転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「ガンダム」で最も有名と言ってもいい人物の登場です。(名前だけですが)
拙い話ですがお楽しみください。
エリカ・シモンズは涙を流していた。
場所はオーブの自宅の寝室。
カーテンの隙間から朝日が差し込み、柔らかな光が部屋を満たしている。
世界中どこでも見られる、ごく普通の朝の光景。
しかしエリカは、その光景に胸を打たれ、止めどなく涙を流していた。
(ああ……自分の部屋で、朝日を浴びるまで寝ていられるなんて……なんて私は幸せなんだろう……)
――どうやらエリカの感動ポイントは、一般人とはかなりズレているらしい。
だが、それも無理はなかった。
一ヶ月ぶりに自宅に戻れば誰でもそうもなろうというものであった。
エリカはモルゲンレーテの技術責任者として、MS開発のほぼ全てに関わっていた。
• MS本体
• OS
• 武装
• ビーム兵装
• PS装甲
• その他諸々の新兵器開発
その結果、当然ながら時間は常に不足し、
二徹三徹は当たり前。
仮眠を取っただけで技術室に缶詰。
一ヶ月以上泊まり込みなど珍しくもなかった。
ブラック度は、転生前のタイガと良い勝負である。
違うのは――
エリカは「自分の意思で」やっており、
コーディネーターの体力がそれを可能にしていたことだ。
しかし、そんな無理が続くはずもない。
テムが「戦術開発室」の室長となり、技術者たちへ挨拶に回ったとき、
彼が目にしたのは――
ゾンビのようにふらふら歩き、虚ろな目で端末に向かうエリカの姿だった。
さすがに放置できず、テムは周囲に状況を確認した。
• エリカが到底一人で処理できない案件を抱えている
• 「自分がやった方が早い」と言って手放さない
• その結果、徹夜続きで技術室に泊まり込み
• もう一ヶ月近く自宅に帰っていない
……完全にアウトだった。
テムは即座に労働環境の改善に乗り出した。
まずエリカを仮眠室に叩き込み、強制的に休ませた。
最初は文句を言っていたが、数分で眠りに落ちた。
その間にテムは、エリカの抱えていた案件のうち
“エリカでなければできない仕事”以外をすべて他の技術者に割り振った。
本来、エリカが抱える必要のない仕事まで背負っていたのだから、時間が足りるはずがない。
アムロが「パイロットと発想の天才」なら、
テムは「技術者と組織管理の天才」だった。
• 個々の技術者の特性を見抜き
• 適切に役割を割り振り
• チームとして成果を最大化する
我の強い者、持論に固執する者、気弱な者、精密作業が得意な者、柔軟な発想を持つ者――
どんな人材でも、テムの手にかかれば一つのチームとして機能し、成果を上げた。
技術者としても、組織人としても間違いなく必要不可欠な貴重な人材である。
エリカが目覚めたとき、手元に仕事がほとんど残っていなかったのは、
ウズミが倒れた時のタイガの対処と同じだった。
「エリカにしかできない仕事」は山ほどある。
雑務に時間を奪われる余裕はオーブにはない。
こうしてエリカはようやく自宅に帰ることができ、
冒頭の「朝日に感動する」光景へとつながるのであった。
テムはOSやMS本体は他の技術者に任せ、
エリカには最難関のPS装甲を担当させた。
アストレイ開発で最も難航していた部分であり、
最悪の場合は大西洋連邦からパテント購入も検討されていた。
しかしエリカは――
担当してからわずか一週間で試作品を完成させた。
• 他の仕事がなくPS装甲だけに集中できた
• 十分な休息でコンディションが万全
• テムの管理で今後の負担も軽減され、テンションが上がっていた
様々な要因が重なり、エリカの才能は爆発した。
さらにはまだ実用化に至っていなかった「MSのモノフェーズによるビームシールド」の
実現一歩手前までやってのけた。
これは本来であれば未来でユーラシア連邦のハイペリオンに搭載されたアルミューレ・リュミエールや、
オーブが開発するエクリプス・ガンダムで実現されたものだった。
その姿を見て、テムは冷や汗を流した。
(同じだ……彼女は恩師と同じ人間だ)
テムの恩師は天才だった。
• 常人には思いつかない理論を次々と発表
• しかも実現可能性が高い
• 技術者なら「一片でも関わりたい」と思わせる夢の理論
その反面、私生活は壊滅的で、
テムや教え子たちは彼の身の回りの世話やスポンサー交渉、
さらに「これが技術者の仕事か!」と言いたくなるような事までやってきた。
テムが組織運営を学んだのは、この時の経験が大きい。
(彼女なら恩師の理論を実現できるかもしれない……
いや、実現できなくても、その歩みを大きく進められるはずだ)
エリカは「全力で打ち込めるもの」を探している。
多数の案件を抱え込むのは、その空白を誤魔化すためだ。
ならば――
本物の“夢”を与えればいい。
テムは一つの論文をエリカに渡した。
「これは?」
「私の恩師の遺した論文だ。
私や他の者が必死に実現しようとしているが、中々進まない。
君なら、この歩みを何倍にもできるかもしれない。やってみないかね?」
論文の表紙にはこう書かれていた。
「核融合炉実現の可能性について」
著者:トレノフ・Y・ミノフスキー
この瞬間から――
“人類の夢”である核融合炉が実用化される未来が動き始めた。
そしてプラントとの戦争が終結して数十年後、その「夢」は実現される事になる。
“人類の夢”が現実になる第一歩だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
「この人がいなければガンダムの世界は成立しなかった」と言っても過言ではない
人物の登場でした。
テムやエリカが彼の後を継ぎ、CEで「人類の夢」を実現させる事になります。
次回お楽しみください。