転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「どうだね?」
「ええ、交戦データとしては申し分ないですね」
テムは技術者たちと共に、アムロの戦闘データを確認していた。
「索敵、追撃、反転、損傷、帰還……
全てのデータが揃っています。
これは今後の大きな参考になりますよ」
「特に帰還後の修理手順を“実際に確認できた”のは大きいです」
「どの部品をどの順番で交換すればいいのか、
どの位置に配置すればスムーズに作業できるのか……
実地で確認できたのは非常に大きいですね」
「ダメージを受けた場合、どこまで交換すべきか。
部品交換より手足を丸ごと換装した方が早いケースはどれか。
その基準を得られたのは大きな収穫です」
「想定した手順で問題なく回ったか」
テムが頷くと、別の技術者が資料をめくりながら言った。
「それとビームスプレーガンですが――
出来るだけ連発可能な数を増やしましたが、ジン相手なら十分な威力です。
しかしアストレイと同程度のPS装甲相手では、一撃で撃破とはいきません」
「どれくらいだ?」
「一発でフェイズダウン危険域、
二発目でフェイズダウン、
三発目でようやく撃破……といったところです。
相手のPS装甲が強力なら、さらに集中させる必要があります。
ガンダムのビームライフルクラスであれば問題ありませんが、
その場合当然ですがアストレイでは連発数が減ります」
「ビームサーベルも同様ですね。
出力を落として使用時間を延ばした現状でも、ジン相手なら十分すぎる威力です。
しかしアストレイ級のPS装甲相手では、一撃での撃破は難しいでしょう」
「PS装甲のMSはそう簡単に量産できないだろう?
主敵はあくまでジンのはずだ」
「ですが、このままではPS装甲MSが出てきた時にアストレイでは対応できません」
「確かに……。
非常時にはビームライフル並みの威力を出せるようにし、
ビームサーベルも出力切り替えを可能にすべきだな」
「一度引き金を引けば三点射できるようにすればどうでしょう?
威力を上げすぎて連発数が減れば、新兵の生存率に影響します」
「なるほど」
「現状、アストレイの主な相手はジンです。
プラントが今あるジンを全てPS装甲MSに更新できるとは思えません。
PS装甲MSが主流になるのはもっと先でしょう。
過剰な威力は不要かと」
その判断は“現状”では正しかった。
ジンの相手を想定しているのであればビーム兵器の威力は最低限で十分だった。
しかしテムの判断は異なっていた
「だが、出てきてから対応したのでは遅い。
ビームスプレーガンの三点射、
ビームライフル級の威力切り替え、
ビームサーベルの出力切り替え――
これらは搭載決定だ。
“いざという時”に対応できるのは大きい」
このテムの判断は、後に的中する。
本来ジンを相手に想定していたアストレイの“公式な初陣”は、
ヘリオポリスで奪取された PS装甲搭載のGシリーズ となる。
もしこの時のテムの判断がなければ、
オーブはヘリオポリスでザフト相手にまともな抵抗すらできなかっただろう。
この時は過剰と思われた“万一”に備えたテムの判断が、未来のオーブを救う事になる。
---
「しかし、ひとつ気になる点が」
「ん? 何かね?」
「アムロ三尉がジンの潜伏を察知した位置なんですが……
センサーの探知範囲外なんです」
「何?」
「レーダーにも反応しないはずの位置です。
なぜアムロ三尉が察知できたのか、理由がわからないのです」
「本人は何と言っている?」
「『嫌な予感がしただけ』と」
「う〜む……?」
テムは首をひねった。
(単に勘が良いだけか?
いや、昔からあの子にそんな兆候はなかった。
訓練の成果か? しかしそんな兆候もない。
他に考えられるのは……)
その瞬間、室長就任時にタイガから渡された書物のタイトルが脳裏に浮かぶ。
ニュータイプ概論。
(ニュータイプ……?
息子が? まさか。
偶然だ。そんな事があるはずがない)
テムは頭を振り、浮かんだ考えを振り払った。
---
「よし、そろそろ海賊掃討も完了するだろう。
完了次第、オーブへ帰還だ」
「了解です!」
「やっと帰れますねえ」
「おいおい、気を抜くな。
帰ってからが本番だぞ」
「すみません!」
「いや、気持ちはわかる。
だが最後までしっかり頼む」
「了解です!」
賑やかに騒ぐ技術者たちの声を聞きながら、
テムはふと胸の奥に重いものを感じた。
(ニュータイプ……
それが息子に幸せをもたらすものであれば良いのだが。
せめてアムロには平穏な道を歩んでほしい……)
(……ニュータイプ概論。
帰ったら、もう少しちゃんと目を通してみるか)
不穏な予感を抱えながら、テムはただ息子の平穏を願った。
しかしその願いは叶わず――
テムの感じた予感は、後に的中することになる。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
ビーム兵器もPS装甲も開発されたばかり。
後日では当たり前のような威力や防御力の描写には、それに至るまでに手探りで進めて行った
技術者の歩みがあったのでは?
というのが本話作成のきっかけになります。
さて、次回は本作における最大規模の原作改変が発生します。
次回お楽しみください。