転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
宇宙世紀の二人のこの世界での出会いはCEそのものを変えていきます。
お楽しみください。
アムロとセイラが出会ってしばらくすると、
二人はいつの間にか“自然に”付き合うようになっていた。
どちらが告白したわけでもない。
気持ちを確かめ合ったわけでもない。
ただ――
気づけば互いが傍にいることが当たり前になっていた。
官舎を出るとき、セイラが荷物を渡し、
アムロは振り返りもせずそれを受け取る。
セイラがドアを開けようとすると、
アムロが先に開けて自然に先導する。
以心伝心。
まるで互いの考えが手に取るように分かる二人の姿に、
様子を見に来た者たちは驚きの声を上げた。
「なんて言うんですかねえ?熟年夫婦でもあそこまではいかないんじゃないですかねえ?」
「比翼連理って言葉が現実にあるなら、あの二人のことじゃないかしら?」
そんなふうに二人が絆を深めていく一方で、
セイラが深刻な顔をすることも増えていった。
ある日のこと。
「アムロ?」
「何だい?」
セイラはいつになく真剣な表情をしていた。
「これを読んでみて」
差し出されたのは一冊の本。
『ニュータイプ概論 ジオン・ズム・ダイクン』
「これがどうかしたの?」
「いいから読んでみて?」
不思議に思いながらも、アムロはページをめくった。
「どう思った?」
「ん〜? 何というか……不思議な本だなあってところかな?」
「不思議?」
「だって、なんとなく他人の考えてることが分かるとか、未来が予測できるなんて信じられないよ?」
セイラは静かに言った。
「……アムロ? これって私たちに当てはまると思わない?」
「え?」
「他人と共感し、意識を広げ、危険を予測して避ける……これって私たちのことじゃない?」
「あ……?」
アムロはセイラとの日々を思い返した。
お互いが次に何をしてほしいのか、ぼんやりと分かる。
周囲の状況を俯瞰し、自分の位置が自然と把握できる。
どの方向が危険か、直感が働く。
確かに――そうだった。
「でも僕は何の変哲もない男だよ? ニュータイプなんて訳の分からないものじゃ……」
「ニュータイプは訳の分からないものなんかじゃない! ちゃんと存在するのよ!」
「セイラ?」
セイラは深く息を吸い、言った。
「ごめんなさいアムロ。私の名前は本名じゃないの。
本当の名前は――アルテイシア。
アルテイシア・ソム・ダイクンというの」
「ダイクンって、それ……」
「ええ。私はその本を書いたジオン・ズム・ダイクンの娘なの」
セイラ――いや、アルテイシアは語り始めた。
母は愛人で、私は表立って父を“父”と呼ぶことはできなかった。
父は大好きだったが、難しい話ばかりしている人だと子供心に理解していた。
父が『ニュータイプ概論』を発表したとき、世間はそれを認めず、
アルテイシアも「嘘つきの娘」「ホラ吹きの娘」とからかわれた。
それでも信じていた。
「大好きな父が間違っているはずがない」
なぜなら――
アルテイシアと兄は、父の本に書かれた“力”を自分たちで実感していたからだ。
心が読めるわけではない。
だが、相手が何を望んでいるかは自然と分かる。
宇宙で自分の位置が分かるわけではない。
だが、広い場所でも迷うことはない。
未来が見えるわけではない。
だが、どこが危険かは直感で分かる。
兄も同じだった。
アルテイシアは父にそれを伝えた。
「父の言っていることは本当だ」
だがジオンは、
それを“子供達が自分を喜ばせようとしているだけ”と受け取り、信じようとしなかった。
オーブに来てからもそれは変わらず、アルテイシアは父と距離を置くようになり、
親類であるマス家の名を借りて“セイラ・マス”と名乗るようになった。
「……それで僕に、お父さんに会ってほしいと?」
「ええ。無理なことだって分かってる。あなたに頼むことじゃないのも分かってる。
でも……私じゃなく、他の人で証明できるなら……父の言っていることが正しかったと証明できるの」
そう言って頭を下げるセイラに、アムロは言葉を探した。
「そうだね。ニュータイプなんて訳の分からないもののために、
君のお父さんに会いに行くことはできないね」
「……そうね。変なことをお願いしてごめんなさい、アムロ」
セイラは寂しげに微笑んだ。
「でも……」
「??」
「君のお父さんに――
『君と付き合ってる男です!』
って挨拶に行くのは問題ないよね?」
「アムロ!」
「君のお父さんに殴られる覚悟はしておいた方がいいかなあ?」
涙に濡れたセイラの目は、
悪戯っぽく笑うアムロの顔をまともに見ることができなかった。
それは、机上の空論と思われていた“理論”が、
“現実”によって証明された日だった。
『ニュータイプ概論』が現実に確立されたことで、
後に 「コーディネーター優生説」 は急速に地球上から姿を消していく。
まさに――
新しい時代を作った出会いだった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
アムロとセイラの出会いはCEに蔓延していた「コーディネーター優生主義」を駆逐する事になります。
この二人が出会わなければジオンの「ニュータイプ概論」は立証されず、
コーディネーターの「新人類の自称」が否定される事もなく、CEが変わる事はありませんでした。
この二人の出会いによってCEがどのように変わっていくのか?
次回お楽しみください。