転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「じゃあ、どこから話そうか?」
パトリックとミーアは場末のホテルにチェックインしていた。
娼婦と客――誰も怪しまない組み合わせだ。
「プラントだ!なぜ独立したのに、プラントがこんな事になっているんだ!」
「独立?今どきそんな事言ってる人がいたら正気を疑われるわよ?
誰に聞いても『独立しなきゃよかった!』としか言わないわよ?」
「何?」
そこからミーアは語り始めた。
• プラントが独立戦争で負けた事
• それでも独立だけはできた事
• 最初は喜んでいたが、海賊のせいで食糧輸送が止まった事
• 食料が保存性優先になり、味が消えた事
• 第2プラントができて仕事がなくなった事
• 核融合の普及でエネルギー輸出すら不要になった事
• 生きていくためには性産業しか残らなかった事
それを聞いたパトリックは言葉を失った。
「バ、バカな!」
「独立の条件が“食料生産の禁止”だったらしいんだけど、偉い人が計算したら、当時の人口を支えるには
全部のコロニーを農業コロニーにしないと無理で、人が住む場所がなくなるからあきらめたんだって」
「な、何!」
「そんなの最初から分かってたんじゃないのかしらねぇ?
昔の人は何を考えて独立なんてしたのかしら?」
「……」
「第2プラントができてからは仕事なんて全然来なくなったわ。
結局、昔ながらの“人類最古の職業”しか残らなかったって事ね」
「き、君は何でこんな仕事を?」
「こんな仕事?これでも“みんなの憧れの職業”なんだけど?」
「な、何?」
「お客とトラブルを起こした事のない、身元のしっかりした女じゃなきゃ港にも近づけないのよ?
当たり前じゃない?」
ミーアはパトリックの持つ紙袋を見て、目を輝かせた。
「それに、この仕事ならおじいちゃんの持ってるオレンジみたいなものが食べられるのよ?
そのためならなんだってするわよ?」
「た、たかがオレンジのためにそんな事を!」
「たかが、ねぇ?おじいちゃん、これ食べてみて?」
ミーアがバッグから取り出したのは、薄いプレートだった。
「あたしのお弁当。
おじいちゃんからもらったオレンジがあるから、あたしは大丈夫だよ。
食べてみて」
パトリックはプレートを受け取った。
薄いパッケージを破ると、白いペーストが塗られたプレートが現れた。
口に運ぶ。
……何も味がしない。
甘みも酸味も辛味も、
“味”と呼べるものが何もない。
「こ、これは?」
「これがあたし達のごはん。
毎日毎日、子供の頃からこればっかり。
明日も明後日も、その次もずっと」
パトリックは衝撃を受けた。
「こ、これを毎日?」
「そうよ?だからおじいちゃんのオレンジなんか、貴重なのよ。みんな目の色変えるわ」
「……」
ミーアは続けた。
「宇宙港に行けば船乗りのお兄さんがいる。
一晩相手をすれば、滅多に手に入らないオレンジが手に入る。
お店でお客さんの相手をすればもっとたくさん。
憧れの職業なのも当然じゃない?」
「しかし!」
「私たちはコーディネーターだから滅多に病気にならない。
容姿もいいし、こういう仕事なら向いてるじゃない?
自分の力を使って生きてるのに、何が問題なの?」
娼婦達も必死だった。
お客に気に入られ、上客になってもらえれば、定期的に“本物の食料”が手に入る。
さらに運が良ければ――
結婚してプラントから移住できる。
娼婦は、プラントから抜け出すための最短で、ほぼ唯一のパスポートだった。
憧れの職業になるのも当然だった。
「プ、プラント以外に移住すれば……」
それは、独立を信じ続けたパトリックには口にするのも苦痛な言葉だった。
「ああ、ダメダメ。
プラント生まれが移住しようとしても、みんな断られるわ。
私たちはもうここで生きていくしかないの。
ここでしか生きられないの。
・・・昔の人が余計な事をしなければ、私たちだってもっと違う生き方ができたはずなのにね」
ミーアは寂しげに微笑んだ。
「全く……
私たちが生まれる前の人達のせいで、なんで私たちがこんな目に遭わなきゃ、こんな生き方をしなきゃならないのよ・・・」
パトリックは、その顔をまともに見る事ができなかった。
ミーアに「朝までゆっくりしていけ」と伝え、オレンジの袋を押し付けると、パトリックは変わり果てたプラントを彷徨い続けた。
ミーアと別れた後、いつの間にかパトリックは評議会議場を訪れていた。
かつての栄光、希望に満ちた未来――
その象徴が目の前にあった。
汚れ、埃にまみれ、朽ち果てそうな議場。
壁のエヴィデンス01。
その下のプレート。
「人類の未来を照らす新人類である我らコーディネーターに栄光を!」
その文字の光が、埃だらけの評議場を空しく照らしていた。
「・・・これが独立の結果か。これがコーディネーターの未来か」
その時、パトリックに近づく影があった。
「初めましてだな。パトリック・ザラ」
「お前は……」
“オーブの虎”タイガ・ウラ・アスハと、元プラント評議会議長パトリック・ザラの初めての、そして最後の対面だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
遂に出会ったタイガとパトリック。
次回、タイガからパトリックに『プラント独立の真実』が明かされます。
次回お楽しみください。