転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
ジオン・ズム・ダイクンの息子、キャスバル・レム・ダイクンは世界中を放浪していた。
幼い頃は父の言う事を素直に信じていた。
ニュータイプ。
新たな人類の可能性。
父の言う通りだ。
なぜなら妹のアルテイシアも自分も、父の言う「ニュータイプ」の能力を持っていたからだ。
「やっぱり父の言う事はすごい!」
そう素直に感心したものの、父は自分やアルテイシアが「ニュータイプ」の能力を持っている事を頑なに信じようとしなかった。
当時のジオンにとって、子供たちのその言葉は“自分を喜ばせるための嘘” にしか聞こえなかったのだ。
何を言っても聞き入れないジオンに、キャスバルは失望した。
そして家を出て、世界各地をさまようようになった。
何しろ「ニュータイプ」の能力を持っているのだ。
悪意から身を躱す事など簡単だった。
相手が何をして欲しいのか察する事も容易だった。
そうして街から街へ、国から国へと放浪している間に、
目立つ「ダイクン」の名を捨て、知人の息子である「シャア・アズナブル」と名乗るようになった。
そんな時、地球を未曽有の事件が襲った。
プラントによるNJの散布、エイプリルフール・クライシスである。
動乱が世界中で産まれた。
前触れも無く何の罪もない人々の穏やかな日々が、希望に満ちた明日が、輝かしい未来が、プラントによって一方的に奪われた。
食料の奪い合い、略奪、暴行、絶望――
あらゆる苦難が地球を覆った。
キャスバル、いやシャアは、生きるために必死になった。
そしてある娼館の護衛として同行するようになった。
娼館の主は風変わりな男だった。
悪人を自認し、悪行を重ねる癖に同時に人助けも行うという矛盾した人間だった。
「これは娼館への仕入れだ! 人助けなんかじゃねえ!」
そう言い張るものの、NJで世界が混乱している時にそんな事をする必要は本来ないはずだった。
「俺のやっている事は偽善だ。だが誰かを助ける事が出来るなら、それに善や悪だのが関係あるか?」
そういう男の周りには、助けられた女達が自然と集うようになっていた。
綺麗事を言って手も差し伸べず、いざとなれば見捨てるような相手と、口は悪いが実際に手を差し伸べて助けてくれる相手。
どちらが信頼できるか――
比べるまでもなかった。
そんな女達の中に、ひときわ風変わりな少女がいた。
その少女と初めて目を合わせた時、シャアは一瞬で「深い宇宙の中」にいた。
正確には――
“深い宇宙にいると錯覚するほど、少女の精神と深く共鳴した” のだ。
今までこんな事はなかった。
妹のアルテイシアとさえ、こんな事はなかった。
少女は娼館の中でも売れっ子だった。
よく男達に指名されていた。
ただしベッドでの相手ではなく、男達の話相手として。
少女は口にしなくても男達の望む事を先んじて行い、その居心地の良さに、家族の前でさえできないほどリラックスして安らぐ事ができるのだという。
シャアは「当然だ」と思った。
ニュータイプであれば、相手の気持ちを察する事、して欲しい事・して欲しくない事を知るなど造作もない。
少女がニュータイプである事は間違いない。
だが、それだけで全てを知る事が出来るわけでもない。
シャアは客として少女を買った。
そこで少女から様々な話を聞いた。
エイプリルフール・クライシスで家族を失った事。
もう生きていく事が出来ず死にかけた事。
そこを娼館の主に助けられた事。
その恩を何としても返したい事。
この娼館にいればその恩を返せる事。
エイプリルフール・クライシスではありふれた、しかし間違いのない悲劇だった。
「そうか……。それでは主に『君を解放してくれ』と頼むのは迷惑かな?」
「はい。迷惑です」
一瞬の迷いもなく即答した少女に、シャアは思わず苦笑した。
「なら精々、私は君の元へ通うとしよう。傭兵が女に入れ込むなど、ありふれた話だからな」
「はい。お願いします」
そう言ってシャアは部屋を出ていった。
去り際にシャアは少女に再会を約束した。
「また来るよ。それまで元気でな。ララァ」
「はい。シャアもお元気で」
それは世界を超えて、宇宙世紀での絆がCEでも結ばれていた何よりの証だった。
※あとがきです。
裏設定
アズラエル母
「あなたはあの子を救ってくれたの。だから一言お礼を言いたくて。ありがとう」
アズラエル財閥における影の支配者
タイガの“小さな親切”によってアズラエルが救われた事に言葉にならないほどの感謝をしている。
それ以来オーブに対しては表に出さずに、有形無形様々な援助を行っている。
大西洋連邦でオーブに否定的な言動の議員はスキャンダルが暴露されたり、オーブに友好的な議員には手厚い援助が行われたりした。
経済的にもモルゲンレーテを始めとする、オーブの企業と提携し、経済的な結び付きを深めている。
もちろんそれは単なる私情ではなく、マスドライバーを有するオーブとの結び付きを求めた為。
事実、プラント開戦時は地球連合の依頼により、アズラエル財閥の私財として膨大な物資をオーブから宇宙へ届けている。
経済的にはタイガを上回る手腕を振るう女傑。
その反面、アズラエルの女性教育の為に安全な専用の風俗店を用意するほど息子に対して過保護。
しかしそれはアズラエルにとって、“母の余計な愛情”だったのは言うまでもない。
キャラクターイメージはガールズパンツァーの島田千代。
アンナ
「ところで坊ちゃま? 先ほど何やら面白い話が聞こえてきましたが? 私の年齢がどうとか?」
アズラエルの屋敷のメイド。
幼少の頃から10年近くアズラエルの世話をしてきた。
その為アズラエルが子供らしい遊びもせずに、泣きながら必死に努力している様子を見続けていた。
それも限界に近づいてきた時に、タイガの“小さな親切”に救われた事でタイガに使用人を代表して礼を述べる。
本来であればアズラエルを見捨てられず、ズルズルと世話を焼き続け婚期を逃す事になっていた。
本作ではアズラエルが救われた事により、同僚の使用人と結婚して寿退職。
その際10年に及ぶアズラエルの『マル秘レポート』を後輩のメイドに受け継がせる。
この為アズラエルは屋敷ではメイドに頭が上がらなくなった。
ある意味、アズラエル並みに運命が乖離した人物。
キャラクターイメージは境界線上のホライゾンの自動人形 武蔵
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。