転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
オーブに侵攻しようとしていたフォビドゥンヴォーテクスの部隊が全滅していた頃、
それを知らないフォスターとタイガの間で、互いの腹の内を探る、虚々実々のやり取りが交わされていた。
――
「降伏しろ」というフォスターの言葉にも、タイガは微動だにしなかった。
「降伏?オーブと大西洋連邦は交戦していない。そもそも相互安全保障条約を締結している。
条約破棄もせず、宣戦布告もせずに降伏を要求するとは……頭が逝かれてるんじゃないか?
だいたい既にレクイエムは“コンパス”が運用済みだ。
今さら何を言っている?
ヤクザの因縁だってもう少し真面だぞ。
理由なんかどうでもいいにしても、表面ぐらいは取り繕った方が良いとは思うがな」
タイガは嘲りを隠そうともしなかった。
フォスターは冷笑で返す。
「その通りよ。そんなもの、レクイエムの前では何の意味も無いわ。
条約だの宣戦布告だの、正当性だの、そんなものは国が滅びた後にいくらでも囀っていればいい。
国を守れない言葉に何の意味があると言うの?」
「同感だな。その点ではお前と意見が一致しそうだ」
フォスターはふと違和感を覚えた。
――なぜタイガは、こんな無駄話に応じている?
――降伏の返事にしては、あまりにとりとめがない。
――まるで“時間稼ぎ”をしているような……?
「何を企んでいるの、“オーブの虎”!」
「おや、もうバレたか」
タイガは悪びれもせず答えた。
「お前たちの自信の源はレクイエムだ。それが無くなっても、同じ事が言えるかな?」
「どういう事です?」
「ダイダロス基地の周囲にはサイクロプスが設置してある。
お前たちがエンデュミオンやアラスカで使ったのと同じやつがな。
もうじき起動するぞ?
望みの綱が無くなっても、同じ事が言えるかな?」
フォスターは言葉を失った。
「あ、ありえない!
絶大な力を持つレクイエムを、自分の手で破壊するなんて!」
「俺が手間暇かけて作ったものじゃない。
お前たちから押し付けられたものだ。
だったら捨てても大して惜しくないさ」
フォスターは再び絶句した。
レクイエム――
それは世界を手に入れる事すら可能な“究極の力”だ。
それを破壊するどころか、「大して惜しくない」と言い切る男。
フォスターは悟った。
自分とタイガの間には、越えられない巨大な壁があると。
「すぐにサザーランドにサイクロプスを停止させなさい!
一刻も早くダイダロス基地を手に入れるのです!」
フォスターは画面外の閣僚に怒鳴りつけた。
――――
ダイダロス基地に接近したサザーランドは目を疑った。
基地の周囲を巨大な機械群が取り囲み、所々が発光し、低い唸り声を上げている。
駐留していたオーブ軍は、こちらに目もくれず全力で撤退していく。
――サイクロプス起動まで、猶予はほとんど無い事は明白だった。
「急げ!何としてもサイクロプスを止めろ!
停止できなくても制御系を破壊すればいい!急げ!」
サイクロプスによる自爆は大西洋連邦の“十八番”だ。
作動方法も停止方法も熟知している。
結果、サイクロプスの起動は 直前で阻止された。
――――
サイクロプス停止の報告を受けたフォスターは、安堵の息を吐いた。
そして画面の中のタイガを見据え、嘲るように言った。
「残念だったわね、“オーブの虎”。
サイクロプスは停止させたわ。
もうレクイエムは誰にも止められない。
もう一度言うわ――降伏しなさい」
「断る!条約を無視し、宣戦布告もせず、武力で侵略するような相手にか?
それは“コンパス”の存在理由の否定だ」
「……どうやら愚かなのは死ななければ治らないみたいね。
そのままオーブと共に焼かれなさい!」
「おや?オーブを焼くのは、ユーラシア連邦を焼いてからではなかったのか?」
レクイエムが撃ち込まれようとしているというのに、タイガの態度は普段と何も変わらなかった。
「そんなもの、後からいくらでも誤魔化せるわ!
オーブと共に滅びなさい、“オーブの虎”!」
レクイエムから放たれた光が、地球に巨大な光の柱を顕現させた。
それを“生きて”見上げる者は、その場には存在しなかった。
※あとがきです。
裏設定
MBF-M1 アストレイ
プロトアストレイの正式量産型。
基本的にプロトアストレイから量産に不要な機能をオミットし、量産向きに設計し直したナチュラルが初めて量産に成功したMS。
ヘリオポリスではダミーとして製造施設が存在したが、実際にはモジュール構造の手足を接続して初期設定を行うだけなので、モジュールさえ揃っていれば一時間に一機の生産が可能。
初期設定さえ行なっておけばモジュールに分解後、5分で手足の接続を完了して出撃が可能。
ちなみに手足のモジュールは大西洋連邦やユーラシア連邦、東アジア共和国等の他国にも生産を依頼している。
これによりアストレイは驚異的な生産数を誇る事になる。
しかし公開されているのは“組み立てられたアストレイの数”であって、交換用の手足等のモジュールの生産数は公開されていない。
また、他国は手足だけがあってもMSは製造出来ず、アストレイそのものはジンと同じように既存技術での製造なので機密性も低い。
何よりもOSはオーブ製なので他国に対して常に優位にある。
宇宙空間では無人ドローンとの連携が前提とされ、ヘリオポリスからの
この時のムウの「G兵器って意味あったのかねえ?」という言葉が全てを表している。
オーブ各地に点在する基地に交換用のモジュールを保管しておけば、戦闘で損傷してもモジュール交換ですぐさま戦場に復帰が可能。
本土防衛に特化したMSであり、運用にはモジュール交換を行う為の補給拠点が必要。
ロード・ジブリールによるブルーコスモス過激派によるオーブ襲撃でその実力が露になった。
タイガの戦略が的中したとは言え、生産されたばかりのストライクダガーを相手にほぼ被害無しで完勝する。
戦後は世界に広まり、法外な金額でダウングレードしたOSにより、民間MSの主流となる。
同時に世界はアストレイのネットワーク下に置かれる事になる。
後期型のアストレイは大容量バッテリーパック=パワーエクステンダー搭載により3機がかりだった核動力機に対するアムロの戦法の実行を一機で可能になった。
交換用の手足を組み立てればMSが出来上がるので、非常時に展開出来るアストレイの実数は公開されている数の3倍以上。
ナチュラル用OS
アムロが開発したナチュラル用のOS。
本来MSのOSは神経接続による制御が必要で、それを採用した理由はMSを開発したのはプラントなので、コーディネーターによる操縦を前提にした場合、それが最適だった為。
各国がOSの開発に難航していたのは「コーディネーター用のOS」をそのまま基本にしていた為。
MSのOSなど存在していなかったのだから、既に動作している実物を前提にするのは間違っていない。
だが、本来コーディネーターが使用する事が前提のものをナチュラル用にダウングレードすれば動作が遅くなるのは当然でしかない。
確かにコーディネーターが開発したOSは神経接続による繊細な動作が可能で、MSの手で地面に落ちた卵を割らずに持ち上げる事さえ可能だった。
しかしアムロはMSをショベルカーや、フォークリフト等と同じ「単なる機械」と捉え、「手足を動かすだけなら神経接続なんかいらないんじゃ?」と視点を変える事でブレイクスルーをもたらす。
これは自分でMSを動かす事が出来なかった事で「どうやったらMSを動かす事が出来るか?」という点だけを重視した結果。
実際、プラントのOSが「パイロットの意思通り、細かい動作が可能」なのに対して、アムロの開発したOSは「決められた動作を決められた通りに行う事」しか出来ない。
しかしその動作パターンが何千、何万種類と存在し、学習してバリエーションが増え続け、パイロットがそれらを組み合わせてその場で選択し、それがアップデートの度に更新され、全体に反映され続ける事でプラントのOSとは比較にならない汎用性を手にする事になる。
アムロがプロヴィデンスを撃破した戦法がオーブ軍全体に共有されるようになったのが良い例。
理論上、このOSであれば新兵でさえアムロと同じ動作を実行可能。
前述した「MSの手で地面に落ちた卵を割らずに持ち上げる」という微細な動作も熟練したパイロットによれば可能。
そしてその動作をコピーすれば「ボタン一つで全てのパイロットが同じ事が可能」となる。
このOSの開発によりコーディネーターの優位性は完全に無くなる事になる。
ある意味“ニュータイプ”に匹敵するほどC.E.に変革をもたらしたOS。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。