転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
本編とは少々毛色の変わった話になります。
一部表現にご不快になる方もいらっしゃるかと思いますが、創作上の出来事ですのでご容赦ください。
閑話1 未来予想図
それは最初は下世話な噂話だった。
プラントから来たコーディネーターがナチュラルを妊娠させて捨てたという、どこにでもあるありふれた話だった。
しかも男は別にコーディネーターの彼女がいて、ナチュラルの彼女とは遊びだったらしい。
さらに「俺の子供はコーディネーターだけだ! ナチュラルの方が妊娠しやすいからって、それで俺の彼女に勝ったとでも言いたいのかよ!」と吐き捨ててプラントに帰ってしまったそうだ。
妊娠したナチュラルの彼女は耐えきれなくなったのか、学園から姿を消した。
「酷い話だねえ?」
アズラエルが顔をしかめながら言った。
「お前も身に覚えがあるんじゃないか?」
「バカな事言うなよ。僕は清く正しい男女交際を心がけているからね? そんなヘマはしないよ」
「どうだかな」
容姿に磨きがかかったアズラエルは、毎週というか毎日違う女の子に告白されている。
まあ、朝まで自宅に帰らない事もままあるので信用度はゼロだ。
しかし特にトラブルになったという話は聞かないので、放っておいても問題ないか。
タイガはそう判断して意識を切り替えた。
噂は酷い話ではあるが珍しい話でもない。
そこでふと気にかかった。
(ナチュラルの方が妊娠しやすい? つまりコーディネーターは妊娠しにくい?
閉鎖されたプラントという環境でナチュラルがいなくなってコーディネーターだけになったら人口はどうなる?)
タイガは立ち上がると歩き出した。
「どこへ行くんだい?」
「図書館だ。ちょっと調べたい事がある」
――――
「何を調べるんだい?」
「何でお前まで付いてくるんだ?」
図書館には、なぜかアズラエルまで一緒に着いてきていた。
「プラントの人口の推移の確認だ。特に世代ごとの出生率を確認したい」
「世代ごとの? 何の意味があるんだい?」
「それを調べるのさ」
「まあ良いけど?」
勝手に着いてきてぶつぶつ文句を言うアズラエルと一緒に、図書館で過去に公表されたプラントの人口推移を集計する。
「これは……」
「まさかこれ程とは……」
結果は簡単に出た。
プラントが公表している人口、世代、出生数、婚姻数等を集計しただけで、結果は一目瞭然だった。
「配偶者がナチュラルの場合の出生率には問題ないね」
「しかし配偶者が第2世代同士だった場合は半分以下。
母数が少ないから断言出来ないが、恐らく第3世代同士だったらさらにその半分、下手をすればさらにその半分以下しか無いぞ」
プラントはコーディネーターで構成されている。
しかしその中で第2世代、第3世代と世代が進んでいった結果は出生率の低下――
つまりいずれ人口を維持できなくなる。
プラントは第1世代のコーディネーターを受け入れ続けなければ人口を維持できずに滅ぶ事が、プラント自身が公表しているデータで証明された。
「これって奴らは理解しているのかねえ?」
「理解していないだろうな。理解していたら文字通り自分たちを支えてくれるナチュラルにあんな仕打ちをするはずがない」
そう、プラントの人口を支えているのは第1世代――
つまり新しく生まれてくるコーディネーターなのだ。
そして第1世代のコーディネーターが産まれる為にはナチュラルが必要。
「これは奴らは放っておいても勝手に滅びるんじゃないかねえ?」
「いくら何でもそんな事はない、と言いたい所だが……
コーディネーター以外を拒否している連中なら、有り得ないとは言い切れないな」
苦笑してタイガは言葉を続ける。
「少なくともこのデータはプラントの連中が公表しているものだ。連中自身もこれは知っているはずだ」
「でも何の対策も取られていないという事かい?」
「そうだな。恐らくこのデータを見ても『自分たちは大丈夫だ!』とか『こんなものは何かの間違いだ!』とでも言って目を逸らしているんじゃないのか?
そうとでも思わなければ説明出来ない」
アズラエルはデータを見ながらポツリと呟いた。
「僕はね、奴らの事はいけ好かなくても凄い奴らだとは思っていたんだよ。
僕たちには出来ない事を簡単にやってのける凄い連中だと」
タイガは無言のままアズラエルの呟きを聞いていた。
「でもねえ、こんな子供でも理解出来るような事すら理解しない、理解出来ない連中相手に
今まであれだけ必死になっていたなんて、まるで僕がバカみたいじゃないか!」
アズラエルが、自分が今まで相手にしていたのは自分で勝手に巨大化した幻影だったと気付いた瞬間だった。
「ああ、もう、今まで真面目にこんな連中の相手をしていたのかと思うと馬鹿馬鹿しいよ!」
「今日は飲みに行くか?」
「ああ、思いっきり飲んでやる!」
「よし、お前の奢りだな!」
「何でだよ! と言いたいけど今日は気分が良いんだ! 奢ってあげるよ!」
「そうこなくちゃ」
ワイワイと騒ぎながら、タイガとアズラエルは夜の街に消えていった。
幼い頃からアズラエルが抱えていた心の重荷が消え去った瞬間だった。
――――
「何だこれは〜〜〜!」
「何って、この間飲んだ請求書」
「お前奢りだって言っただろう?」
「言ったけど行き先は僕が決めて良いって言っただろう?」
「ああ」
「だから僕の家が経営している店に案内したんじゃないか? そこならツケも効くし」
「だったら……」
「そこで僕の店を出てから止せばいいのに、2次会だ〜3次会だ〜って散々飲みまくったじゃない?」
「覚えていない……」
「さすがの僕もそこまでは付き合い切れないからねえ?
代わりに払っておいたからよろしく頼むよ?」
「……何でこうなった?」
自業自得という言葉の意味を噛み締めるタイガだった。
アズラエルの心の重荷が解放された話でした。
「こんなのあのキャラじゃない!」
「こんなのはSEEDじゃない!」
というお怒りもあるかとは思いますがどうかご容赦ください。
さて、ちょっと本編より閑話が続きます。