転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
今回もお読みいただきありがとうございます。
本話はオーブ内部寄りの内容です。
本作は原作とは異なる解釈や独自設定が含まれますのでご了承ください。
ここはオーブのセイラン家。
「その後の調子はどうだ?」
「まずまず、と言ったところでしょうか?」
「さすがに兄上が倒れたら自覚したか」
「今はまだウズミ様の指示がない事で『なぜ上手くいかないのかわからない』という状態ですからな」
「兄上の指示が無ければ上手くいかないのはわかる。しかしそれが『なぜ上手くいかないのか原因がわからない』という事か」
タイガの兄、ウズミ・ナラ・アスハが倒れた。
原因は過労だったが、医師からは一週間の安静を言い渡された。
ウズミは反抗したが「悪化して安静期間が延びたら意味がありませんよ」と言われて自重した。
「よし、この機会に例の件を実行しろ」
「よろしいのですか? まだ十分ではありませんが?」
「兄上が倒れて代替案が有効に働けば、日和見していた連中もこっちになびくだろう。そうすればもらったも同然だ」
「タイガ様が後からウズミ様に叱られませんか?」
「倒れた兄上が悪い。まさか兄上も俺達に『自分と同じ事をしろ』なんて言わないだろう?」
「それはそうですが……」
「兄上には兄上の、俺たち凡人には凡人のやり方があるものさ?」
(タイガ様も自分が凡人とは到底言えないという事を理解していただきたいものだ)
「さて、やるぞ?」
「はい」
ウズミの執務室に入ると、ホムラが必死にウズミの代わりを果たそうと悪戦苦闘していた。
「ホムラ兄上、ただいま参りました」
「おお、タイガ、助かったよ。早く手伝ってくれ!」
「ちょっとお待ちください。おい、始めろ」
「はっ」
タイガは後ろに従っていた数名の下級氏族に指示を出すと、執務室の書類を全て隣室に運び入れた。
「お、おいタイガいったい何を?」
「兄上、俺達にウズミ兄上と同じ事はできません」
「まあ、そうだな」
ウズミの代わりをしようと悪戦苦闘していたホムラには、それは強く実感できた。
「それなら俺達は全部の仕事ではなく、俺達にできる仕事だけをしていれば良いんです」
まずは書類を部署別に分け、緊急性の高いもの、優先度の高いものに分類し、
緊急性の低いもの、ウズミの承認を必要としないものは担当部署で処理させる流れを作り上げた。
緊急性や優先度の高いものは率先して処理し、その中でもウズミの承認を必要とするものだけを残すようにした。
「担当部署に任せても良いのか? 我々がやった方が良いのではないか?」
「兄上、担当している連中は専門家です。我々は部外者です。専門家に任せた方が間違いありません。
もしそれが間違っていたのなら、その責任を取るのが私達の仕事です。
ウズミ兄上みたいに全部自分でやるなんて普通の人にはできません」
仕事を任された部署の専門家達は奮起した。
今までは何をやってもウズミの手が入り、しかもそれが自分の仕事より正確で間違いない。
「ウズミ様さえいれば自分などいなくても良いのでは?」
そう思い知らされて熱が入らず惰性で仕事をしていた時に、
雲の上の存在であるアスハ家のタイガが「お前たちの仕事を信じる」と言ってくれたのだ。
しかも「その責任は自分が取る」とまで言ってくれたのだ。
これで奮起しないわけがなかった。
その結果、ウズミの執務室に運ばれる書類の量は十分の一にまで減った。
「これなら俺達にもできるでしょう」
「これは……。お前は大したものだな」
ホムラは弟を素直に称賛した。
「やめてくださいよ。俺は自分がどうしたら楽が出来るか考えただけなんですから。
自分なら兄上みたいに『ウズミ兄上のように仕事をやろう』なんて思わず、その場で放り出していましたよ」
「いや、実際に仕事が減ったのはお前のおかげだ。ありがとう」
「とんでもありません」
兄の素直な賞賛にタイガは頭を下げた。
タイガにしてみれば、自分がやったのは書類を運び出して指示をしただけ。
仕事らしい仕事をした感覚はないのだ。
その後ウズミが復帰した後、仕事の量の変化に驚愕し、
暇を持て余して他の部署の仕事に口を出そうとした所、
「兄上、仕事を任せたのなら最後まで相手を信じて任せるべきです。
そこで口を出すという事は『お前の仕事は信用ならない』と言っているのも同然です。
それでは人が育ちません」
とホムラに制止され、その後口を出すのをやめた。
また、仕事を処理する流れが既にできていたので、これはそのまま使い続けるようになった。
その結果、以前に比べてウズミの仕事は激減した。
「これで兄上も少しは休めるな」
「よろしかったのですか?」
「ん? 何がだ?」
「いえ、タイガ様は功績を全てホムラ様のものとされていましたが、
それではタイガ様が報われないのではと?」
「俺がやったのは書類を運び出して指示をしただけだ。功績と言えるほどの物じゃない。
実際に実行したのはホムラ兄上だ。俺が口を出すものじゃない」
「しかし」
「少なくともウズミ兄上の仕事は間違いなく減ったんだ。それで良いさ」
(この方は……)
表向きはウズミ静養中の功績はホムラのものとされた。
本人はタイガのものだと譲らなかったが、
「俺の代わりに面倒ごとを引き受けると思って下さい」というタイガの言葉に渋々と納得した。
そして実際にタイガに仕事を任された専門家達はタイガへの忠誠を誓った。
「あの方は俺達を信じてくれた! それなら俺達は少しでもあの方の力になろう!」
「「「オオオ!」」」
(やはりこの方は我らの仰ぐべき旗だ)
ウナトの思いは決して表に出る事はなかったが、
タイガは下級氏族や仕事を任された専門家達から絶大な支持を得る事になる。
――――
その後。
「主、どうしてですか? どうして私にこんな仕打ちをされるのですか?」
カルアは涙ながらに訴えていた。
カルアがいるのはタイガに与えられた屋敷、
その中になぜか存在する座敷牢の中だった。
「おまえなあ、自分がダイエット中だって忘れたのか?」
「忘れていません! だからこうして食事も我慢しているのではないですか!」
「一度に三人前の食事を平らげるのは我慢とは言わないんだよ!」
「う、で、でも仕方ないじゃないですか?
主に可愛がってもらったらなぜかお腹がすくんですから! 私は悪くありません!」
ゆっくりかぶりを振ると、タイガは踵を返して歩き出し、
傍に控えていたアリサに命令した。
「明日から三日間、こいつの食事は抜きだ。ここから一歩も出すんじゃないぞ」
「ご命令承りました」
アリサはゆっくりと礼をした。
「主~~~!!!」
ああ、水だけは与えてやれ――というタイガの言葉を最後に、
座敷牢の扉は閉じられたのであった。
合掌
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
今回はオーブの内部に当てた回でした。
独自設定が多数ありますが創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。