転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
「う〜ん。ここがアメノミハシラかあ?」
タイガは初めての宇宙に子供のように目を輝かせながら周囲を見渡し、
その後は窓の外の宇宙空間に没頭していた。
子供のころから――いや、前世のころから夢に見た宇宙。
自分はいま、その場にいる。
感動が全身を駆け巡る。
そしてもう一つ、心の底から湧き上がる想い。
(俺は今宇宙にいる!これが第一歩だ!
いずれ太陽系を超え!銀河系を超え!宇宙の果てへ!!!)
壮大な夢である。
(そして俺のクリアデータをきっとこの手に!!!)
……君、まだ諦めてなかったの?
……いい加減諦めたら?
「人間諦めたらそこでおしまいなんだよ!」
……無駄なんじゃない?
壮大でもなんでもない、超個人的で矮小な夢だった。
初めての宇宙ではしゃぎまわるタイガは目立っていた。
もっとも人目を引いていたのは傍に寄り添う美女達である事も否定できなかったが。
「カルア様、あれよろしんですか?」
アリサが隣にいる美女に尋ねる。
抜群のスタイルのアリサにも勝るとも劣らない美女だった。
母親としての包容力さえも身に着けたその姿はことさら周囲の目を引き付けていた。
「まあ、しばらくの間放っておきましょう。たまには息抜きも必要でしょうし」
地上に残した我が子に会いたいという思いを胸の奥にしまい込んで、
カルアは主であり我が子の父親である男の安全に気を配った。
「タイガ様、はしゃいじゃって」
「まるで子供みたい」
「でも気持ちはわかりますよね。オーブから外にはめったに出られませんからね」
女性達はうんうんと頷いた。
出産後ダイエットに成功したカルアはタイガに同行していた。
カルアは「これで今までの苦労が報われた!」と喜んでいたものの、
リバウンドによって元に戻ってしまうのはこの3ヶ月後であった。
アリサのカルアへの監督がさらに厳しくなったのは言うまでもない。
CE69 ―― 交渉の場においてプラントは理事国に対し、
• 完全自治権
• 対等貿易
を要求。
受け入れられなければ資源輸出を停止すると発表した。
交渉はこじれ、第三者オブザーバーを交えての協議が行われる事になり、
その一人にタイガが選ばれた。
もちろん偶然ではない。
タイガがプラントに真正面から喧嘩を売るための準備だった。
アメノミハシラから移動したタイガ達は協議の場に到着していた。
そしてオブザーバーを交えて開始された協議においても交渉は平行線のまま進まず、
プラント代表は延々と演説を続けていた。
その主張を要約すると
• 「コーディネーターはいかに優れているか」
• 「ナチュラルはいかに劣っているか」
• 「プラントは哀れな被害者だ」
• 「独立を認めろ」
というものだった。
そして最後にこう言い放つ。
「迫害された我々コーディネーターに、安住の地を得られるよう協力していただきたい!」
その目は明らかに言っていた。
「劣等種のナチュラルは黙って従え」と。
プラント代表がオブザーバーを見渡すと――
「ぐお〜、ぐお〜、ぐお〜」
タイガがヌード雑誌を顔にかぶせ、
足を机に投げ出して堂々と居眠りしていた。
プラント代表は青筋を浮かべて怒鳴る。
「貴様っ、人の話を聞いているのか!」
理事国の人間は顔を顰めた。
タイガは正式なオブザーバーであり、
オーブ“王家”扱いのアスハ家の三男である。
その人物に「貴様」呼ばわり――
外交的には致命的な暴言だった。
カルア達が鋭い視線を向ける。
「誰に向かって口をきいているのかしら、この下郎は」
「本来なら声をかける事すら許されないお方よ?」
「プラントの程度がよくわかりますね」
事実である。
タイガ本人が気さくで堅苦しい事を嫌うのであまり問題にはされていないが、
もはや実質的にアスハ家は「王家」扱いをされていた。
タイガはそこの3男なのだ。
ただのコーディネーターでしかないプラントの代表とは雲泥の違いがあった。
ここで謝罪でもしていればまだ良かった。
しかしプラント代表は言い放った。
「王家だか首長家だか知らんが、下等なナチュラル如きが偉そうにするな!
お前達は我々の言う事に黙って従っていればいいのだ!」
後に多くの者が語る。
「この瞬間、オーブとプラントの敵対は決定した」と。
その言葉を聞いたカルア達は怒気を隠そうともせず、プラント代表の男に詰め寄ろうとした。
その時――
「まあ、待て」
タイガが止めた。
「聞いていたからこそ、あまりにも退屈な寝言としか思えなかったのだがな?
おい、そこのお前。今面白い事を言っていたな?プラントはコーディネーターのものだとか?」
「それ以外に何がある!
プラントはジョージ・グレンが我々新人類であるコーディネーターの為に設計してくれたものだ!
それを実際に作り上げたのも我々コーディネーターだ!
プラントは我々コーディネーターの約束の地だ!」
「約束の地、新人類ねえ?ジョージ・グレンがいつお前達を“新人類”などと言った?」
「何!?」
「ジョージ・グレンがいつコーディネーターを“新人類”などと言った?
ジョージ・グレンはそんな事は一言も言っていない」
「ふざけるな!コーディネーターが“新人類”である事はジョージ・グレンによって証明されているではないか!」
「証明ね?それではどこでジョージ・グレンがコーディネーターを“新人類”と言っているのか
証明してもらおうか?」
そう言ってタイガが再生したのはあまりにも有名な、ジョージ・グレンの全人類に向けての“告白”のメッセージであった。
「僕は、僕の秘密を今明かそう。
僕は人の自然そのままにナチュラルにこの世界に生まれた者ではない。
僕は受精卵の段階で人為的な遺伝子操作を受けて生まれたもの。
その詳細な技術のマニュアルを世界中のネットワークに送る」
「・・・今この宇宙空間から地球を見ながら、僕は改めて思う。
僕はこの母なる星と、未知の闇が広がる広大な宇宙との架け橋。
そして、人の今と未来の間に立つ者。
調整者、コーディネイター。
このようにあるものなのだと。
僕に続いてくれる者が居てくれることを切に願う」
再生が終わっても会場は沈黙に包まれていた。
プラント代表の男の顔はこわばり、口を何度もパクパクと開き、声にならない声を何とか絞り出そうとしていた。
「さて、俺にはどこでジョージ・グレンがコーディネーターを“新人類”と言っているのか聞こえなかったんだが?
コーディネーターのお前の耳でなら聞き取れていたのかな?
それはどこだ?」
「な、な、な」
プラント代表の男は意味のない言葉を繰り返す事しか出来なかった。
「ジョージ・グレンはコーディネーターを“新人類”などとは一言も言っていない。
むしろ調整者、コーディネーターとは“人の今と未来の間に立つ者”だと言っている。
つまりお前の言う“新人類”は別に存在し、コーディネーターは本物の“新人類”が現れるまでの間の只の繋ぎだ。
コーディネーターは只の繋ぎの分際で、大きな顔をして“新人類”を自称しているコソ泥みたいなものだ」
「な、な、な、なんだとう!誇り高い我々がコソ泥だと!」
「ジョージ・グレンでさえ自分を“新人類”などと主張していないのに、
お前たちは本物の“新人類”が現れないのを良い事に自分達を“新人類”と自称している。
コソ泥以外にどう言えと?」
(それにもう既に“新人類”は存在している。お前たちコーディネーターなど足元にも及ばない
「ニュータイプ」という“本物の新人類”がな)
そう胸の中で呟いてタイガは侮蔑の視線をプラント代表の男に向けた。
プラント代表の男は怒りのあまり言葉も出なくなっていた。
「そもそもプラントがコーディネーターの「約束の地」だと?
どういう“法的根拠”でそんな主張ができる?」
「なんだと!」
タイガは淡々と続ける。
「理事国が工場を作ろうとし、
ジョージ・グレンは理事国の依頼で設計し、
理事国に雇われたコーディネーターが建設した。
出資したのは理事国だ。
なら完成した工場は理事国のものだろう?」
「……!」
「お前の頭の中では施工主の依頼で
家を建てたら、その家は大工のものになるのか?」
男は再度怒りで言葉を失った。
この男は自分達の約束の地を、コーディネーターの安住の地を、卑しい金銭と同列に語ろうとしたのだ!
許すべきではない!
「プラントが我々のものなのは絶対の真理だ!」
「その“真理”とやらを押し通すために独立戦争か?
お前達が劣等種と蔑むナチュラルと何が違う?」
「なっ!」
「戦争になれば人が死ぬぞ?
理事国だけでなくプラントの人間もな。
人口の少ない閉鎖空間のプラントでは逃げ場がない。
軍人が死ねばプラントは終わりだ」
「馬鹿め!
お前たち低俗なナチュラルと一緒にするな!
我々ザフトは義勇兵だ!
一般市民全てがザフトの人員だ!
独立のためなら全市民が協力する!
お前たちナチュラルのように軍人がいなくなる事などありえんわ!!」
「ほう?
つまりプラントの一般市民は“全員義勇兵”だと?」
「その通りだ!我々プラントの市民はお前達低俗なナチュラルとは異なり、
強い独立の意思と信念を持ちそれは市民の全てが持っているのだ!」
タイガは議事録が記録されている事を確認し、言い放つ。
「そうか……。
カルア、大西洋連邦に連絡しておけ。
『プラントの全市民は義勇兵であると確認された。
戦闘開始後のプラントには戦闘員しか存在せず、
一般市民は存在しないので、
戦闘員排除のため核の使用を進言する』とな」
会場が凍りついた。
「か、核だと!?貴様あ、プラントには罪のない女子供が――!」
「お前が言ったんだ。“全市民がザフトの人員”とな。どこで女子供が除外された?」
タイガは冷たく続ける。
「戦闘員しかいないなら、戦闘員を排除する為に効率的な方法を選ぶのは当然だ」
喜べ、お前の言葉でプラントの一般市民が核の業火に焼かれる事が決定したぞ?
歴史に名が残るな?というタイガの言葉にプラント代表の男は顔を青ざめさせた。
「う、あ、う、」
意味のない言葉を発しながら顔色を赤くしたり青くしている男に対してタイガは
「まあ、交渉で熱くなって言いすぎたのなら仕方ないがな」
と声をかけた。
男は縋るように叫ぶ。
「な、ならばそのようにしろ!プラントが核に焼かれる事などあってはならない!早くしろ!」
「口のきき方がなっていないな?それが人にものを頼む態度か?」
タイガは静かに言う。
「人に真剣に頼む時は、頭を地面に擦り付けるものだそうだ。それでこそ誠意が伝わる」
男の前に立ち、告げる。
「選べ。ここで謝罪して“言いすぎだった”とするか?
それともプラントを核の炎で焼くか?どちらでもいいぞ」
「選べ」
その声は静かだが、会場全体を支配した。
男は左右を見渡すが、誰も視線を合わせようとしない。
荒い呼吸を繰り返し、ダラダラと脂汗を流しながら男は跪き、頭を下げ、声を絞り出す。
「私の発言は言いすぎでした……許してください……お願いします……」
「足りんな」
「なっ」
タイガは男の頭に足を乗せ、そのまま床に踏みつけた。
「ぐっ!」
「誠心誠意謝罪するなら、この程度はやるものだ」
“良かったな、謝罪の仕方を学べて”
と告げられ、男は顔を真っ赤にしてただ耐えるしかなかった。
翌日の朝刊には、
プラント代表の頭を踏みつけるタイガの写真が一面を飾った。
――オーブの虎
この瞬間、プラントにもタイガの「オーブの虎」という異名が伝わった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
種本編ではジョージ・グレンはコーディネーターを“新人類”とは言っていません。
それなのにコーディネーターを“新人類”と呼ぶのはおかしいのでは?
“新人類” と呼ぶのにふさわしいのはUCのNTではないか?
という疑問が本作作成のきっかけでした。
プラントは自分の発言で自爆しましたが、これだけでは終わりません。
自分たちの主張のさらなる矛盾が突き付けられる事になります。
次回お楽しみください。