転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。

本作最大規模の原作改変の発生です。

未来がどのように変わっていくのか?

お楽しみください。





回天編
第52話 青き清浄な世界のために


 

 

 

これは、ある日のタイガとアズラエルの秘匿回線での会話である。

 

「ああ、どうしたもんかねえ?」

 

「過激派の連中か?」

 

「そうだよ! ちょっとガス抜きしておとなしくなったと思ったのに、

また厄介事を起こそうとするんだから! やってられないよ!」

 

「相変わらず大変だな」

 

「全くだよ! 今、目の前のコーディネーターを殺すより、

明日ナチュラルを助ける方がいいってなんで理解できないのかな!」

 

「それを知っているのは俺達だけだ。正確には教えても信じてもらえない。

俺達の知識は単なる予想で、現時点では何も起こっていないんだからな」

 

「起こってからじゃ遅いよね?」

 

「それが一番の問題点だな」

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「ねえタイガ? 君にもらったNJのデータ使ってもいいかな?」

 

「使い方によるが、どうするんだ?」

 

「えっと、こういう使い方はどうかなあと思ってね?」

 

アズラエルの話を聞いたタイガは絶句した。

 

「いいのか? それはお前には何のメリットもないだろう?」

 

「メリットならあるさ。生き残った、助けられた人達の“絶対的な感謝”が得られる。

その後、僕達が何をやっても助けられた人達は僕を支持する。例え奴らに核を打ち込んでもね」

 

それは確かにそうだった。

自身や家族が理不尽に命の危機に陥り、

それを何の見返りも求めず助けられたらどうなるか――

タイガは身をもって知っていた。

 

「お前が理解しているなら俺は何も言わん。だが敵は奴らだけとは限らない。

お前の案に反発する連中は必ず存在するはずだ」

 

「分かってるよ。それにこれは連中を“選別”するいい機会になるかもしれないからね?

ちょっとしたデメリットに目を瞑ってでもやる価値はあるよ」

 

「デメリットね? 自分の命がかかっている事は“デメリット”という程度のものじゃないだろう?

……まあいい。お前が納得しているならやってみろ。お前ならできるはずだ」

 

「ああ、吉報を待っていてくれよ!」

 

通信が切れた暗い画面を見つめながら、タイガは呟いた。

 

「俺の知っている世界とは全く違ってきたな」

 

オーブの政体を変更したにもかかわらず、プラントとの開戦は止められそうにない。

世界の歴史の流れは止められない――半ば諦めていた。

しかし、親友であれば止められなくても“変える”事はできるかもしれない。

タイガは改めてアズラエルの親友である事を誇りに思った。

もちろん、それを本人の前で表に出す事は決してなかったが。

 

アズラエルは世界中のブルーコスモス支部長を集めた。

 

「諸君、空の上の宇宙人どもが騒ぎを起こしている事は知っているだろう?

これに対する対策を提案したい!」

 

「提案ですか?」

 

「ああ。今後、僕らが大手を振って連中を排斥しても誰も何も言わなくなる対策だ!」

 

「おお、さすが盟主!」

 

「素晴らしい!」

 

「それはいったいどのようなものですか?」

 

「まあ、待ちたまえ。まずは配布した資料に目を通してみたまえ」

 

支部長達は資料に目を通し、困惑した。

 

「世界各地に超電導送電システムの敷設?」

 

「寒冷地や僻地への輸送体制の強化?」

 

「世界規模の通信設備の障害対策?」

 

「ただのインフラ整備計画では?」

 

「盟主? これのどこがコーディネーター排斥に繋がるのですか?」

 

「まあ、待ちたまえ。これから開示する情報は一部の国でしか知られていない。

しかし、これから起こる事は“確実”だと判断できる事実だ」

 

「どういう事ですかな?」

 

「これを見たまえ」

 

アズラエルが開示したのは、オーブが得たNJの情報だった。

 

「NJ?」

 

「これが数千? 数万単位で地球に?」

 

「こんな暴挙を許しておくわけにはいきません!

直ぐにでもあの連中を宇宙から駆除しなければ!」

 

「どうするつもりだい?」

 

「決まっています! 核でも使って一気に滅ぼしてやればいい!」

 

「それは許さないよ」

 

「なぜです盟主! 連中を放っておけば何千万、

下手をすれば億のナチュラルが死ぬのですよ!」

 

「やるなら“全滅”させなさい」

 

「はあ?」

 

「全滅させる事ができないなら許しません。

しかし全滅させられるなら許可します」

 

そのアズラエルの冷たい口調とまるで予想していなかった答えに男は絶句した。

アズラエルは淡々と続ける。

 

「一発や二発核を撃ち込んだところで連中は全滅しません。

むしろ“被害者”を名乗って何でもやるでしょう。

それこそこのNJを人口密集地に集中して落とすとかね」

 

その光景を想像し、支部長は震えた。

 

「そんな事になれば……」

 

「インフラの破壊、情報の寸断、物流の停止、病院の非常電源すら止まる。

プラントとは関係のない一般市民がです」

 

「盟主! それが分かっているなら!」

 

「このNJを防ぐ手段は存在しません。

数千数万のこれらをすべて撃墜する事は不可能です。

ひとつでも落ちたら社会が崩壊します。

そしてプラントは既にこれを大量生産していると思われます。

MSを見ても奴らがNJの散布を前提に独立を目論んでいるのは間違いありません。

奴らがこれを使わない理由がありません」

 

「……」

 

「現時点で止めるなら、プラント全てに全面核攻撃を仕掛けて全滅させるしかない。

それが出来ますか?」

 

そんな事が出来るわけがない。

 

支部長は黙り込んだ。

 

「だからこの計画です。連中のNJで崩壊したインフラ・物流・情報の“代替”を用意する。

これで被災したナチュラルを助ける」

 

アズラエルはあえて地球上のコーディネーターについては触れなかった。

 

「それに何のメリットが?」

 

「助けられた人達はどう思いますかね?」

 

「それは……」

 

「この情報は一部の国には共有されていますが、対策を実行している国は殆どありません。

唯の推測ですから当然ですね。

つまり国はあてにならない。

しかし私達が手を差し伸べたら助けられた人達はどう思うでしょうか?

自分達を助けるべき国が何もしてくれないのに、

見返りを求めず助けてくれた相手の事をどう思うでしょうか?」

 

「・・・」

 

「国は何もしてくれない。だが我々は助ける。

さて、民意はどちらを支持するでしょう?」

 

支部長達は息を呑んだ。

アズラエルは微笑む。

 

「それこそ、後で連中の住処を全て核の炎で焼いても、

反対する人はいなんじゃないですかねえ?」

 

背筋が凍った。

 

盟主の目的は連中を駆除する大義名分を得る事だ!

しかも推測通りに進めば世界中の誰も反対しなくなる!

 

「しかし我々が大っぴらにやるわけには……」

 

「そうですな。ブルーコスモスの名前では都合が悪いですな」

 

「何を言っているんです? ブルーコスモスの名前を前面に出しなさい!

いいアピールのチャンスですよ!」

 

「盟主?」

 

「我々ブルーコスモスの理念を忘れたのですか!

“青き清浄な世界のために”――でしょう!」

 

アズラエルは続けた。

 

「我々ブルーコスモスは当初の理念に立ち返り、コーディネーター迫害をやめ、

環境保護活動の一環としてインフラ整備に全力を尽くす事にしたんです。

その結果、災害に遭った人を助けるのは当然です。

たまたま「もしもの時の備え」が役に立つのは当たり前の事ですからね?

国が何もしない中、助けてくれたのは我々ブルーコスモス。

さて、民意はどちらを支持しますかね?」

 

完璧だった。

多少間引いたところでコーディネーターは根絶できない。

だがこの策が成功すれば――

民意によって絶滅させる事ができる。誰にも非難されずに。

 

「いいですか? 目の前のコーディネーターなんか放っておいて準備に注力しなさい。

注力すればするほど、我々ブルーコスモスへの支持は強固になります。

今はテロ組織と同一視されている我々が、“復讐の女神”(ネメシス)として

世界中から歓呼で迎えられるのです。

いいですね!

“青き清浄な世界のために”!」

 

「「「「「「“青き清浄な世界のために”!!」」」」」

 

支部長達は一斉に声を揃えた。

 

この日を境にブルーコスモスのテロは激減した。

代わりにアズラエル財閥主導の世界規模インフラ整備が開始された。

世間はブルーコスモスの変心に不信感を抱いたが、

その裏にある意図を知る者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 







※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

本作最大規模の原作改変でした。

アズラエルが事前にNJの対策を立てた事で、
ブルーコスモスは原作とはかなり違った立場になります。

これが今後の展開にどのような影響をもたらすのか?

プラントの、オーブの運命は?

次回お楽しみください。

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