転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。






第224話 ミーア

 

 

 

パトリック・ザラは困惑していた。

木星往還船「ツィオルコフスキー2」へ強制搭乗させられてから、およそ30年。

外界とほぼ隔離されていた彼には、現在のプラントが、かつてのプラントとはまるで異なる別の国に見えていた。

けばけばしいネオン。

船乗りに群がる女たち。

威勢のいい声で客引きをする男たち。

パトリックの目には、それらは下劣な歓楽街にしか映らなかった。

木星往還船の乗組員からは、「これで最後だろうから、自分の国がどうなったか見てこい」

と金銭と、いくつかの紙袋を渡され、プラント行きの船に放り込まれた。

 

パトリックは知らない事だが、木星往還船の乗組員は途中で新型の高速船とランデブーし、随時乗組員の交代を行っていた。

現代ではわずか数ヶ月の木星までの航路を、何年もかけて進む旧型の木星往還船は邪魔者扱いされ、一度乗り込めば次の交代まで

数ヶ月間拘束されるので乗組員達からは不評の的だった。

 

周囲の状況に理解が追いつかないまま、パトリックは木星往還中に書き記した理論や技術を申請するため、技術局へ向かった。

技術局は昔と同じ場所にあったが、その様子は見る影もなかった。

通路は埃まみれ。

受付は軒並み閉鎖。

壊れかけた申請用自動端末が一つ稼働しているだけ。

不審に思いながらも、パトリックは端末を操作し、自分の理論や技術を申請していった。

木星往還中、彼は研究に全てを費やしていた。

そこには彼の人生の全てが込められている。

コーディネーターの力があれば申請など容易に通る。

今さらだが、コーディネーターの優秀さを証明してやる――

そう思っていた。

だが、端末の返答は冷酷だった。

 

「申請受理件数ゼロ」

「申請された理論、及び技術は既に全て申請・登録されています」

 

「何だと? そんなバカな!」

 

あれは優れたコーディネーターでなければ理解できない理論だ。

ナチュラル如きに理解できるはずがない。

そう思いながら申請内容を確認していくと――

パトリックの理論や技術はすべて、彼が往還船で作成した数年後には別の者が発表していた。

あるいは、彼が作成する前にすでに発表されていた。

つまり、

「その技術の発展にパトリックは必要なかった」

という事実が突きつけられた。

 

それも当然だった。

議論し、批判し、視点をぶつけ合い、切磋琢磨して生まれる集合知と、孤独な独りよがりの研究では、どれほど能力が高くても勝負にならないのは当然だった。

自分の今までの30年の日々が、自分が信じていた“個人の能力”が、何の役にも立たなかった。

パトリックは茫然とした。

 

今まで費やした人生の全てを否定された事に茫然とし、数時間もの間身じろぎもしなかったパトリックは、虚無感を抱えふらふらと彷徨い歩き、いつの間にか再び歓楽街の入口に戻ってきていた。

 

「ミーア、そろそろ行くわよ?」

 

「え〜、ちょっと待ってよ〜」

 

派手な格好の、娼婦と一目で分かる女たちが通り過ぎようとした。

その中のひとりの二十歳ぐらいの女を見た瞬間、パトリックは叫んでいた。

 

「レノア!」

 

「! おじいちゃん?いったい誰?

ここではミーアって名前で通してるのに、なんで私の本名を知ってるの?」

 

「い、いや……君が知人に似ていたもので思わずな?」

 

「ふ〜ん?」

 

ミーアと名乗る女は、パトリックをじろじろと眺めた。

そして、パトリックの持つ紙袋に詰め込まれたオレンジを見つけると、目を輝かせた。

 

「おじいちゃん! これどうしたの!

これだけあればなんだってできるよ!」

 

「いや、ここには久しぶりに帰ってきたのでな。誰か事情が分かる者がいればと思ったのだが……」

 

「ふ〜ん?じゃあいいよ? 私が教えてあげる」

 

「え?」

 

ミーアは同行していた女たちに声をかけた。

 

「ごめーん!私、このおじいちゃんの相手するから先に行って!」

 

「え〜」「物好きねぇ〜」と笑いながら、連れの女たちは去っていった。

 

「じゃあ、おじいちゃん?どっか落ち着いた場所でお話ししようか?」

 

ミーアの顔は、やはりパトリックの知るレノアによく似ていた。

 

 

 

 

 







※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。



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