転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。






第206話 叱咤

 

 

 

「コンパス」はユーラシア連邦の依頼に基づき、西ユーラシアの鎮圧を決定した。

その知らせ自体は世界には当然のことと受け止められたが、その中に世界を震撼させるものがひとつあった。

鎮圧軍の中に――「メテオ小隊」 が含まれていたのである。

 

「メテオ小隊」

 

言わずと知れたアムロの率いる小隊である。

他の追随を許さず、メンバー全員がニュータイプ。

正にオーブ最強、いや地球圏最強と断言しても差し支えない「オーブの切り札」が派遣されるのだ。

多くの者は確信した。

 

「ああ、これで西ユーラシア独立派も終わった」

 

そしてその後、その確信通り西ユーラシア独立派は鎮圧された。

 

しかし、それはユーラシア連邦の衰退を加速させる事にしかならなかった。

 

――――

 

半壊した都市ベルリンの前で、西ユーラシア独立軍と“コンパス”が対峙していた。

西ユーラシア独立軍の先頭には赤いMS。

“コンパス”の先頭には白いMS。

 

ゲイツに乗り込んだシャアはこれから始まる戦闘に向けて精神を集中させていた。

 

(“オーブの白い流星”が相手か・・・、厳しくなるな。

いや、たとえ誰が相手であろうと私に勝てる“ニュータイプ”などいない!

しかし、実戦経験は向こうが遥かに上だ。

だが、いくら“オーブの白い流星”でも、自分と同じレベルの“ニュータイプ”と戦った事は無い筈だ。

ならば速攻だ!

相手が対応出来ない内に先手を打って勝負を決める!)

 

――――

 

“コンパス”ではアムロが赤いMSに対して言いようの無い胸騒ぎを感じていた。

 

(何だ?このプレッシャーは?

今まで戦場でこんなのを感じた事はない。

今までの相手とはまるで違う)

 

アムロは少しの間、考え込むとバーニーとクリスに通信を開いた。

 

「バーニー、クリス」

 

「どうしました、隊長?」

 

「一尉、何かご指示ですか?」

 

次にアムロから出た指示は二人にとって信じられないものだった。

 

「戦闘が始まったら、極力自分から距離を取ってくれ」

 

「隊長!?」

 

「一尉!」

 

「今度の相手はいつもと違う。

多分、周囲に気を配る余裕は無い。

援護も不要だ。

目の前の相手だけで精一杯になる可能性があるから、極力距離を取ってくれ」

 

それはもはや軍神に等しい「オーブの白い流星」の口から出たとは信じられない言葉だった。

 

「あ、あいつは隊長でも梃子摺る程なんですか?」

 

「あの赤いMSはそれ程の相手だと?」

 

バーニーとクリスの問いにアムロは簡潔に答えた。

 

「ああ、あの相手は多分、僕と同じ“ニュータイプ”だ」

 

「!?」

 

「!?」

 

それは衝撃的な答えだった。

 

それは相手が単なる“ニュータイプ”ではなく、『アムロと同レベルの“ニュータイプ”』だと、アムロ自身が認識している事を示していた。

 

「わ、分かりました」

 

「了解です。極力近づかないようにします」

 

バーニーとクリスはアムロの指示に従う事を了承した。

それも当然だった。

アムロと同レベルの“ニュータイプ”?

そんなのと対峙したらどうなるか?

二人はアムロとの模擬戦でそれを骨身に染みて理解していた。

 

「ああ、頼むよ」

 

言葉少なく、それだけを言うとアムロは通信を切った。

 

(・・・)

 

そのままアムロは戦闘開始まで精神を落ち着かせる事に集中した。

それは奇しくも戦闘直前のシャアと同じ行為であった。

二人の“ニュータイプ”は同じ時、同じ場所で、同じ行為を行いながら、激突までの短い時間をひたすら待ち続けていた。

 

――――

 

僅かな時間が過ぎ去った後、どちらからともなく両者は接近し、激突した。

「コンパス」の面々――特にオーブ軍は楽観していた。

 

(アムロ一尉に、“白い流星”に勝てる者などいない!)

 

それは紛れもない事実だった。

アムロはどんな相手でも、今まで全ての敵をわずか数分で下してきたのだ。

それに対抗できる存在など想像すらできなかった。

 

白いMSと赤いMSは互いの隙を伺うように周囲を旋回していた。

次の瞬間、同時に加速した赤いMSと白いMSの軌跡が交錯した。

シャアがビームを撃つものの、それは簡単に躱され、逆にアムロの射撃がシャアを襲う。

それを躱し逆にシャアが、またそれを躱しアムロが・・・

 

それは信じられない光景だった。

今まで対峙した相手をほぼ一撃で撃破してきたアムロの射撃を躱し、反撃し、また躱して反撃を続ける。

それは赤いMSが、もはや伝説に等しい『オーブの白い流星』に等しい力量を持っている事を証明していた。

『オーブの白い流星』の前に立ちはだかる。

その事実は言葉など必要とせず、万人の目の前に赤いMSの『力』を証明していた。

互いの未来位置を読み合い、単なる射撃でさえ二手先、三手先への伏線として読み合う両者の間に割り込める者など存在しなかった。

 

――――

 

世界が止まる。

白いMSの動きしか見えない。

次に白いMSの動く方向が見える。

 

(そこだ!)

 

必中を確信した一撃はPS装甲の盾(ビームシールド) を掠めるだけに終わった。

 

(なに!)

 

必殺の一撃を躱した白いMSがこちらに銃口を向ける。

間違いなく次の瞬間、“自分”に命中する事が分かる。

それでも止まった時間の中でシャアは冷静に“次”を選択していた。

次の瞬間、今まで必ず敵MSを撃破していたアムロの一撃を、シャアは躱していた。

 

アムロの射撃を躱したシャアは思考をフル回転させていた。

 

PS装甲の盾(ビームシールド)か?厄介だが、射撃を集中させれば撃破可能だ!

それにPS装甲の盾(ビームシールド)に意識を集中させれば、即座に直接機体へ攻撃されても対応出来まい!)

 

アムロもまた、シャアの操るゲイツを捉える事に全力を傾けていた。

 

(ちぃ!反応が早い!ビームライフルは消耗が激しくてすぐに撃てなくなる。

実体弾ならともかく相手もビーム兵器ならPS装甲の盾(ビームシールド)も何処まで保つか?

PS装甲の盾(ビームシールド)で防御するより、躱した方が確実だな。

あのパイロットに対抗するには出力を落として連発数を増やした方が良い。

ゲイツならビームスプレーガン並みに出力を落としても撃破出来る!)

 

両者は互いに、戦闘中に最適な戦闘方法を選択し、予測し、その予測を超え、より速く、より正確に、何人たりとも入り込めない領域で鎬を削っていた。

 

互いに互いの事しか見えなくなる。

時間の感覚が引き延ばされる。

相手の“未来の姿”がハッキリと目に映る。

しかし、それに合わせようとした時には、既に相手はその場を離れている。

そしてそれは自分も同じ。

相手の目に自分の“未来の姿”が映っているのがハッキリと分かる。

目に見えなくても、“自分”に対して銃口を向けているのが実感出来る。

脳裏に走った“直感”に従い機体を操る。

一瞬にも満たない間に、躱す、誘う、貫く、避ける、踏み止まる。

攻守を替えてそれが繰り返される。

一瞬の攻防が積み重なり、その時間は誰も知らない未知の領域にまで達していた。

常人を超越した、超絶的な“ニュータイプ”同士の戦闘は見る者に感嘆を、そして同時に恐怖をもたらしていた。

 

――――

 

最初は感嘆だった。

 

(へえ? あのMS、アムロ一尉相手によく粘っているな? もう5分は持っているぞ?)

 

それが疑問に変わる。

 

(おいおい、もう10分は過ぎたぞ? アムロ一尉でもまだ撃墜できないのかよ?)

 

そして次に、それは恐怖に変わった。

 

(ア、アムロ一尉の射撃を躱している!アムロ一尉相手に15分以上持ってる? いや戦っている? あいつはいったい何者なんだよ!)

 

閃光が乱れ飛び、MSの巨軀が交差し、一瞬もその場に留まる事無く、即座に攻防を入れ替え、それでも互いの一撃が互いの機体を捉える事無く、戦場を縦横無尽に駆け巡っていた。

アムロとシャアの戦闘は20分を超え、30分を超え、40分を超えてもまだ続いていた。

そしてアムロの操るνガンダムが戦場から大きく離れ、赤いMSがそれを追いかけた。

 

(アムロ一尉が逃げた? アムロ一尉が負けた? そんな事があるはずが!)

 

オーブ軍が恐慌状態に陥る寸前、

オーブ軍の指揮官――レドニル・キサカ一佐の叱咤が戦場に響き渡った。

 

「うろたえるな! お前たちはそれでも誇り高いオーブ軍か!

お前たちはアムロ一尉がいなければ何もできない腰抜けか!

せめてアムロ一尉があの赤いMSを撃破して戻ってくるまでに、目の前の相手を打ち破って見せろ!

それが出来ないような腰抜けはここに必要ない!

さっさと尻尾を巻いてオーブに帰れ!」

 

その叱咤にオーブ軍は奮い立った。

 

(そうだ! アムロ一尉が負けるわけがない!

せめてアムロ一尉が戻ってくるまでに、目の前の相手だけでも打ち破って見せてやる!)

 

キサカの叱咤は半壊寸前だったオーブ軍を立て直し、アムロの離脱によって勢いに乗って突っ込んできた西ユーラシア独立派を迎え撃った。

 

「いやはや、大したものですね? 自分ではとてもそこまでは出来ませんよ?」

 

「コンパス」の総指揮官バルトフェルドは、キサカに素直な称賛を送った。

 

「ご謙遜を。あなたにも同じ事は出来たはずです。

しかし元々、他国のあなたより同じ国の私の言葉の方が有効だという配慮でしょう?

お手数をお掛けして申し訳ありません」

 

「いやいや、適材適所というやつですよ」

 

「そういう事にしておきますよ」

 

そう言ってキサカは、戦場には似合わない柔らかい微笑みを向けた。

 

「しかし、やはりアムロ一尉の影響は大きいですね」

 

そのバルトフェルドの言葉に、微笑みを消して出てきたキサカの言葉は、どこまでも厳しかった。

 

「ええ。しかしアムロ一尉が絶対の存在ではなく、自分達で何とかしなければならないと自覚できた事は大きいです。

今後はアムロ一尉に頼らないように訓練を積んでいけば大丈夫でしょう」

 

「全くですね」

 

バルトフェルドとキサカの目は、目の前の戦場ではなく、既に未来へと向いていた。

 

そして突っ込んできた西ユーラシア独立派はオーブ軍に撃退され、アムロが再び戦場へ戻ってきた事で、勝敗は決した。

 

 

 

 







※あとがきです。

裏設定
ジオン・ズム・ダイクン
「その変化を成し遂げた存在――それこそが、ニュータイプだ」

再構成戦争以前から続く名家ダイクン家の当主。
しかし実態は多少裕福な一般人程度。
しかも名家ゆえの代々の付き合いもあり、家計は火の車で本人も知人の大学で客員教授をして糊口をしのいでいた。
名家ゆえ代々血の存続にはなりふり構わない環境の為、愛人は数人いたがオーブまで付き従ったのはアストライアだけ。
タイガの“小さな親切”によって見出された事で、C.E.の世界を根幹から揺るがす“ニュータイプ概論”が世界中に広まる事になる。
当初はその影響力から“第2のジョージ・グレン”と呼ばれていたが、その後“ニュータイプ概論”を学問として完成させ、C.E.の世界に革新をもたらした事で“ニュータイプ論の始祖”として、本人の望み通りC.E.の世界に不滅の名声を刻む事になる。


テム・レイ
「馬鹿者! それでお前の命が助かるなら安いものだ!」

モルゲンレーテ技術士官
私情と「息子の為なら全力を尽くすだろう」というタイガの“小さな親切”によってコスト度外視で《MBF-P00 試作ガンダム・アストレイ》を作り上げる。
最初タイガはそのコストに目を剥いたが、「アムロ用なら仕方ない」とそのまま見なかった振りをした。
次に《MBF-P000X νガンダム・アストレイ》を作り上げた時も同じく目を剥いたが、もはや伝説となったアムロ専用の機体であればだれも文句を言わないだろうと、やはりそのまま黙認した。
既に伝説となっていたアムロにνガンダムほどの機体が必要なのか?という疑問が周囲から噴出したが、「伝説のパイロットをいつまでもMSも出来ていない時に作られた旧型に乗せておくのか!」というもっともな声とタイガの指示によって作成された。
タイガは一時、この時の判断を後悔したが、“赤い彗星”の登場により、この時の判断が正しかった事が証明される事になる。


お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。



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