転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
翌日、プラントの代表者は別の人物に変更されていた。
「おや? あの男はどうした?」
新しく来たプラント代表に尋ねると、
「体調を崩しまして」
との返答だった。
「ふ〜ん? まあ、外交なんてやっていると、
自分の言葉一つで国が亡ぶかどうかなんて事もあるだろうからな。
プレッシャーも相当だろう。
精々お大事にな。
あいつは何という名前だったかな?
まあ覚える必要もない奴だったから別にどうでもいいか」
(どの口が言っている! 名前も覚えていないだと?
こいつにとってプラントを核で焼く事はその程度の価値しかないのか!)
新しい代表は、タイガに対して怒りと恐れを抱いた。
「それで昨日の続きだが、改めて確認したい」
「昨日の……ですか?」
代表は警戒心を露わにする。
「核は関係ないぞ? あれはあいつが自爆した結果だ。こちらから持ち出すつもりはない」
「ありがとうございます」
とはいえ、外交官として相手の言葉を鵜呑みにするわけにはいかない。
男は気を引き締めた。
「昨日の奴にも言ったが、プラントを独立させたいのなら、その法的根拠を示してほしい」
「法的根拠ですか?」
「我々はオブザーバーだ。
理事国の主張に不備があれば指摘するし、プラントの主張に不備があれば指摘する。
どちらかに肩入れする事はしない。あくまで参考意見を述べるだけだ」
「なるほど」
男は安堵した。
昨日の件でオーブが反プラントに回ったのではと疑っていたが、
“主張の正当性”で判断するならプラントに分がある――
そう信じていた。
議論が始まるまでは。
議論が進むにつれ、男の顔は蒼白になっていった。
「プラントの独立に正当性が無い……?」
「正確には、“独立のための対価”が支払われていない」
タイガは淡々と続ける。
「確かにプラントを設計したのはジョージ・グレンだ。
しかし彼は理事国の依頼で“工場”を設計しただけだ。
設計図の所有者は理事国だ。
実際にプラントを作ったのはコーディネーターだが、彼らは理事国が集めた労働者であり、
賃金が支払われている。
労働者が作った建築物の所有者は、当然理事国だ。
工場で働く労働者もコーディネーターだが、彼らにも理事国から賃金が支払われている。
つまり工場での生産物の所有者も理事国だ」
「コーディネーターはプラントを所有する対価を支払っていない。
これでは独立を認める事は出来ない」
「な、何かの間違いです! プラントは我々の安住の地で!」
「別にプラントはジョージ・グレンが哀れなコーディネーターの為に設計したものでもないし、
安住の地として神から与えられたものでもない。
ナチュラルが優生種のコーディネーター様に献上する為に作り上げたものでもない。
プラントを建設した資金を出したのは理事国なのだから、
プラントは理事国の物としか言えないだろう?」
「しかし!」
「何もない宇宙にいきなりプラントが発生するはずがない。
最初に作った存在がいる。それは誰だ?」
「……理事国です」
「宇宙に浮かぶプラントに人間が自然発生するはずがない。
人間を、コーディネーターを連れてきたのは誰だ?」
「理事国です……」
「宇宙に浮かぶプラントに製造機械が勝手に出てくるはずがない。用意したのは誰だ?」
「理事国です……」
「プラントに資本を投下し、製品を作らせたのは?」
「理事国です……」
「話を聞く限り、プラントの独立に正当性はない。
むしろ、どこにでもある“工場のストライキ”に近い」
「わ、我々の独立運動が俗なストライキだというのですか!」
(俗ね?コーディネーターの中では「正当な労働者の権利を主張する事」は俗なのかね。
しかも暴力を使ったのであれば言い訳などできないだろうに)
「「理事国が将来の利益を得る為に建設した工場を、暴力で占拠して要求を通そうとする」
ストライキとどこが違うのかね?」
「・・・」
「賃金を上げろ、労働環境を改善しろ――
君らの主張は極論すればそれと変わらん。
しかもそれだけでなく「占拠した工場は自分達のものだ!」と主張している。
認められるはずがない」
「し、しかし我々には独立という目標が!」
「正当性の無い要求を暴力で通そうというのは、強盗と変わらん。
“独立”という免罪符を掲げてもな」
タイガは冷たく言い放つ。
「“独立のためなら正当性など不要で暴力で解決する”というのであれば、
君らが劣等種と蔑むナチュラルと何が違う?」
「…………」
「せめて理事国から『かかった費用から将来の利益まで含めて対価を支払う』という形であれば、
独立も認められるのではないかな?」
「…………」
「理事国は何もない宇宙に莫大な資本を投下し、将来も継続的な利益を得る為に
プラントを建設したんだ。
それなのに『今までの費用と将来の利益を諦めて無償でプラントを譲れ』なんて言っても通るわけがない。
それぐらい理解できるだろう?」
「ハイ……」
「今の君らがやっているのはそれだ。
理事国に一方的な負担を押し付け、自分達の意見を通そうとしている。
それではこじれて当然だ。
せめて少しは譲歩しないと、まとまるものもまとまらないぞ」
「しかし……」
「後は、自分の意見を通すために“戦争”という暴力を使うしかなくなるぞ?」
「そ、それは……」
「どんな選択をしても、後悔しないようにな」
タイガをはじめとするオブザーバーの意見は一致した。
「プラント独立に正当性なし」
しかしこの意見はプラントでは徹底的に無視され、
あるいは
「ナチュラルによる独立妨害だ!」
として憎悪の対象となった。
この時、事実を知る者が口を開く事はなかった。
それが――
プラントの現状だった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
本編でもプラントの独立が肯定的に語られる事がありますが、
「それを作った理事国の立場は?」と疑問に思っていた事が本話作成のきっかけでした。
対価が支払われていなければ独立など認められないのは当然ではないでしょうか?
次回お楽しみください。