転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください
C.E.81年。
先の大戦が終結して10年。
世界平和監視機構「コンパス」による“平和の強制”によって紛争は沈静化し、世界中で急速に軍縮の流れが加速していた。
そんな折、オーブ、大西洋連邦、そしてプラントの三者による合同軍事演習(軍事交流)が実現する事となった。
『戦後10年が経過し、コンパスが存在する以上、もはや互いに銃を突きつけ合うことに意味はない。交流を通じて互いの実力を確かめ合い、平和を維持しよう』
それが表向きの建前であった。
だが、オーブの目的は別にあった。
大西洋連邦はフォスターの醜態も有り、オーブへの武力侵攻には否定的だったが、それでも軍部の一部には「オーブ程度なら簡単に侵攻できるのでは?」という空気があった。
そして実質的な軍事力を欠いたまま大言壮語と“軍事的冒険”を叫ぶプラントに対し、「お前たちの立たされている現実がどのようなものか」を痛烈に叩き込む事――それがオーブの意図であった。
共通しているのは、『オーブの防衛力を見せつけて両者に侵攻を諦めさせよう』というものだった。
演習は実機の持ち込みを最低限に抑え、過去の膨大な実戦データや模擬戦データを基にした高度な戦闘シミュレーションを中心に行われた。
――――
まずは、大西洋連邦がオーブに侵攻したという想定でシミュレーションを行った。
MS母艦20隻、MS200機、護衛艦、巡洋艦等7~80隻の堂々たる大艦隊だった。
しかし、これはあっさりと壊滅した。
NJ下ではレーダーもソナーもほとんど役に立たず、接近したゴッグやズゴックEの
もはやゴッグもズゴックEも旧型と言って良い程だったが、改修に改修を重ねた結果、最新鋭のMSとも渡り合える程に完成度を高めていて、蓄積されたデータの質と量でも他を圧倒していた。
どれ程技術が進歩しても、艦艇では100ノットを超えるオーブの水中MSを振り切る事は不可能だった。
実体弾はPS装甲の前では無力であり、ビーム兵器は海中に潜航されると減衰して意味を成さず、さらに護衛艦や巡洋艦には充分なフォノンメーザーは搭載されていなかった。
水中MSの為だけに、艦隊戦では役に立たないフォノンメーザーを搭載するなど無意味だ。
その結果、大西洋連邦でフォノンメーザーを搭載したのは極限られた艦のみとなった。
そして魚雷や爆雷は100ノットを超えるPS装甲の水中MS相手には無力だ。
だが対水中MS用として有効なのはフォノンメーザー程度しか無い。
しかし水中を100ノットを超える速度で自由に動き回るMSを捉えるには、その数は余りにも少なすぎた。
その為、MSは発艦前に母艦ごと周囲の艦艇もろとも撃沈され、残存艦艇もアストレイの
特に改修された後期型のアストレイは、パワー・エクステンダーを搭載し、ビームライフルを数時間に渡って撃ち続ける事が可能となっていた。
これによりアストレイは通常の戦闘時間ではバッテリー切れになる事はまず無いと言って良かった。
数十、数百の高出力のビームライフルが
それに耐えられる艦艇やMSなど存在しなかった。
大西洋連邦をさらに絶望させたのはオーブの新型ビーム防御システム、“
これは
原理としては“複数のMSのビームシールドを同調させ、広範囲のビーム防御フィールドを作り出し、ビームを各MSに分散させ、PS装甲と併用する事で物理的にも強力な防御力を発揮する”というものだった。
これはゴットフリートなどの対艦用ビーム兵器の直撃に耐える事すら可能とするものだった。
もちろんこれはエネルギーの消耗が激しく、短時間しか使用できなかったが、パワー・エクステンダーはそれらの欠点を解決していた。
この為、高出力のビーム兵器を搭載した新型艦がアストレイ群を砲撃したものの、同調するMSが多ければ多い程防御力は際限なく上昇した為、アストレイ群を撃破する事はできず、逆に
こうして大西洋連邦のシミュレーションはオーブの防衛成功で終わった。
「これ、なんて無理ゲー?」とはシミュレーションに参加したある大西洋連邦の士官の言葉である。
これ以降大西洋連邦は、新型、旧型、地上用MS、水中用MSを問わず搭載可能な、“
――――
次はプラントとのシミュレーションだった。
プラントは衛星軌道からの直接降下によってオーブへの侵攻を図った。
衛星軌道からの降下であれば水中MSになど意味は無い。
レーダーの使えぬNJ下で衛星軌道からの降下であれば迎撃は困難だ。
MSであれば空挺時でも火力に不足は無い。
そんなプラントの意図はオーブの防衛力の前には無意味なものだった。
オーブは衛星軌道からの降下への対策として、高空に大量のドローンを対空させていた。
その分布も超高空、高空、低空と段階的に配置していた。
オーブは超高空、高空、低空を通過する際に破壊されるドローンのデータによって、降下してくる敵の位置や速度を手に取るように把握していた。
その結果、降下してきたプラントの部隊は、アストレイの
防衛戦を突破出来たMSは極僅かしか存在しなかったが、その中の一部のMSは核動力だった。
プラントは「これで戦況を覆せる!」と思ったものの、最終決戦時にアムロがプロヴィデンスを撃破した際の戦闘データをコピーされたアストレイによって、残存した核動力のMSは全て撃破された。
現実を認められないプラントは何度もシミュレーションを繰り返したが、結果は同じだった。
最後にはデータ上のMSを全て核動力機にしてまでシミュレーションに臨んだが、結果は変わらなかった。
オーブ軍では核動力MSの対処法が確立されている以上、プラントの行為には何の意味も無かった。
しかもこのデータは、改修を重ねているとは言え、もう10年も前のものなのだ。
現在のオーブのMSの性能がどれ程のものになっているのか?
もはや、想像する事も出来なかった。
追い詰められたプラント側は、禁じ手である“ジェネシス”の使用データまで引っ張り出した。
だが、“ジェネシス”を発射した瞬間、アメノミハシラから即座に報復の核ミサイル群がプラント全土へ降りそそぎ、地球とプラントの双方が相打ちで全滅するという最悪の結末が繰り返されるだけであった。
そこまで繰り返せば、流石のプラントも、「前大戦でジェネシスを使っていればプラントも滅亡していた」という事実を認めるしかなかった。
このシミュレーションの結果、大西洋連邦とプラントの双方は「オーブに手を出すのは不可能」という認識で一致した。
そもそもオーブに侵攻した時点でコンパスの攻撃の対象となり、一方的に殲滅されるのが目に見えていた。
プラントに至っては、食糧輸送の護衛隊でさえ充分に用意する事が出来ないのに、ユニウス条約で軍備が制限されているにも関わらずオーブへの、地球への侵攻など夢物語でしかなかった。
“地球へ侵攻して土地を、食料を手に入れる?”
“実戦とシミュレーションは異なる?”
“実戦ならシミュレーションと違って成功する?”
そんな“軍事的冒険”など単なる自殺行為でしかない。
シミュレーションで成功しない事が、なぜ実戦で成功すると思うのか?
そんな無意味な事をする余裕があるなら、護衛隊の拡充の方が優先するのは当たり前だ!
こうしてプラントは食糧輸送の安定に全力を注ぎ込む事になった。
現実を見ようとしない“軍事的冒険”を主張する者たちは顧みられる事はなくなり、プラントでの発言力を失う事になる。
そしてプラントは、定められた滅びの道を、ゆっくりと確実に歩んでいく事になる。
――――
シミュレーション中の大西洋連邦のあるMS部隊。
「どうしたっ!元気がないぞお前ら!」
「だって大尉。俺たちの相手はあの『オーブの白い流星』ですよ?勝ち目なんかある訳ないじゃないですか?」
「そうですよ?噂じゃ『赤い彗星』以外に『白い流星』相手に15分以上保った者はいないそうじゃないですか?」
「俺たちじゃどこまで保つか知れたものじゃないですよ」
「馬鹿を言え!相手が『白い流星』だからって勝ち目が無い訳じゃない!
俺がそれを証明してやる!
10年前を思い出せ!
忘れたのか!
あの時と同じだ!
お前らも俺に続け!」
男の言葉に周囲の者たちが男を見つめる。
この男であれば『白い流星』相手でもあるいは・・・
そんな思いが溢れ出る。
10年前、プラントとの最終決戦での出来事が周囲の者の脳裏に蘇る。
殆ど初陣同然だった男たちは最終決戦でプロヴィデンスと相対していた。
戦場を支配するプロヴィデンスを相手に、絶望するパイロットたちを助け続け、この男はボロボロになりながら、遂に最後まで生き残ったのだ。
その時の男の気迫が、覇気が、周囲に伝わったのか、俯いていた者たちもひとり、ふたりと次々に顔を上げた。
「・・・ハイッ!了解しました!大尉殿!」
「相手が『白い流星』でも簡単にやられたりしません!」
「相手が誰であっても自分たちは退いたりしません!」
「よしっ!いくぞっ!お前ら!」
戦意を取り戻したパイロットたちを引き連れて、男は野獣のように歯を剥き出しにして笑い、MSに乗り込んだ。
こうしてオーブとのシミュレーションにおいて、敗北続きだった大西洋連邦に一つの光明が生まれる事になる。
それまでアムロを相手にシンが成し遂げた15分の記録に並ぶ男が現れたのである。
しかもその男はコーディネーターでも、ニュータイプでもなく、極普通のナチュラルだった。
男の名はヤザン・ゲーブル。
『野獣』と呼ばれた男だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
不定期にはなりますが、次回お楽しみください。