転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

95 / 171

※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





第75話 署名

 

 

「では今後の予定ですが――一旦アルテミスを目指すということで」

 

マリューの言葉に、ナタルとムウは頷いた。

しかし、トダカ一尉だけは難しい顔をしていた。

 

「トダカ一尉? 何か問題でも?」

 

マリューが尋ねると、トダカは静かに問い返した。

 

「いや……この艦の“船籍コード”は登録されているのか?」

 

「え?」

 

「船籍コードだ。それがなければ、この艦は“海賊船”と判断されても反論できない」

 

「そんな!」

 

「こんな大きな海賊船なんてありえないでしょ?」

 

ナタルの悲鳴とムウの呆れ声が響く。

だが相手がユーラシア連邦とアルテミスのガルシア司令官ならば――それは十分にあり得た。

 

「そこで、ひとつ提案したい」

 

「提案……ですか?」

 

「いったん“アルテミスに寄港するふり”をする」

 

「ふり、ですか?」

 

「アルテミスには、追ってくるザフト艦の相手をしてもらう。

その間に我々はデブリベルトを抜けて地球へ向かう」

 

「でも、それではアルテミスに被害が……」

 

「戦争中に被害を気にしてどうする? 敵が来れば攻撃するのは当然だ。

アルテミスの連中は武勲を上げる機会に恵まれていない。

我々は“その機会”を与えるだけだ」

 

「……」

 

確かに、アルテミスは戦略的価値が低く、

全方位光波防御帯――“アルテミスの傘”のせいで戦果を挙げる機会がなかった。

そこにザフトが来れば、彼らは喜んで戦うだろう。

実際に勝てるかどうかは別として。

 

「それに“保険”もあるしな」

 

「保険……ですか?」

 

「まあ、見ていてくれ」

 

アークエンジェルとオーブ護衛艦は、アルテミスを目指してサイレントランを実行した。

アルテミス司令官ジェラード・ガルシアは歓喜した。

大西洋連邦の新型艦とMSが、自分の手の中に転がり込んできたのだ。

これをユーラシア連邦に献上すれば、出世は確実。

オーブの護衛艦は邪魔だが、放置すればよい――

そう考え、アークエンジェルの乗員を拘束した。

だが、同乗していたオーブ軍士官が“解放”を要求してきた。

ガルシアは鼻で笑ったが、

士官が一枚の紙を見せた瞬間、顔色が変わった。

 

「別に補給を万全にしろとか、護衛を付けろとは言わない。

ただ“解放するだけ”でいい。

それを断るなら……どうなるか、理解できますよね?」

 

その言葉に、ガルシアは反射的に叫んだ。

 

「“青き清浄な世界のために”!」

 

アーク・エンジェルは簡単な補給を受け、無事に出発した。

その際、トダカがガルシアに告げた。

 

「ザフト艦が接近しています。これを撃破すれば、盟主にも胸を張って報告できますよ」

 

ガルシアは全方位一級警戒態勢を命じ、

ザフト撃破に躍起になった。

 

遠ざかるアルテミスを見ながら、マリューはトダカに尋ねた。

 

「いったいどんな手を使ったんです? 

あの司令官があそこまで態度を変えるなんて」

 

「ああ、それはこれだ」

 

トダカが取り出したのは、何の変哲もない、報告書でも、公文書でもない、ただの“手紙”だった。

そこには――

「この者の要求には可能な限り便宜を図ること」

とだけ書かれていた。

だが、マリューは署名を見た瞬間、息を呑んだ。

ムルタ・アズラエル。

エイプリルフール・クライシスで数えきれない命を救い、

単なるテロ組織だったブルーコスモスを“人類の救世主”へと変貌させた男。

まさに現代の聖人と言える男の名であった。

彼が一言いえば、軍司令官の首どころか、

国家元首の首すら飛ぶ。

一要塞の司令官など、言うまでもない。

 

「我が主とアズラエル様は、留学時のご学友でな。

表立っては公表されていないが、お二人は“親友”と呼べる間柄だそうだ。

我が主から『何かあったら使え』と渡されていたもののひとつだよ」

 

「その“我が主”というのは……?」

 

「もちろん、“オーブの虎”と呼ばれるお方だ」

 

誇らしげに答えるトダカの背後――

アルテミスの方向に、いくつもの閃光が生じていた。

しかしそれに気付く者は誰もいなかった。

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。