転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「そう言えば、お前たちはプラントの現状を知っているのか?」
作戦終了後のブリーフィングで、ディアッカがシンたちに問いかけた。
「いえ? プラントとはほとんど連絡が取れないので」
「プラントに家族はいませんので」
「……俺もです」
「ああ、そりゃあ済まなかったなあ」
「いえ、気にしないでください。父や母からは“何があっても絶対に帰ってくるな!”と言われてますので」
ルナマリアの言葉に、ディアッカは納得したように頷いた。
「ああ、若い娘がいる家族だったらそう言うだろうなあ」
「??? どういう事ですか?」
ディアッカは、オーブで公開されているプラントの情報をシンたちに見せた。
「な!」
「こ、これは?」
「な、何で?」
そこに映っていたのは――
味のしないペーストを口にし、新鮮なトマト一個に狂喜する男。
そして、オレンジ一個で身を売る女の姿だった。
「こ、これが……」
「これがプラントの現状だ」
「な、何でこんな事に?」
「食糧輸送の護衛隊を削減したのが原因だな。
キラ議長が“食糧輸送はプラントの生命綱”と言っていたのに、それを無視して護衛隊を削減した結果、
海賊行為が頻発して民間船は輸送を拒否したんだ」
「理事国は輸送の安全を図らなかったのでしょうか?」
「理事国が安全を図るのは自国内だけだ。
プラントは独立して別の国になったんだから、安全を図る義務はプラントにある。
それなのに護衛隊を削減したんだ。海賊が増えるのは当然だな」
「そんな・・・」
「どれだけ優れた技術を持っていても、どれだけ金を積み上げても、物理的に地球から運んでこなけりゃ食料は手に入らない。
それなのに護衛隊を削減するなんて、海賊に「どうぞ襲ってください」と言ってるようなもんだ。
その結果、食料不足になるのは当たり前の話だ」
ルナマリアは言葉を失った。
「……」
「その結果、プラントは自前で輸送船団を揃える事になり、輸送コストが悪化。
購入できる食糧が減り、保存性に全力を振り向けた結果がこれだ」
「もっと食糧の備蓄があったのではないでしょうか?」
「普通の国でも食糧の備蓄は精々二〜三ヶ月分程度だ。
ほとんど全てを輸入に頼っているプラントじゃ、大して意味は無いさ」
レイの疑問はあっさり否定された。
「何故保存性を優先なんか……」
「今までは製品を製造して食料を輸入というサイクルで回っていた。
理事国も流通の安定化を図るのは当然だから航路も安定していた。
しかし独立でこの流れが無くなった。
今までは随時輸入されていたから在庫なんかあるわけない。
それが今のプラントの食糧輸入は年4回。
1回で輸入できるのは3ヶ月分。
一度でも途切れれば備蓄が尽きる。
もしもの事を考えれば、保存に全力を注ぐのは当たり前だ」
「なっ!」
シンは、プラントの食糧輸入の脆弱さに絶句した。
「もっと大規模な輸送船団にすればいいんじゃないですか?」
「目が届かなくなって海賊に襲われる危険が増えるだけだぞ?
小規模にすれば護衛コストが跳ね上がる。
効率を考えれば年4回程度が妥当なんだ」
ディアッカは、プラントでキラを支えていた頃の護衛隊の議論を思い出しながら答えた。
「後は第2プラントの稼働だな」
「第2プラントですか?」
「第2プラントが稼働した以上、今までプラントに発注されていたものは第2プラントに行く。
食糧を購入できるのは今だけだ。
第2プラントが本格稼働すれば、食糧の購入さえ出来なくなる」
「な!」
ディアッカの説明は、説得力がありすぎた。
「しかも生鮮食料品は長期間保存できない。
賞味期限が切れたら破棄せざるを得ないのだから、3ヶ月分の食料を全て生鮮食料品に出来るはずもない。
食える期間が限定されているのに量は限られるのだから、もし保存性を優先して加工せず、
生鮮食料品をそのまま輸入し続けていたら、とんでもない値段になっていたぞ?
食料品を買えない市民が出て餓死者が出ても不思議じゃない。
そうなれば暴動だ。
何しろこのままなら、将来的に食糧の購入が出来なくなるのは目に見えているんだからな」
シンたちは言葉を失った。
「少なくとも現状の人口で、十数年は餓死しない程度の食糧は確保できたらしい」
「良くそれだけの量を確保できましたね?」
レイが疑問に思った事を口にする。
「どうせペーストにするのだから、味や品質なんか関係無い。
必要なのは“栄養”であって、“人間用の食料”じゃない。
産業用や家畜の飼料用からも見境なく栄養分を抽出したらしい。
もちろん表立ってはそんな事は認めていないがな」
「なっ!」
プラントで生きていく為には“人間用の食料”を口にすることさえできないのか?
レイはもはや何も言う事は出来なかった。
「しかし、取り敢えず食料は確保出来たんだ。少なくとも生きていく事は出来るだろうな」
「じゃあ、あれは一体?」
餓死しないだけの食糧があるのなら――
なぜオレンジ一個で身を売る女が存在するのか?
ルナマリアの疑問は当然だった。
「お前、毎日毎日、味のしないペーストだけの食事に耐えられるか?
しかもそれがこの先何年も、何十年も続くんだ。
一晩男の相手をすれば、新鮮な食糧が手に入るんだぞ?」
ディアッカの答えは残酷なほど明白だった。
「最近は食料が確保出来たから、生鮮食料品も増え始めたらしいが……
何しろ6000万人分だからな?
焼け石に水だ。
トマトやオレンジが貴重なのは変わらない。
第2プラントが本格稼働すれば、それすら不可能になる。
多少の贅沢ができるのは今だけだ」
「トマトやオレンジが贅沢……」
「こ、これが独立の結果なのか?」
レイの呻き声が、三人の心情を代弁していた。
「まあ、お前たちも“プラントに帰る”なんて考えない方がいいぞ。
このままカーペンタリアにいた方がずっとマシだろうな」
「……忠告ありがとうございます」
ディアッカは言いたい事を言い終えると、その場を離れた。
残されたシンたちの心情は複雑だった。
「まさかプラントがそんな事になってるなんてねえ……
そりゃあ“帰って来るな”って言うはずだわ」
「こうなったら俺たちも、この先の事を考えないといけないな」
「レイ、何か考えがあるのか?」
「そんなのあるわけないだろう? 今から考えるんだ」
「そうよねえ?」
そんな彼らの思案をよそに、カーペンタリアとジブラルタルのザフトは、オーブの保護下に入る準備を着々と進めていた。
それが世界に公表されるまで、それほど長い時はかからなかった。
*あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。