転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
パトリックへの対応を指示した後、タイガはオーブ大使館へ戻っていた。
書類を処理していたタイガに、アスランが近づく。
「タイガ様……」
「パトリックの様子を見たか? “アレックス”?」
「……はい」
「パトリックに同情する事は許さん。
アイツが今直面しているのは、俺たちが30年かけて乗り越えたものだ。
アイツは今、それを突きつけられただけだ。
誰もが向き合わなければならないものだ。
俺たちは被害者として、パトリックは加害者としてな」
「それは……」
「パトリックに同情するという事は、アイツの行動の正当性を認める事になる。
どんな理由があっても、一億数千万の生命を奪う事に正当性などあるはずがない。
そんなもの、欠片も存在してたまるか!」
アスラン――いや、“アレックス”は言い返せなかった。
「本来であればユニウス条約締結の時点でパトリックは戦犯として裁かれていた。
こちらの思惑もあったとはいえ、
それは理解しているな?」
「はい・・・」
「少なくとも既に大戦時の裁きは行われている。
だから俺たちはアイツを改めて裁いたのではない。
処罰を下したわけでもない。
拘束したわけでもない。
それどころかアイツの命を助けている。
誰にも非難される謂れはない。
ただパトリックに“真実”を教えただけだ。
それをどう受け取るか、どんな意味を見出すのかはアイツ次第だ。
それに俺たちは干渉するべきではない」
プラント独立の、コーディネーター誕生の“真実”。
それはコーディネーターの“夢”、プラント独立がどれだけ無意味なものだったか。
コーディネーターの存在そのものが砂上の楼閣に過ぎないものである事を証明していた。
プラントの独立を、コーディネーターの未来を頑なに信じていたパトリックが“真実”を受け止める事が出来るか?
アスランにはとてもそれを信じる事は出来なかった。
同情など父は望まないだろう。
犠牲になった人たちの事を考えれば、父に同情の感情を抱く事さえ許されないだろう。
しかし、それでも自分にとってはたった一人の父なのだ。
言葉にならない感情が胸の中に渦巻く中で、かけられたタイガの言葉がアスランの胸の内を一気に冷やした。
「お前がパトリックに寄り添うのであれば、現在の家族を捨てる事になるぞ?」
「!!」
「身内に一億数千万の大量虐殺者が出るんだ。当然だろう。
それでもお前に捨てられた家族は、“大量虐殺者の身内”として世間から非難される事になる」
「それは! 私の家族には関係が……」
「確かに関係はない。だが世間がどう思うかは無関係じゃない。
そこで得られるのは『老いた父に寄り添った』という、お前の自己満足だけだ。
家族や世間に恨まれてでも“自分の自己満足を実行したい”というなら、俺は止めん」
「しかし、私には責任が……」
「オーブは前時代的な封建国家ではない。
親の罪が子に及ぶ事はない。親と子は別人だ。
子が親の保護下にある未成年ならともかく、パトリックもお前も成人した大人だろう?
お前の自己満足に家族を巻き込むな!」
「……」
「お前の娘たちと同年代の娼婦たちを見て罪悪感が湧いたか?
その罪悪感を持つのはパトリックであって、お前ではない。
それでも家族を犠牲にして、老い先短いパトリックに付き添いたいというなら、俺は止めん。
どうする?」
「……」
言葉が出ない。
幼少時に父と戯れた思い出が。
幼い娘たちの相手をしていた時の満ち足りた時間が。
父の顔と、
娘たちの顔が、
同時に浮かぶ。
アスランはゆっくりと顔を上げるとはっきりと口にした。
「……家族を、“私の家族”を優先します!」
数瞬の沈黙の後、アスラン――“アレックス・ディノ”はそう言い切った。
それは、“アレックス”の過去との決別だった。
「……そうか。お前のようなかけがえのない者を失わずに済んで安心したよ」
「タイガ様……」
タイガの信頼の大きさに、アスランは胸を熱くした。
続いたタイガの言葉にそんな感傷は吹き飛んだが。
「差し当たってはキラのやらかしの後始末が溜まっているから、よろしく頼むぞ。
お前以外にそれが出来る者はいないからな?」
「タイガ様!」
そう、アスランはキラ専門のトラブル処理係と化していた。
プラントから戻ったキラは、名前こそ元の“キラ・ヤマト”に戻していたものの、
見る者が見ればわかる元プラント評議会議長という立場もあり、
表立った地位には就けず、裏方を担当していた。
しかしタイガの教育により組織運営の能力を身につけ、
プラント最高評議会議長という経験を積み、
そこにスーパーコーディネーターの能力を全力で注ぎ込むキラを止められる者は、もはや存在しなかった。
表立って拒否できないが、あまりに有効で過激な案件を次々と実行するキラに、
各関係者からは「何とかキラを止めてくれ!」という悲鳴にも似た哀願が連日のように届いていた。
曲がりなりにもキラに言う事を聞かせられるのはアスランだけだった。
アスランがキラへの哀願を処理し、ディアッカがその後始末に奔走する。
それがオーブの裏側の日常だった。
そのためアスランは裏では、
• 「オーブの裏の切り札」
• 「オーブの最後の良心」
として絶大な信頼を寄せられていた。
ディアッカは
「いやだ! 俺は“大天使”に残るんだ!」
と安全な後方より生命の危険がある傭兵部隊に残る事を望んだが、
キラの裏事情を知り、それに応える能力を持つ彼が逃れられるはずもなかった。
「安心した理由はそれですか!」
「何を言う?感情的にも実務的にも、何ひとつ嘘は言っていないぞ?」
「タイガ様!」
アスラン――“アレックス”とタイガの言い合いは、プラントの夜が更けるまで続いた。
人類の新たな門出が目前に迫った夜の出来事だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
この物語に長い間お付き合い頂きありがとうございます。
次回、最終話、その後のエピローグで完結になります。
次回お楽しみください。