転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「ま、まだよ!
お前たちでは大西洋連邦を占領する兵力は無いわ!
通常戦力なら、お前達“コンパス”に十分勝てるわ!」
「通常戦力ね?
これほどの醜態を晒したお前らに、軍部が従うと思っているのか?
国際条約無視、宣戦布告なしでの交戦、大規模破壊兵器の友軍への使用――
どれ一つとっても、お前たちに政権を運営する能力が無い事は明白だ」
「私達が素直にそれに従うとでも思っているの?」
「いいや?しかしこちらには、こういうのもあってな?」
タイガは、先ほどダイダロス基地を破壊したものと同じ形の、“青いスイッチ” を取り出した。
「NJCはまだ小型化は出来ていなくてな。
しかし“ある程度の小型化”は可能になったんだ。
それこそ――
“核弾頭と一緒に普通のコンテナにも積めるサイズ”にな」
「!!!」
「そして大西洋連邦の各地には、オーブの貨物船が入港している。
どれを使用するのかはこちらの任意で設定可能だ。
このボタンを押すとどうなるか、試してみるか?」
フォスターの背中に、巨大な氷柱を突き立てられたような悪寒が走った。
「ワシントンDCの傍にも一隻いるな?
まあ、お前達がいなくなっても、他の都市の連中に後を頼めばよいだけだから、特に問題はないな」
――ハッタリだ!
たった今ダイダロス基地が核で焼かれたのに?
――そう簡単にNJCの小型化などできるはずがない!
……コピーとはいえNJCを製造したオーブになぜ出来ないと言える?
しかも現実にダイダロス基地が核で焼かれているのに?
答えの出ない問いが、フォスターの頭の中で渦巻いた。
「じ、自分が何を言っているのか分かっているの!
ワシントンDCには何の罪も無い民間人もいるのよ!」
「それは大西洋連邦の国民だろう?
お前の国の国民が大統領であるお前の決断で死亡する。
当たり前の事だな?」
「な!」
民間人を盾にしようとしたフォスターは、思いもよらないタイガの言葉に絶句した。
「それに死ぬのはお前ら大西洋連邦の国民であって、オーブの民じゃない。
オーブを焼こうとしたんだ。
その報いを受けるのは当然だろう?
これも全てお前の決断の結果だ」
フォスターは何も言い返す事が出来なかった。
「ま、待っ・・・」
それでもフォスターが何とか言葉を搾り出そうとした瞬間。
「まあ、大して面白くない話だったが、残りは核に焼かれながらゆっくり続けてくれ」
「待って!」
タイガの指がスイッチを覆う透明なカバーを弾き飛ばした音が、やけに大きく響いた。
「待って! 待ってちょうだい!」
「さよならだ、フォスター大統領?」
「待って!こ、降伏するわ!大西洋連邦はオーブに降伏するわ!」
「知らんな?
別にオーブは大西洋連邦に宣戦布告されたわけではない。
実際に交戦したわけでもない。
相互安全保障条約も破棄されていない。
これはオーブとは無関係だ」
「なっ!」
まさかの返答に、フォスターは言葉を失った。
タイガの言葉は正しかった。
フォビドゥンヴォーテクスの部隊はあくまでも『国籍不明の部隊』だ。
どんなに見え透いていても、『オーブと大西洋連邦軍が交戦した事実』は存在しない。
大西洋連邦とオーブは関係ない?
ならば今、タイガはなぜこうして向き合っている?
何を理由に?
――“コンパス”だ!
“コンパス”ならば国軍に優越して命令できる!
国家と無関係に交戦も占領も可能だ!
ならば、“コンパス”の攻撃を止めさせるには……!
「う、受け入れるわ!
私達大西洋連邦は、首都ワシントンDCの“コンパス”の地域占領を受け入れるわ!」
その言葉を聞いた後、タイガはスイッチにかけていた指をゆっくりと離した。
「了解だ。以降はこちらの指示に従え。
占領部隊を送るまで大人しくしていろ」
ホットラインが切れた後も、フォスターも閣僚たちも、一言も発する事ができなかった。
「な、何故こんな事に・・・」
ようやく絞り出すように口から漏れたフォスターの言葉に答える者は誰もいなかった。
それから永劫にも思える無言の時間が過ぎ去った。
沈黙の後、フォスターがようやく言葉を発した。
「・・・まだ“コンパス”が来るまでには時間があるわね?」
「だ、大統領・・・」
狂気じみた低い声を放つフォスターに閣僚たちは気圧された。
「軍に連絡しなさい!“コンパス”を名乗る武装集団を殱滅しろと!」
「だ、大統領!そ、それは!」
「このままでは私たちは破滅よ!それを黙って見ているつもりなの!」
「!!!」
その通りだ。
このままでは自分たちは破滅だ。
しかし、一度降伏しておきながら敵対行為を続けるなど、そんな国が国家として認められる筈がない。
「ま、まだよ!まだ手はあるわ!まだ・・・」
そんな醜態を晒すフォスターの狂気は、いつしか周囲の閣僚たちにも伝染していた。
しかし彼らの最後の足掻きは、大西洋連邦という国家にとどめを刺す事になる。
放って置けば自然に世界を手に入れたであろう彼らは、「世界を手に入れよう」とした事で『全て』を、『国家としての未来』を失う事になる。
「ま、まだよ!まだ手はあるわ!まだ・・・」
そんな未来を知らないフォスターの呟きは、虚しく虚空に消え去るだけだった。
※あとがきです。
裏設定
表向きはオーブ本島とオノゴロ島に建設された巨大砲台。
対艦・対空を主目的とした大口径・長射程の抑止兵器。
建設当初は「前時代的なものを」「意味のないものを」と否定的なものだったが、その正体は同一目標に対する複数火器の完全同期射撃システム。
• 地上
• 海上
• 沿岸
• 艦艇
それらすべての火器群を“一発の雷撃”として集束させる射撃プログラムである。
巨大砲塔はただの――光る囮。
巨大砲塔を破壊できる位置は限定されるので、その位置に目標をおびき寄せる為の囮として巨大砲台は建設され、
例えば後期型のアストレイの部隊にこの
数機~数十機の高出力ビームライフルの一点集中の一撃に耐えられるビームシールドなど存在しない。
仮に核動力のMSを揃えてオーブに侵攻しても、オーブ各地から出撃したアストレイの射撃が、同一目標に対して“一発の雷撃”として集束され撃破される事になる。
オーブに侵攻した部隊はオーブに近づくまでに水中用MSに攻撃され、それを突破してもオーブ全土から出現した公開数以上のアストレイに集中攻撃され、何とかアストレイを撃破しても数分で修理完了して戦線復帰、という事態に直面する事になる。
大西洋連邦がオーブ侵攻失敗後、MS母艦20隻、MS200機、護衛艦、巡洋艦等7~80隻の戦力でオーブ軍とシミュレーションを行ったが、
MSは発艦前に母艦ごと周囲の艦艇もろとも水中用MSによって撃沈、残存艦艇もアストレイの
撤退しようとした艦艇すら同じく水中用MSの
「艦隊がオーブ沿岸に接近した」という設定でも、結果は同じだった。
むしろ艦艇一隻ごとに周辺のアストレイや、水中用MSの
大西洋連邦はデータ上のみにしか存在しない超強力なPS装甲やビームシールドの艦艇や、核動力のMSまで繰り出したが結果は同じだった。
PS装甲の艦艇は数十機のアストレイの高出力ビームライフルによる
最後の希望だった核動力のMSは一般兵の乗るアストレイによってあっさりと無力化された。
分散して逃げようとした艦艇は、やはりアストレイや水中用MSの
それを数回繰り返した後の「これなんて無理ゲー?」とは当時の大西洋連邦の軍関係者の発言のひとつである。
全天周囲モニター・リニアシート
パワーエクステンダーと並び、後に宇宙用、水中用MSを問わず、オーブのMSに標準装備される事になる。
全天周囲モニターは宇宙用、水中用の耐圧殻を兼用。
そのままでもある程度の水圧には耐えられるものの、緊急時のパイロット保護の為、短時間であればPS装甲が展開可能。
これはパワーエクステンダーの応用により小型化した非常用電源の使用によるもの。
深海での脱出や損傷時に瞬間的にPS装甲を展開してパイロットを保護。
そのままコクピットごと浮上、もしくは宇宙空間を漂い救助を待つという手法が取られた。
GAT-Xシリーズに採用されていたセーフティーシャッターよりも安全性は遥かに向上し、水中および宇宙空間という極限状況下でのパイロットの生存性を大幅に高めている。
整備性もコクピット周りの配線を一つにまとめたコネクターに統一した事で大幅に向上。
これによりアストレイ、水中用MSを問わずコクピットごと交換が可能。
オーブ全軍の兵站の負担が大幅に軽減される事になった。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。