転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
本話はAIで作成した文章を参考に作成しました。
どうぞお楽しみください。
暗い室内での密談。
――「地球はもう、我々の生産(欲望)を支えきれん」
それは誰の呟きだったか。
薄暗い会議室。
天にそびえ立つ摩天楼の最上階。
そこに設置された大型モニターが並ぶ会議室に、世界の富の数%を握る巨大財閥、通称
空気は重く、老人たちのため息だけが響いていた。
「……聞いたか。環境規制がまた強化されるそうだ」
「工場の排気基準もだ。従業員の安全対策も義務化。
コンプライアンスだの、労働環境だの……我々は何のために金を払っている?」
「昔は良かった。多少の汚染など誰も気にしなかった。
今では“従業員の幸福”だと? 笑わせる」
老人たちは苦々しく笑った。
「このままでは利益が出ん。
環境団体は騒ぎ、政府は規制を増やし、従業員は権利を主張する。
我々の時代は終わったのか?」
沈黙が落ちた。
その時、一人の老人が口を開いた。
「……宇宙に工場を作ればいい。地球が駄目なら、宇宙だ」
老人たちの視線が集まる。
「宇宙?」
「宇宙なら環境規制は無い。
騒音も排気も問題にならん。
宇宙に建設した施設の安全性は“例の男”によって証明されているだろう?」
「ああ、あの男か?」
「あれは上手くいったな」
「遺伝子調整など半信半疑だったが、望み通りの“性能”を持った者が大量に確保できるのが証明された以上、
“例の男”の研究に我々が出資したのは間違いなかったようだな」
彼らは“最初のコーディネーター”ジョージ・グレンの“作製”の為に多額の出資を行っていた。
「あれだけの“性能”を発揮できるのであれば、大量の人間は必要ない。
宇宙での工場の運営も少数で可能だ」
「だが、“作製”にコストがかかりすぎるのではないか?」
「我々にとってはどうという事もあるまい?
指導用の個体は我々が用意すれば良い。
一族の中で調整を受けた者を代表にすれば良かろう。
それに雑務を行う作業用の“特別な技能を持つ者”は“例の男”を見た一般人が身代を費やして勝手に“作製”するだろう?」
「確かにな」
ジョージ・グレンの活躍を目の当たりにした人々は、こぞって我が子をコーディネーターにしようとしていた。
原作でのクルーゼのキラに対する言葉、「誰もが望むだろう!?君のようになりたいと! 君のようでありたいと!」という言葉は一面の真実でもあった。
コーディネーターが産まれた=“作製”された理由。
それは「新たな人類の創出の為」でも、「人類の未来の夢の為」でもなく、「人件費を抑える」という富裕層の卑俗な欲望の為だった。
宇宙という空間では人間一人がその場に存在するだけで多大なコストがかかる。
真空、灼熱の高温、極寒の低温、放射線、酸素、足で立つ為の大地。
それら全ての対策を数万人、数十万人分用意するには膨大なコストが必要だ。
それが“特別な技能を持つ者”によって、ひとりで複数人分の作業を行えるのであれば人員は遥かに削減出来る。
そのメリットは計り知れない。
しかも老人たちにとっては、コーディネーターは単なる作業用の人員以下、交換可能な“部品”程度の意味しかなかった。
パトリックはエイプリルフール・クライシスの前「“罪のないナチュラル”など存在しない!
あのように無駄に資源と時間を浪費する劣等種の存在が罪でなくて何だ!
奴らは存在そのものが罪だ!」と言い放った。
しかし老人たちにとって彼らコーディネーターは、パトリックの言う“劣等種”の生活を支える為に産み出された“工場の部品”でしかなかった。
「高度な遺伝子調整をされた者が指導者となるのは当然だ。
つまり、我々が調整した一族の者が指導者になるのは当然だな?」
「当然の事だな」
「それが自然の真理というものだ」
「後から移住して来た者たちにも、
だが、最初に移住した者が後から来た者たちを導くのも当然だな?」
「当然だな」
「後から来た何も知らない者は、先に来た者の言う事に従うものだ」
そして自然の摂理を無視して、生命を弄ぶ事に対する罪悪感など彼らには存在しなかった。
遺伝子調整の成果は費やされた資金に比例して現れる。
世界の富の数%を握る彼ら富裕層以上の調整を施せる者など、存在するはずがなかった。
それはプラントが建設される前から、彼ら富裕層の子息が指導者として君臨し、その他のコーディネーターは彼らに従う者とされる事は決定していた事を示していた。
そこには到底“自由意思”と呼べるものは存在しなかった。
後に彼らは、プラントのコーディネーターは、自分たちを“選ばれた者”と称していた。
彼らは確かに“選ばれた者”だった。
富裕層の老人たちによって、自分たちの子息に仕える下僕として、幾らでも交換可能な“部品”として“選ばれた者”だった。
彼らの後に続く超富裕層たちもいるだろう。
しかし、彼らには先住者としてのアドバンテージがあった。
それはほんの僅かな差でしかなかったが、同レベルの者同士でその差を覆すのは容易なものではなかった。
「しかし、まだはっきりとしないが、現状では生殖能力に疑問があるそうではないか?そんなものが役に立つのか?」
「つまり、新しく“作製”して数を揃えればよいだけではないか?どこに問題がある?」
「・・・まあ、それもそうか」
後の世界で人類社会を二分する事になる“コーディネーター”。
その“コーディネーター”の事など、後からいくらでも数を増やせる“部品”の事など、彼ら世界の富の数%を握る老人たちにとって、何の問題にもならなかった。
彼らを最後まで悩ませる出生率も老人たちにとっては想定済みの些事でしかなく、しかも問題視する事ではなかった。
「宇宙では太陽電池の効率は地上とは比較にならん。
必要な数を並べるだけで、それで最低限のエネルギーは確保できる。
場合によってはエネルギーの輸出すら可能だろう。
無重力空間なら特殊な金属、特別な試料の合成、様々な資材が生産可能だ。
従業員は“特別な技能を持つ者”だけを選抜すればいい。
こちらの望む“性能”を持った者が大量に確保できれば、多額の人件費も必要ないし、それを理由に余計な権利意識を持つ連中は排除できる」
「宇宙に工場か・・・」
「そうだ。工場だけではない。
理想都市だ。
最新設備を備えた、我々の為の都市。
環境は完全に管理され、治安は完璧、従業員は選ばれた者だけ、税金は地球の半分、給料は倍。
“生産に集中してもらうため”という名目でな」
それを想像して老人たちは笑みを浮かべた。
「しかし莫大な費用がかかるぞ?」
「心配するな。費用は国に出させる」
「国がそんなものを認めるか?」
「認めるだろう?
『人類の未来のため』なのだから」
誰かが吹き出した。
「環境に優しい宇宙産業、最新技術の開発場所、新しい雇用、最先端医療、そして優秀な人材への適切な報酬」
「誰が反対する?」
誰もが頷いた。
「“環境悪化の原因の移動”、“理想的な都市生活”、“宇宙開発の未来”、“人類の新たなステージ”、“国家の威信”、そう言えば、政府は喜んで金を出すだろう」
暗い室内に、再び笑い声が響いた。
「建築は我々のゼネコンが請け負う。国の金で建設し、利益は我々が得る」
「居住者には減税と恩恵を与え、“特別な技能を持つ者のための都市”と宣伝する」
「そして……」
老人たちは声を潜めた。
「宇宙に作られた工場と都市は、国の金で建設されるが――、実質的には我々のものだ」
「従業員は我々が選び、都市の運営も我々が握る。税金は半分、給料は倍。従業員は喜んで移住するだろう」
「もちろん我々もな」
老人たちは笑った。
「“例の男”の同類を使えば建設は早く進むだろう。我々の為の、理想都市。
環境は完全管理、治安は完璧、最新設備を備えた、我々の為の都市がな」
「“例の男”の同類であれば、工場に過剰な人員は必要ない。
我々の手足となる者を含めても、最大でも五千万人程度居住出来れば充分だろう。
それでも足りなければ、宇宙なら場所が必要になればいくらでも増やせる」
「なにより最新施設を揃えた経済特区の産業都市であれば税制が優遇されるのは当然だな。
そこに住む住人、我々も含めてな」
老人たちは薄く笑った。
「そもそもなぜこれだけ世界の雇用に貢献している我々が、あれほどの税を納めなければならんのだ?」
それは老人たちの偽りのない本心だった。
「我々の納めた税の総額はちょっとした国の国家予算を凌駕するのだ。国ももっと我々に恩恵を与えても良いのではないか?」
世界の国々は老人たち高額納税者に対しては税額を減額したり、特別控除を行ったり、公共工事を発注したり、様々な配慮を行っていた。
しかし老人達にはその程度では不満だった。
「我々の正当な報酬を不当に搾取する国とは決別するべきだ。経済特区を設置し、そこでの税が半分になるという建前があれば国も手出しできまい」
「そう上手くいくか?」
「……国が追徴金を求めてきたら?」
疑問の声が上がったが、問われた老人たちは笑った。
「代表者に“特別な技能を持つ者”を据えればいい。
その連中に“弾圧だ!”と叫ばせればいい」
「“我々は迫害されている!”と叫ばせるだけで、自分の頭で考えない連中は賛同するだろう」
「国が強硬措置を取ったら?」
「治安が悪化したという名目で自警団を作ればいい。
“親会社が襲わせている!”と騒ぎさせれば疑問など持たないだろう」
「工場を占拠したら?」
「“工場は我々のものだ!”と言わせればいい」
「治安が悪化したら、自警団が作られるのは当然だし、その自警団が独立の為に強化されるのは当然だな」
老人たちは満足げに頷いた。
「最終的には地球から独立して、我々だけの国を作る。
誰にも邪魔されず、我々が得た利益を不当に奪われる事もない、我々だけの国をな」
「その為には軍事力も必要だな」
「何事もなく独立出来ればそれが一番だが、地球が素直に宇宙に移住した我々を認める筈があるまい?
ならば軍事的衝突は前提として考えるべきだ。
軍事力を使わずに独立出来るならそれに越した事はないが、地球と一産業都市では国力が違いすぎる。
地球が武力行使を躊躇う事はないだろうな。
しかし勝つ事は出来ぬだろうが、勝つ必要は無い」
一瞬、その言葉を他の老人たちは理解できなかった。
「どういう事だ?」
「『我々が移住した都市の独立が認められれば良いのであって、無理に軍事的に勝つ必要は無い』という事だ。
軍事的に無視できない被害を受ければ、地球も再度軍事的行動を行って、同様の被害を負う事はためらうだろう。
それに表立っては“例の男”の同類の“特別な技能を持つ者”を立たせておいて、裏での地球との交渉は我々が行なえば独立を認めさせる事は容易だ」
「・・・確かにな」
「ちょっとおだて上げれば“特別な技能を持つ者”は何の疑問も持たず、我々の思うように踊ってくれるだろう。
生殖能力に問題があるのならかえって好都合だ。
その都度、新しい『駒』を“補充”すれば我々の思うがままだ」
コーディネーターを絶望させた第三世代以降の出生率の低下。
老人たちにはむしろその方が都合が良かった。
つまりそれを改善しようとする意図は老人たちには最初から存在しなかった。
「地球への軍事行動が失敗したら、表に出した“特別な技能を持つ者”に責任を取らせて処分すればいい。
『残された者が平和の為に尽力して、不利な状況から独立を勝ち取る』感動的な話だと思わないか?」
話を聞いていた老人たちの苦笑が深くなった。
「確かにな・・・」
「地球の連中の弱みはいくらでも握っている。交渉は簡単だな」
それは『世界の闇』の深淵を渡り歩いてきた老人たちにとってはあまりにも容易い事だった。
――――
宇宙に建設される巨大な産業都市。
その完成模型を老人たちは感慨深げに見つめた。
「これが……新しい時代の都市だ」
「煩わしい税や、地球の規制に縛られず、従業員の権利に悩まされる事もない、我々の理想の都市――」
「宇宙に作る、我々の理想郷だ」
「名を……どうする?」
老人たちは静かに笑った。
「そうだな……
“プラント”とでも呼ぶか」
――――
それは、平和的解決の道は最初から閉ざされ、軍事力の行使が前提にされた、しかも敗北する事が織り込み済みの『最初から定められた歴史』だった。
平和への道を必死に模索した理事国の行為も、独立を心の底から望んだコーディネーターの想いも、富裕層の老人たちによって定められた『租税回避の理想郷』の前では何の意味も無かった。
何よりもパトリックによって『コペルニクスの悲劇』が引き起こされた結果、プラントの運命は定まり、その時点で既に未来は決定された。
それを知らずに富裕層の老人たちの思惑通りに踊り続けたコーディネーターにとって、それが『自分の意思によるもの』だと最後まで信じ続けた事は果たして『救い』と言えるだろうか?
プラントは、人類の未来の為に産まれたのではない。
ましてや、差別されたコーディネーターを救う為でもない。
世界中の富を独占し、それでも際限なく富を求める、一部の人間のさらなる欲望から産まれた。
そして、その欲望から産まれた都市を、後にコーディネーターたちは「自分たちの国家」だと思い込んだ。
それが人類の歴史に残る悲劇を産み出した。
その身勝手な老人たちの思惑も、コーディネーターの想いも、“オーブの虎”の手によって完膚なきまでに叩き潰される事になるのは、そう遠くない未来の事だった。
――――
プラントに移住したパトリックの父。
プラント独立の真実を知り、絶望に沈んだパトリックが、その書斎からプラント設立の真意を見つけ出すのは、彼が現世に帰還してしばらく後の事だった。
その数日後、パトリックは再び自分の生命を絶ったが、当然のように再び現世に引き戻される事になった。
プラントの独立も、レノアの死も、コペルニクスの悲劇も、最初から意味などなかった。
プラントの存在、コーディネーターの産まれた理由、“自分”という存在の意味。
その全てが他人の手で用意されたものだった。
それを知ってなお、彼の“自由な牢獄”が終わる事はなかった。
『それがお前に命を奪われた一億数千万人へのせめてもの鎮魂だ』
パトリックの耳には最後に交わしたタイガの言葉がいつまでも残っていた。
※あとがきです。
プラントに住む者は『幼児の王国』の住人ですが、最初に“プラントそのもの”をデザインした存在がいるのでは?
C.E.45で1千万人のプラントの人口が、C.E.70時点で6千万人になったのは、初期にこういった存在が移住してきたからでは?
そう思ってこの話を思いつきました。
最初のコーディネーター“ジョージグレン”。
彼の“作製”にも多額の資金が費やされたはずです。
それこそ手探りでの“作製”ですので莫大な資金が投入されたはずです。
それを出資できる存在とは?
わざわざ莫大な費用をかけてコーディネーターを“作製”する理由は?
コーディネーターを“作製”した連中は他に目的があったのでは?
人数が限られる“プラント”という閉鎖空間で、最高効率で作業を行う為の“部品”として作られたのがコーディネーターではないか?
それを“新人類”という包装紙と、“コーディネーター優生主義”でコーティングしたのが“プラント”という存在ではないか?
これが本作での“コーディネーター”と“プラント”という存在になります。
税金から逃れるための富裕層の“租税回避地への移住”は現在でもありふれています。
富裕層は『租税回避地のプラントに移住した』のではなく、最初から『租税回避地としてプラントを建設した』のであれば、通常ではありえないC.E.45からの人口の増加も説明できるのでは?
表面上は“コーディネーター国家”だが、実権はコーディネーターの親たち=表に出ないスポンサー、つまり“富裕層の老人たち”が握っていたのではないか?
プラント建設にはこのような背景があったのでは?と考えて本話を作成しました。
環境問題、労使問題、人権問題、様々な規制から逃れる為に、宇宙に建設された租税回避の為の高級リゾート地。
国に資金を出させて、建設は自分の会社で請負い莫大な利益を得て、補助金まで得る。
その後は『住民のトラブル』によって、理事国の税金によって建設された地を我が物とする。
本作ではこれがプラントが建設された理由、コーディネーターが産まれた理由になります。
SEEDの公式年表や、皆様からの感想から着想を得て、本話を作成する事が出来ました。
改めて皆様にお礼を申し上げます。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
いよいよ『SEED最終章』も終盤、残り3話になります。
次回お楽しみください。