転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
プラント評議会議場。
かつては世界の命運すら左右していた場所。
コーディネーターの現状を象徴するかのように、今や見る影も無い廃墟同然の場所で、タイガとパトリックは向かい合っていた。
「どうだ?これがお前の望んだ“独立”の結果だ。
木星までの船旅の間、さぞ良い夢が見れただろう?
だが現実はこれだ」
「今さら何しに来た?これ以上私に何を……」
「これで終わりとでも思ったか?
お前の、この無意味な“独立”などという寝言のために、一億数千万の人間が死んだんだ。
せめて少しでも自分の罪を思い知ってから死ね!」
「!!!」
タイガの言葉は苛烈だった。
彼は一つの資料をパトリックの前に放り投げた。
「読んでみろ。当時、コペルニクスで理事国側が提案しようとしていた内容だ」
震える手で資料を拾い上げ、内容を読み進めるうちに、パトリックは茫然となり、資料を取り落とし、顔は蒼白になった。
「……こ、これは!」
「当時、理事国側はプラントに対し、投資額と将来利益を合わせた金額での“譲渡”を提案予定だった。
『誰か』がコペルニクスで爆弾テロを起こさなければ、それが提案されていた可能性は大きいな?」
――『コペルニクスの悲劇』
月のコペルニクスで爆弾テロが起こり、地球側理事国の代表者と国連総長以下、国連首脳陣が死亡。
プラント側参加者のみが生き残った事件。
その爆弾テロを起こした『誰か』は現在でも不明である。
例えそれで最も利益を得たのが、目の前の男がいる「プラント」だとしても、公式には不明のままであった。
「その金額は、当時のプラントなら十分支払い可能だった。
つまり――
『誰か』によって爆弾テロが無ければ、
“プラントはそのまま独立していた”。
NJで一億数千万人が死ぬ事もなかった。
独立戦争でプラントの若者が死ぬ事もなかった。
第2プラントができる事もなかった。
プラントがここまで衰退する事もなかった。
お前の妻が血のバレンタインで死ぬ事もなかった。
なにより――
“独立自体が無意味になる事もなかった”」
「わ、私のやった事は……
私の願いは……
私の夢は……」
「お前のやった事も、願いも、夢も、この世界にもたらしたのは
『敵味方を問わない死と絶望だけ』だ。
お前はこのまま、この無意味なプラントの独立を眺めながらここで死んでいけ。
それがお前に命を奪われた一億数千万人へのせめてもの鎮魂だ」
タイガは背を向け、歩き始めた。
背後から銃声が響いたのは、それからしばらく経っての事だった。
――――
「銃で頭を撃ち抜いた?
木星往還中に脳やその他の重要部位のクローン臓器は用意しているな?
記憶のバックアップは万全だな?
散らばった脳はすべて集めろ。
クローン臓器を使って確実に助けろ。
クローン体とカーボンヒューマンは用意しているな?
何があっても死なせるな。
奴には“死ぬまで生きていてもらう”。
・・・そう簡単に死んで楽になれると思うなよ」
その言葉通り、パトリックは一命を取り留めた。
その後もパトリックは、あらゆる手段を用いて何度も自殺を試みた。
首を吊り、毒を煽り、自らの胸を突いた。
しかし、そのたびに最新の医療技術と、タイガが用意した「予備の身体」によって、彼は強制的に現世へ引き戻された。
パトリックは自分が決して逃れられない“自由な牢獄” に囚われている事を自覚せずにはいられなかった。
それが、敵味方を問わずパトリックの“夢”によって命を奪われた人々への慰めになったのか?
それは、死者にしか分からなかった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
「第58話 血のバレンタイン」で指摘していた
「『コペルニクスの悲劇』が「プラントの破滅」の全ての始まりになる」
とはこの事でした。
本作ではプラントが『コペルニクスの悲劇』を起こさなければ、プラントは独立していました。
パトリックのやった事は自分で独立を無にする行為でした。
彼は“最期まで”それを抱えて生きる事になります。
プラントの独立は無意味なものになりましたが、原作でも事前に独立出来れば戦争は起こらなかったでしょうか?
地球連合の宣戦布告がCE70年 2月11日、2月22日の世界樹攻防戦でNJが使用され、エイプリルフール・クライシスが4月1日。
1ヶ月半しかありません。
散布されたNJは1万機以上です。
宣戦布告後にこれだけの数を製造するなど不可能です。
MSを見ても事前に「NJを散布する事は決まっていた」と判断するべきです。
原作を見ていると、「プラント独立とは単なる口実」であり、その後のジェネシスの存在から見ても、コーディネーターの本当の目的は「ナチュラルを絶滅させる事だった」としか思えません。
それを主導していたパトリックの胸の内にあったのは何でしょうか?
妻レノアの事でしょうか?
プラントの未来でしょうか?
独立後の栄光でしょうか?
本作ではそれら全てが彼自身の手によって無に帰す事になりました。
「幼児の王国」の住人の振る舞いは、それに相応しい結末をもたらしました。
それはひとつの時代の終わりでもあります。
古い時代が終わり、新しい時代の始まりになります。
ちなみに彼にはまだ『底』があります(笑)
次回はその『底』が明かされる事になります。
次回お楽しみください。