転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。

原作とは異なる解釈や独自設定が含まれますのでご了承ください。

内容は全て本作における創作ですので原作との差異がありましても、
なにとぞご容赦ください。

気軽に読んでいただければ幸いです。





第18話 別れ

 

 

大西洋連邦の学園都市に留学して数年が経った。

 

タイガは帰国の準備をしていた。

 

留学の期間は終わった。

十分とは言えないが、必要な事は全てやり終えたはずだった。

 

ただひとつだけ心残りがあった。

 

コンコン。

 

軽くドアがノックされる。

返事も待たずに開いたドアからはアズラエルが顔を見せていた。

 

「おいおい、まだ準備が終わっていないのかい?」

 

「もう終わりだよ」

 

そう軽口を返すとタイガはスーツケースをパタンと閉めた。

 

「じゃあ行こうか?」

 

「行くって?」

 

アズラエルとタイガの友人達がゾロゾロと部屋に入ってくる。

 

「何を言ってるんだ? 帰国する君の送別会じゃないか?」

 

「オイオイ、本気だったのか? あれ絶対1日じゃ無理だろう? 俺は明日帰国なんだぞ?」

 

それを聞いたアズラエルはニヤリと笑い、堂々と言い放った。

 

「知っているかい? 23時59分までは『明日』なんだよ!」

 

「行くぞー!」

 

「「「「オー!」」」」

 

「ちょっと待て〜〜〜!」

 

抵抗するタイガを無視して友人達はタイガを担ぎ上げると、そのまま運び出して行った。

 

――

 

タイガは学園都市を走り回っていた。

 

名目は「送別会に参加してくれた人たちへのお礼」。

実態は、悪友たちによる第二次送別会――という名の強制イベントだった。

 

「くそ〜、これの何処が『送別会』なんだよ! 俺は送られる側だぞ!」

 

お世話になった人達にお礼の品を渡す。

それは分かる。

 

しかし既に先日の送別会で個々にお礼は言っているし、ひとりひとり個別にメッセージカードも届けている。

最低限の義理は果たしたはずだ。

 

「分かってないな〜。帰国間際の忙しい時にわざわざ自分にお礼の品を届けてくれる。これを嬉しく思わない人はいない! だからこそ君の事が強く印象に残って覚えていてもらえるというものじゃないか?」

 

ニヤニヤと笑いながら、絶対にそれ以外の意図があるのを隠そうともしない親友の顔に一発叩き込んでやろうか?

そう考えたタイガを責める事は誰にも出来ないだろう。

 

考えると同時に既に手が出ていたが。

 

――

 

「ゼ〜、ゼ〜、ゼ〜……」

 

「お〜、まさか本当に一日で終わらせるとはねえ」

 

深夜の空港のロビーでタイガは荒い息を必死に鎮めようとしていた。

隣には顔に青あざを作ったアズラエルの姿があった。

 

「でも、結局飛行機には間に合わなかったねえ?」

 

「誰のせいだと思っている?」

 

「間に合わなかった君のせいだろ?」

 

悪びれもしない親友の言葉に、タイガはそれ以上反論するのを諦めた。

 

翌日の飛行機の時間に間に合わせる為に、タイガは深夜まで学園都市を走り回っていた。

 

確かにお礼の品を届けた人達は喜んでくれた。

わざわざこんな事しなくて良いのにと逆に恐縮していた人もいた。

 

学園都市に不在の人もいて、タイガは深夜列車を使ってまでその人に届けに行った。

その人はわざわざタイガが届けに来た事に驚き、せめてお茶でもと引き留めるのを時間がないからと強引に断り、タイガは列車の中で徹夜の強行軍によって半分意識を飛ばしながら学園都市に戻った。

 

飛行機に間に合わなかったのは途中から爆睡して乗り過ごした結果だが。

 

「でも皆喜んでくれただろう?」

 

「まあな」

 

タイガはお礼の品を届けていく度に、自然と口から相手への感謝の言葉が出てくる事に自分でも驚いていた。

 

相手は単に自分の目的「オーブの焦土化の防止」の為に利用していただけのはずだった。

それ以上のものではなかったはずだし、「自分の目的の役に立たない」と思って疎遠になった人達もいた。

 

しかしそんな人達もタイガがわざわざ来てくれた事に喜び、自分が驚くほど歓迎してくれた。

 

(俺にもこんな風に他人との繋がりがあったんだなあ)

 

目的の事以外に興味はない、それ以外の事に意味はない――

そう思い込んでいたタイガは、そうでは無かった事を隣に立つ親友によって知る事が出来た事を改めて感謝した。

 

「ハハハ、まあ間に合わなくても僕の方で飛行機は手配してあげてたからあんまり意味はなかったんだけどねえ? どうだい? 無駄に疲れた感想は?」

 

その感謝は次の瞬間霧散していたが。

 

アズラエルの顔にはもうひとつ青あざが増えた。

 

「痛てて、酷いなあもう」

 

「酷いのはどっちだ?」

 

顔を押さえてわざとらしく痛がるアズラエルを無視して、タイガはペットボトルの水を飲み干すとようやく一息ついた。

 

――

 

隣でぶつぶつと文句を言う親友の姿を見て、タイガはこの数年の出来事を思い返していた。

 

いろんなことがあった。

 

画期的な理論が見つかったと思ったら只の古い論文の焼き直しだった。

強力な兵器が完成したと聞いたら多大なコストがかかる欠陥品だった。

有効な経済政策だと思ったらアズラエルクラスの規模でなければ実行不可能だった。

 

アズラエルの持ち込んで来る大半の役に立たない話と、ほとんど意味のない話に振り回されたこの数年間をタイガは思い出していた。

 

(アレ? もしかして俺が色々トラブルに巻き込まれたのはほとんどコイツのせいか?)

 

「なんだよ?」

 

自分をマジマジと見つめるタイガに、アズラエルは胡乱な目を向ける。

 

「ああ、いけないよ! いくら僕がいい男だからって僕にそっちの趣味は無いからね! でも君がどんな趣味を持っていても親友である事は変わらないから安心してくれ! だから遠くで幸せになってくれ!」

 

アズラエルの顔に3つ目の青あざが出来たのは言うまでもない。

 

「痛てて、う〜顔が〜」

 

「自業自得だ」

 

「女の子に人気のこの顔に傷が残ったらどうしてくれるんだよ!」

 

「諦めろ」

 

タイガはアズラエルの言葉を冷たく突き放す。

 

「僕の顔に傷が残ったら世界の損失だよ!」

 

「言ってろ」

 

タイガは取り合わない。

 

(しかしまあ言うだけはあるよなあ?)

 

この数年間でアズラエルの容姿はかなり変化していた。

 

背も伸び、鍛え上げられガッチリした体格になり、儚げな雰囲気は消え、自信に溢れた所作と上品な仕草。

甘いマスクとアズラエル財閥の御曹司という肩書。

 

これでモテないわけがない。

 

アズラエルと出かけると毎回毎回連れている女の子が違うのはもはや当たり前だった。

 

(コイツ殴ってやろうか?)

 

そう思ったのは一度や二度ではない。

 

しかし自分の目的が最優先のタイガは、それに一切口を出す事はなかった。

 

ただし反射的に手が出るのは一度や二度ではなかったが。

 

――

 

「タイガ」

 

「うん?」

 

飛行機を待つ間、アズラエルがさりげない様子でタイガに尋ねる。

 

「君の目的は一体なんだい?」

 

「それは……」

 

「君の言っている事が表向きのものでしかない事は僕には分かる。一緒にやってきた僕に分からないはずがないだろう?」

 

「……」

 

それはそうだ。

 

目的が兄達の補佐であれば、タイガの行動には無駄な事が多すぎた。

 

そんな知識が政治に必要か?

そんな技術が軍事的に意味があるのか?

そんな思想がオーブに必要なのか?

 

一見関連性の無い、無駄としか思えない多くの事にタイガは全力で取り組んでいた。

 

そんなタイガの様子は側から見ると意味不明で理解不能だった。

 

「君のやっている事から判断すると、オーブは将来誰かに侵略される恐れがある。君はそれをなんとか防ぐ有効な手段を探している。そうじゃないのかい?」

 

図星だった。

 

しかし言えるはずがなかった。

 

未来を知っているなどと言っても狂人扱いされるだけだ。

しかもこの世界では自分の知識通りに歴史が進むとも限らない。

 

さらにこの目の前の親友がオーブを焦土にするのだなどと。

 

「無理に聞こうとは思わないよ。でも君の事を心配している人間がいる事は覚えていてほしいな?」

 

そう言ってアズラエルは出会った頃のような儚げな微笑みを浮かべた。

 

――

 

「……俺は昔から夢を見る」

 

「?」

 

「何度も何度も同じ夢を」

 

「??」

 

「その夢の中ではオーブの理念の為に国土は焼かれ、民は殺され、俺はそれを黙って見ている事しか出来ない夢だ」

 

「タイガそれは……」

 

「分かっている。それは唯の夢だ。何の根拠も無い。オーブは平和だし戦争なんか起こるはずがない」

 

嘘だ。

 

自分は数年後に地球全土を巻き込む戦争が起こる事を知っている。

その時に世界中で億単位の死者が出る事も。

オーブが焼かれる事もその中のひとつでしかない。

 

「もし数年後にオーブが焼かれるのであれば、俺はそれをなんとかして止めたい。何も起こらず無駄だとしても、ああすれば良かったと後悔する事だけはしたくない。自分がやっている事が無駄だと思う事がある。意味のない事だという事も分かっている。しかし俺のやっている事が無駄だとしても、意味のない事だとしても後悔しない為にも止める事は出来ないんだ」

 

結局、タイガはこの親友に完全な嘘をつく事は出来なかった。

しかし真実を告げる事も出来なかった。

 

それを理解しているのか、アズラエルはタイガに言葉を返す事はなかった。

 

――

 

「……分かった。そういう事にしておくよ」

 

アズラエルが言葉を返したのは、無言の時がたっぷり数分経ってからだった。

 

「アズラエル……」

 

「君の目的がそれなら僕はそれに協力するよ」

 

「いいのか?」

 

「何を言っているんだい? 親友の為になり、しかもオーブの人達を助ける事になるんだろう? 僕が親友の頼みを断るはずがないじゃないか?」

 

「アズラエル……」

 

やはりコイツの親友になった事は間違いではなかった。

 

そう実感していたタイガの耳に、アズラエルの手配した飛行機の搭乗アナウンスが届く。

 

「時間だね?」

 

「ああ」

 

「またどこかで!」

 

「ああ!」

 

短く別れの言葉を交わすと、タイガは搭乗口に向かって歩き出した。

 

――

 

「何だコレは?」

 

タイガの目の前には双発のプロペラ機が待機していた。

 

どう見ても骨董品にしか見えず、本当に飛べるのかさえ疑問に思う代物だ。

 

「ああ、あんたが坊ちゃんの言っていた親友かい?」

 

パイロットと思わしき男がタイガに声をかける。

 

「ああ、そうだがコレは?」

 

「坊ちゃんの指示でねえ。俺はコッチで良いんじゃないかと思ったんだが、坊ちゃんがコレで行けって命令でね?」

 

隣に駐機しているプライベートジェットを見ながらパイロットは肩をすくめる。

 

「坊ちゃんからあんたに伝言だよ」

 

パイロットから受け取ったメッセージカードにタイガは目を通す。

 

――

 

「タイガへ

オーブまでのんびり帰れるように飛行機を手配しておいたよ!

時間はたっぷりあるからゆっくりしていってね!

親友からの心遣いだからお礼なんかいらないよ!

 

追伸

君が無くしたと言っていた秘蔵のお酒は実は皆で呑んじゃったから何も心配しなくても良いよ!

 

じゃあ元気で!」

 

――

 

メッセージカードを握りしめてタイガはブルブルと震える。

 

「あの野郎! 覚えていろよ〜〜〜!」

 

タイガの意味のない叫びが広い駐機場に響き渡った。

 

――

 

追記

 

普通はオーブに帰るまで飛行機で1日程度だが、タイガがオーブに帰るまで3日かかった。

 

しかも途中で連絡が付かなくなり大騒ぎになりかけた。

タイガは兄達からこっ酷く説教される事になった。

 

「あの野郎! 覚えていろよ〜〜〜!」

 

意味のないタイガの叫びはオーブでも響き渡った。






※あとがきです。

読了ありがとうございます。

内容は全て本作における創作ですので原作との差異がありましても、
なにとぞご容赦ください。

誰にでも訪れる別れの時ですが、この二人なら最後までこんな感じだろうと、
物語の転換点として描きました。


続きも楽しんでいただければ嬉しいです。

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