で「コーディネーター優生主義」は完全に姿を消していた。
そんな世界の中で、「コーディネーター優生主義の極致」とも言うべきディスティニー・プランを実行している人物が、自分の考えを変えるはずがなかった。
「しかし、アウラもわざわざ地球でディスティニー・プランを実行しなくても良いものを。
どこか別のコロニーでなら短い間でも成功しただろうに」
ディスティニー・プランを評価するようなタイガの言葉に軍幹部達は疑問を感じた。
「タイガ様?その言い方だと何やらディスティニー・プランは宇宙でなら成功するように聞こえますが?」
「その通りだ。少なくとも期間限定の「希少な人的資源の効率的配分」という点ではディスティニー・プランは優れている」
タイガの口から、完膚なきまでにディスティニー・プランを否定した男の言葉とは思えない台詞が飛び出した。
軍幹部達の驚愕を他所にタイガは言葉を続けた。
「閉鎖された環境で手配できる人材が限られているような状況では「短期間であれば」ディスティニー・プランは有効だ。
今いる人材を有効活用しなければ生存できないのだから当然だな。
しかし、人口が増えなければ「新たな人材」など生まれてこないし、限られた人材が酷使され続けるだけだ。
ディスティニー・プランの成立には、新たな人材が増え続けなければならない。
つまり「期間限定で」「コロニーのような閉鎖空間で」「人口が増える事」が前提だ。
閉鎖環境では人材は選べない。いる人間で回すしかない。月の開拓初期と同じだ。
人材も資材も限られた状態で、最高の効率で成果を出し続け、その後も人材が派遣され、人口が増え続けているのであれば発展するだろうな。
人口が増えないプラントでは改善が期待できない以上、単なる「現状維持」なので意味がないがな」
「しかし、それでも最適化すれば・・・」
「ディスティニー・プランでは職業が「遺伝子で適性を判断された者」に割り当てられる。
つまり適正以外の事は素人でしかない「スペシャリスト」だ。
しかし、プラントのように人口が減り続ければいずれ一人で複数の業務を兼任しなければならなくなる。
この時必要なのは「ひとつの事しか出来ないスペシャリスト」ではなく「複数の事ができるゼネラリスト」だ」
「それではプラントでディスティニー・プランを実行しても将来的に破綻するのでは?」
「だからデュランダルは地球にディスティニー・プランを採用させようとしたんだろうな。
地球がディスティニー・プランを採用すれば地球の混乱と、新たなコーディネーターの確保を同時に達成できるからな」
「地球の混乱ですか?どういう事でしょう?」
「地球でディスティニー・プランを実行しても上手くいくはずがない。
それどころかディスティニー・プランを採用した国で「遺伝子的に優れている者」と「それ以外の者」で争いが始まるのは避けられない。
為政者が『科学によって「遺伝子的に優れている」と決めた者』が優遇され、「それ以外の者」は奴隷階級になる。
それは『科学』に名前を借りた独善だ。
為政者が気分次第で『アイツを優遇しよう』、『アイツは役に立たない』と判断しても、『科学だ!』と言い張ればそれで終わりだ。
そんなのが受け入れられるはずがない。
何しろ「どれだけ努力しても自分の子供たちが子々孫々まで奴隷階級のまま」なんて状況に納得できる者などいない。
世界中で反乱騒ぎが頻発するだろうな。
そんな状況で手っ取り早く成功するにはコーディネーターになるのが一番の近道だ。
地球でディスティニー・プランが主流になれば「地球は混乱してプラントに対抗する事など不可能」となり、コーディネーターも増えて「プラントの人口問題も解決」という事だ」
「ぎ、議長はそこまで考えていたのですか?」
タイガがいなければ、一歩間違えれば世界中で合法的に奴隷制度が復活していたかもしれなかったのだ。
軍幹部達はぞっとした。
「つまりディスティニー・プランとは単なる“期間限定、閉鎖系限定の政策”でしかない。
しかも人口が増え続ける前提でなければ意味がない。
そして、人口が増えればディスティニープランは無意味になる。
ディスティニー・プランの本質は「少ない人材を有効活用する事」なのだから、人口が増えれば余裕が出来て自由な仕事に就く事もできるようになるのだから当然の話だ。
しかし、プラントでディスティニー・プランを実行しても人口が増えないのだから、精々プラントが滅びるのが「100年先から110年先に延びる」程度でしかない。
それを人の移動が自由な地球で行おうと言うのだから、ディスティニー・プランが破綻するのは当たり前だ」
「ファウンデーション王国はそれを地球で実行していると?」
「ディスティニー・プランでは、為政者の定めた「適正のある者」の優遇は「適性のない者」からの搾取によって成り立っている。
閉鎖されたコロニーと違って地球上だったら人はどこへでも自由に移動できる。
それなのに国民がファウンデーション王国から移動しないという事は、国民の移動が制限されているという事だ」
国民を省みないファウンデーション王国のやり方に軍幹部達は顔を顰めた。
「それにコーディネーターが種と言えないほど短命なのは間違いない。
アウラの造り上げたアコードか?
あれもいくらスーパーコーディネーターに匹敵する性能を持たせる事が出来たと言っても、単なる『コストダウンに成功したスーパーコーディネーター』というだけだ。
コストダウンした分、他の機能を付け加えただけだな。
基本的には只のコーディネーターと同じだ。
コーディネーターである以上、補充し続けなければ枯渇して絶滅するのは変わらない」
タイガにしてみれば“ニュータイプ”が既に存在している現状では、アコードも、アウラの生涯を賭けた研究も、『多少毛色の変わったコーディネーター』以上の意味を持たなかった。
そしてそれは事実でもあった。
「しかし遺伝子治療した者は大勢います。その者達がいればコーディネーターの数に問題は無いのではないでしょうか?」
軍幹部は疑問を述べるが、それに対するタイガの答えは明確だった。
「それはコーディネーターではない」
「は?」
「え?」
その場にいる多くの者がタイガの言葉を即座には理解出来なかった。
「“遺伝子治療”と“
“遺伝子治療”とはいわばボロボロの車を走れるように修理する事だ。
フレームを補修し、エンジンをオーバーホールし、サスペンションを取り換え、外装を整え、車の寿命を延ばして長く走れるようにする事だ。
しかし“
“
普通の車にそんな“
「それは・・・」
「車体にそんな無理をさせれば、結局、車の寿命を縮めて走れなくなるだけだ。
長く走るようになるどころか、すぐに走れなくなる。
それだけで“遺伝子治療”と“
「た、確かに・・・」
「事実、“遺伝子治療”の目的は、遺伝子が汚染され子供を作れなくなってしまったことに対する治療として生まれたものだ。
『子供を作れるようにする』“遺伝子治療”と、『子供が作れなくなる』“
根本的に別物だな。
それに、かつては総人口の20%が遺伝子汚染されたとも言われているが、現在ではそれはほぼ根絶されている。
もし、“遺伝子治療”された者をコーディネーターに含めるなら、コーディネーターは20億人を超える事になる。
そんな事は有り得ないだろう?」
「・・・」
タイガの言葉にその場にいる者は何も言い返せなかった。
「アウラが新たなアコードや、コーディネーターを確保するにはディスティニー・プランが必要だ。
ディスティニー・プランを継続するには被支配層からの搾取が必要だ。
だが、他者からの一方的な搾取で国が成り立つはずがない。
現代に奴隷制度を復活させるようなものなのだから、そんなものが長続きしないのは明白だ。
国内からの搾取が限界になれば、国外からの収奪に目を向けるのは当然だな。
それには当然軍事力が行使されるだろう。
だが、連中のそんな都合にこちらが付き合う必要は無い。
まとめて叩き潰してやればいい。
ディスティニー・プランを強制する軍事力が無くなれば、国内からの反発は必至だ」
「タイガ様・・・」
「ファウンデーション王国はアウラ・マハ・ハイバルの国だ。
大軍も、大規模破壊兵器も必要ない。
アウラ・マハ・ハイバルの心をへし折ればファウンデーション王国は終わりだ」
「それはいったいどのように?」
「お前達には苦労を掛けるが、犠牲も少なく、被害は最小限に抑えられるはずだ」
タイガの策を聞いた軍幹部たちは絶句した。
「認められません! そのような事は!」
「我々の存在理由の否定ではないですか!」
「何よりタイガ様の名に傷が付きます!」
「それならむしろ我々に『戦え!』とお命じ下さい!」
激高する軍幹部たちの声を聞きながら、タイガは静かに返した。
「騒ぐな。俺の名に傷が付く事で犠牲が少なくなるのであれば、何をためらう必要がある?」
「タイガ様! 我々は軍人です! 国を守るのが仕事であり誇りです! その我々に誇りを捨てろとおっしゃるのですか!」
悲痛な叫びにも、タイガは動じなかった。
「そうだ。だがお前達は誇りを捨てるのではない。俺の命令を実行するだけだ。
俺の命令を実行する事がお前達に誇りを捨てさせる事になるのか? それでより多くの命が救われるのに?」
「それは……」
男たちは一言も言い返せなかった。
「俺の名に傷が付く事で、お前達の誇りや、皆の命が守れるのであればためらうな!
俺の命令を間違いなく実行しろ! いいな!」
「「「ハッ!」」」
男たちは一斉に敬礼した。
後に「オーブの虎の敗走」、「虎の罠」と様々な名で呼ばれる、ファウンデーション王国滅亡のきっかけはこうして始まった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
前半部分は皆様に感想欄で指摘され、自分の創作力の低さを思い知らされ、本気で「全面的に書き直そうか?」と思いました(涙)
しかし、それでは他の箇所も修正しなければならなくなり、更新が遅れ拙作を楽しみにしていただいている皆様にご迷惑をかける事になると判断し、そのまま公開させて頂く事にいたしました。
それと後半部分は皆様からの感想を参考に作成させて頂きました。
拙い作品ではありますが、皆様からの暖かいご声援を少しでも作品に活かす事が出来ればと、日々感想欄を眺め一喜一憂している作者です(笑)
どうか、簡単に予想出来る話しか作れない非才の身をお見捨てなく、最後までお付き合い頂ければ幸いです(涙)
次回お楽しみください。