転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「何をしているのです!大西洋連邦全軍に“コンパス”への攻撃命令を出しなさい!数はこちらの方が遥かに多いのだから間違いなく勝てるわ!」
「だ、大統領!それは!」
タイガとの通信が切れた後、いったん降伏しておきながら、フォスターはタイガへの、“コンパス”への攻撃を命令した。
「黙りなさい!このままでは私たちは破滅よ!それを黙って認めるつもりですか!」
確かにそうだ。
しかしいったん降伏しておいて、舌の根も乾かぬうちにそれを破り捨てるなど、破滅するのは大統領や閣僚だけではなく、“大西洋連邦”そのものであり、それは「国家」の信頼を地に落とすものだ。
そのまま“コンパス”への降伏を受け入れていれば大統領や閣僚の無能が非難されるだけで終わっていただろう。
しかし視野狭窄を起こし『自分の破滅』にしか関心が無くなっていた大統領と閣僚は、自分たちの立場を守る為に「大西洋連邦」という『国家の尊厳』を放り捨てた。
その結果、この後世界中で「大西洋連邦」という国家そのものへの信頼が霧散して消え去る事になる。
そんな未来の事など視野に入らない大統領と閣僚は、大西洋連邦全軍に“コンパス”への攻撃を命令した。
しかし、国軍は既に大統領と閣僚たちを見限っていた。
タイガは大西洋連邦の首都ワシントンDCを占領する前に、“コンパス”の部隊へホットラインの内容を公開した。
もちろん主要な部分だけだがそれでも衝撃的な内容だった。
これは“コンパス”を構成する大西洋連邦部隊への配慮である。
自国が占領されて黙って見ている者はいない。
しかし、自国が“政権を担うに値しない者”に壟断されているのなら話は別だ。
タイガが公開した内容は、どこから見ても弁護不能だった。
• ユーラシア連邦への恫喝
• オーブへの宣戦布告強要
• ユーラシア連邦へのレクイエム使用の明言
• 移譲したはずのレクイエムのバックドア
• 条約破棄すらせず条約を無視
• 友好国への宣戦布告なしの攻撃命令
• “コンパス”への攻撃指示
どれか一つでも国家の存続が疑われる内容である。
しかしタイガは
「占領は首都ワシントンDCに限る。その他の都市は通常業務を続けるように」
と布告した。
そのため混乱は最小限に抑えられた。
そしてタイガは“コンパス”に参加していない大西洋連邦の他の部隊に対しても同様の内容を公開した。
その上で「フォスターは既に首都ワシントンDCの占領に同意している事」「条約に従いコンパスの命令権は国軍に優越する事」を改めて通達した。
“コンパス”を攻撃しようとしない国軍の司令官に対して、大統領と閣僚たちは狂ったように攻撃を命令した。
しかし司令官の返事は「攻撃?条約であなた方の命令より“コンパス”の命令が優先される事が定められていますが?」というものだった。
そんな事は関係ない!今すぐ“コンパス”を攻撃しろ!という閣僚の命令に対して司令官は「ならその命令書を発行してください。我々は「“コンパス”の命令を優先しろ」という命令書は受け取っていますが、「“コンパス”を攻撃しろ」という命令書は受け取っていません」というものだった。
万一“コンパス”への攻撃が誤報や偽りだった場合、大西洋連邦の存続そのものが危険に晒される。
大西洋連邦は前身となったアメリカ合衆国同様に、大統領の命令が国内法や国際法に違反している場合、軍の指揮官はその命令を拒絶する法的な義務を負う。
司令官が「正当な手続き」を求めるのは当然だった。
本来であれば緊急時の特別措置として「大統領からの直接命令」という事で、国軍の出撃も可能だったが、頭に血が上り、自分たちの身の破滅にしか関心が無くなっていた大統領や閣僚がそれに気付く事は無かった。
そして司令官も彼らにそのような方法の存在を指摘する事も無かった。
結果、「正式な命令書」の発行は間に合わず、国軍が動く事もなく、ワシントンDCは“コンパス”に占領される事になった。
占領されたワシントンDCでは、フォスターをはじめ政府閣僚が軒並み拘束された。
降伏しておきながら“コンパス”への攻撃を命令していた事は大西洋連邦の外交上の信頼を地に落とすものだった。
今回の陰謀とは無関係で、冷や飯を食わされていた非主流派が臨時政権を担当し、大西洋連邦は再出発を図る事になった。
しかし政権中枢が拘束された大西洋連邦の前途は、多難であった。
フォスターや閣僚たちを拘束した後、「本当に民間人を攻撃するつもりだったのか?」と聞かれたタイガは抜け抜けと言い放った。
「誠実を絵に描いたような俺が、そんな酷い事をする筈が無いだろう?
今まで俺がそんな事をした事があったか?」
事実である。
ブルーコスモス過激派のオーブ侵攻でも、ヘリオポリス襲撃でも、プラントとの戦いでも、ファウンデーション王国との戦争でもタイガは民間人への被害は最小限に抑えてきた。
しかし、それが今後も変わらないと断言する事は誰にも出来なかった。
そもそも誠実な人間は口先ひとつで他国を滅ぼしたりしない。
そのタイガの言葉によれば「敵国の民間人の安全は考慮しない」と言っているのだ。
今までのタイガの行動からは、「意図的に民間人に被害を出す事」は考えられない。
しかしタイガの言葉によれば、「敵国の民間人の被害」は考慮されない。
結局、選択肢は、
タイガの今までの行動を信じるか?
タイガの言葉を信じるか?
どちらかだった。
他国が「口先ひとつで他国を滅ぼす自称誠実な男」を信じる事など出来る筈が無かった。
しかし、その行動は地球連合間で締結された条約によって、誰にも文句の付けられない合法的なものだった。
どれだけ疑問に思ったとしても、誰の目にも明らかな「正当性」を持つタイガを前にして、世界は沈黙を貫くしかなかった。
――
ユーラシア連邦はさらに悲惨だった。
シャアの進軍により、進路上の軍が次々と参加し、
ユーラシア連邦が集結できた戦力は、首都モスクワ周辺のごく限られた範囲にすぎなかった。
その中で期待を寄せられていたのは、ベルリンを焼き払ったデストロイ・ガンダムである。
「これさえあれば、どれだけの大軍が来ても問題ない」
ユーラシア連邦首脳部はそう考えていた。
それは、ある意味では間違っていなかった。
強化処理されたパイロットが使い捨てであったとしても、デストロイの火力は圧倒的だった。
――相手が“普通の大軍”であれば。
しかしデストロイが相対したのは、“オーブの白い流星”と並び称される“赤い彗星”だった。
周囲を覆い尽くす砲撃も、都市を一撃で焼き尽くす火力も、ニュータイプの前では無力だった。
全ての砲撃を躱され、接近され、ビームサーベルで切り刻まれて終わった。
多額の研究費、建造費、強化研究、そして浪費された多数の人命――
その全てが、ほとんど何の成果もあげられずに無に帰した。
しかも“赤い彗星”は旧型のゲイツで西ユーラシア鎮圧軍を敗走させているのだ。
もはやMSの性能など何の意味もないのは明白だった。
これ以降、世界は MSの性能よりもニュータイプの確保に全力を注ぐ事になる。
結果を見れば当然だった。
最大戦力を失ったユーラシア連邦首脳部は逃走を図ったが、西ユーラシアの情報部に補足され、全員捕縛された。
これをもってシャアは「新ユーラシア連邦」の成立を宣言。
新首都を旧首都ブリュッセルに移し、地球連合との連携を模索していく事になる。
名実ともに、ニュータイプによる新たな時代の到来であった。
これにより、理事国である大西洋連邦とユーラシア連邦の地球連合内での発言力は、ほぼ消失する事になった。
※あとがきです。
裏設定
νガンダム・アストレイ
MBF-P000X νガンダム・アストレイ
新機軸の全天周囲モニターとリニアシートを採用。
間接部分にもマグネット・コーティングを施している為、機械的抵抗はほぼゼロ。
MBF-P00に引き続き学習型コンピュータを搭載している。
出力も、安定性も、反応速度も既存のMSを圧倒的に凌駕する。
さらに後にはパワーエクステンダーを搭載し、戦闘可能時間は数時間に及ぶ事になる。
この場合、通常の戦闘でビームライフルを数十発撃つ程度ではエネルギー不足になる事はまずない。
『赤い彗星』との対峙時にはまだパワーエクステンダーは搭載されていなかったので、アムロはビームライフルの出力をビームスプレーガンレベルに落としてまで射撃数を増やす事を選択した。
この判断は的中する。
宇宙戦仕様では最終決戦で対峙したプロヴィデンスが使用していた“ドラグーン”のオーブ版である“フィン・ファンネル”を搭載予定。
“白い流星”が新たな“オーブの盾”を手に入れた事で、各国の軍事関係者はさらに苦悩する事になる。
試作ゲルググ
オーブとザフトの技術のハイブリット。
カーペンタリアとジブラルタルのMSの内部をオーブ製の部品に変更する為に行なわれた技術交流によって生まれた機体。
νガンダムが既存のオーブの技術を主体にしているのに対して、ゲルググはザフトの技術を主体にして開発された。
とはいえ、使用されている装備や部品はほとんど共通で、νガンダムの兄弟機ともいえる機体である。
本来であればミネルヴァへ、シンへ渡されるはずだったが、既にデスティニーが存在した事からルナマリアに渡される事になった。
西ユーラシアの鎮圧の際に使用されるはずだったが、トラブルにより戦場に到着したのは戦闘終了後だった。
気を取り直して、次こそは!と意気込むものの、タイガにより『赤い彗星』に渡される事になり、結局ルナマリアは一度も『赤いゲルググ』に乗る事は無かった。
散々待たされた挙句、一度も乗らずに他人に渡される事に納得いかず、バルトフェルドに抗議するものの「あのMSを使うのは『赤い彗星』だ。お前が『赤い彗星』と同じ事が出来るならそのまま使っていいぞ?何だったらあのMSで『白い流星』と模擬戦をしてみるか?」という言葉に一言も言い返せず全力で拒否した。
西ユーラシア自治区成立後は『西ユーラシアの守護神』の象徴としてベルリンに仁王立ちする事になる。
モスクワへの進軍の際は防衛の切り札であるデストロイ・ガンダムを瞬殺。
これにより世界は高性能機の開発よりも“ニュータイプ”の確保に血道を上げる事になる。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。