転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
お気軽に読んでいただければ幸いです。
「MS(モビルスーツ)ですか?」
軍関係者の間には困惑と嘲笑が広がっていた。
「全高20m前後? 重量80トンほど?」
「開発コンセプトは装甲・火力・機動性を両立した全領域兵器?」
「戦艦に匹敵する火力、戦車に匹敵する装甲、戦闘機に匹敵する機動性を目指す?」
「話になりませんな」
「全くです」
軍幹部の話を聞いていたタイガはここで声を上げる。
「まあ、待て。確かにこのMSというものは戦場では役に立たないだろう」
「その通りではないですか?」
全高20m。
地上であればレーダーどころか目視でさえ容易に視認できる。
どんな頑丈な装甲を持っていても探知されて集中砲火を浴びれば終わりだ。
航空機からの反復攻撃を繰り返されれば撃破は簡単だ。
この形状では戦闘機に追いつくことなどできないだろう。
やはりこのMSの主戦場は宇宙であろう。
「このMSの宇宙空間での運用方法はどんなものが考えられる?
連中はこれを量産しようとしている。つまりこれが役に立つと思っているという事だ」
「人型である点を利用したAMBACでしょうか?」
「手が付いているのであれば武装の持ち替えによる汎用性でしょうか?」
「それであれば火砲の内側へ入り込む事による火器の無効化と超至近戦闘でしょうか?」
ああでもないこうでもないと議論は進む。
ひと通りの議論が終了した後、結論がまとめられた。
「つまりこのMSとやらは、レーダーや通信機等の使用できない特定環境下での運用が前提という事か?」
「そうなります」
「レーダーや通信機等が使用できなくなればまともに軍の移動などできません」
「いくら戦力が存在しても、それを“いつ”“どこに”移動させれば良いのか不明で、
情報も入ってこないのであれば遊兵化してしまい、どれほどの戦力を保持していても無意味です」
何しろ専門家だ。
軍幹部たちの言葉には説得力がある。
「どこに出撃すれば良いのかわからなければ待機するしかない。
下手をすれば待機している間に戦闘は終了してしまう。数の差もなくなるな」
「そうなるとこれを運用するには相手のレーダーや通信機等を使用不可能にしなければならないが、
そのような技術があるのか?」
「ECMやECCMと言うのがありますが、範囲は限定的です。
このMSというのを運用しようとすれば、その範囲は戦場全体になります。とても現実的ではありません」
「……うん?」
その時、軍幹部のひとりがおかしな事に気付く。
「どうかしたか?」
「このMSの動力源はなぜバッテリーなんだ?」
「え?」
「軍事行動で使用するんだ。他にも強力な動力源があるのに、わざわざバッテリーを採用する理由はなんだ?」
「バッテリーを採用する理由があるという事か?」
「つまりこのMSは
“レーダーや通信機等が使用できず、バッテリーで運用する必要がある状況下での運用”
を想定しているという事か?」
「そうなるな」
奇妙な沈黙がその場を満たす。
「資料を確認しろ!」
「そんなものがあれば戦場そのものが変わるぞ!」
「いや、影響は戦場のみにとどまらない可能性がある!」
様々な資料がひっくり返された結果、一つの論文が発見される。
プラントの物理学者オーソン・ホワイトの提唱した
「ニュートロンジャマー理論」 である。
特殊なフィールドを発生させ、その範囲内の自由中性子(原子エネルギー)の核分裂反応を
無差別かつ半永久的に抑制する。
そのためフィールド内では原子力エネルギーが使用不能になる。
さらに副作用として電波の伝達が阻害されるため、
電波を利用した長距離通信が使用できず、レーダー類もすべて撹乱される。
「これは……」
「これがプラントの強気の理由か?」
「有効範囲は?」
「動力源の種類にもよりますが、数百キロ、場合によっては数千キロの範囲になります」
「戦場に数基ばら撒けば終わりだな」
「いや、宇宙だけじゃない。これが地球にもばら撒かれれば……」
その場の者達はぞっとした。
これが地球上にばら撒かれれば、軍隊のみならず一般市民にも莫大な被害が出る。
「物流が止まる」
「食料も薬も手に入らなくなる」
「病院の非常電源さえ止まるぞ!」
「寒冷地では凍死者が出る!」
「いくら連中でも戦場でしか使用しないだろう?
これでは戦争ではない。虐殺だ!」
「ナチュラルを人間と思っていない連中にそんな事が期待できるか?
連中なら確実に効果を及ぼすために大量に、広範囲にばら撒く可能性があるぞ?」
その言葉を誰も否定できなかった。
「もう一つあります」
資料を確認していた兵站部門の武官が声を上げる。
「これを一旦“ニュートロンジャマー”と仮称しますが、これを作成するには必要な鉱物があります」
「それは特殊なものなのか?」
「いえ、特に特殊なものではありません。しかもほとんど需要もありません」
「ふむ。それのどこが問題なのかね?」
「市場でこの鉱物の価格が急激に跳ね上がっているんです。購入者はプラントです」
その場の空気が凍った。
「ど、どれくらいが製造できる量なんだ?」
「明確には言えませんが、この規模であれば数千機、下手をすれば万単位かと」
沈黙をその場が満たした。
しばらくの間誰も言葉を発する事が出来ない沈黙の間が過ぎると、タイガが言葉を発した。
「つまり、連中はこの“NJ”を宇宙や地球上にばら撒いて、MSを使って独立を果たそうという事か」
「許されませんぞ! そんな事は!」
武官の一人が怒りの声を上げる。
「戦争で死ぬのは兵士だけであるべきです!
後方の民間人を目標にするなど許される事ではありません!」
タイガはそれに苦り切りながら言葉を返した。
「連中にとっては民間人を攻撃しているという意識はないんだろうな。
何しろこいつは火を噴くわけでもなければ鉛弾を吐き出すわけでもない。
連中にしてみれば“民間人が勝手に死んだだけ”だ」
武官は絶句した。
「それに……」
言葉を続けようとしたタイガに、武官が思わず訊き返す。
「それに?」
「連中にとってナチュラルは人間ではないのさ。
戦争中の相手ならなおさらだ」
武官達は今度こそ絶句した。
否定したい。しかし、それは誰も否定できない冷酷な現実だった。
「何とかしなければな……」
タイガの苦しげな声が部屋に響いた。
※あとがきです。
読了ありがとうございます。
内容は全て本作における創作ですので原作との差異がありましても、
なにとぞご容赦ください。
タイガ達がNJの事を知りました。
これが今後どのように影響して来るのか?
次回お楽しみください。