後は発表待ちです…
今回は零那の過去です。
だいぶ原作と設定が違うので悪しからず。
ーー十数年前。
白闇零那は産まれてすぐに孤児院に入れられた。
母は零那を産んだ時に亡くなり、父は消息が不明になっていた。
「ねーねー、零那ちゃん遊ぼう?」
「…私はいいや」
「そう…」
世間を知らず、口下手であったため、友達も少なかった。
零那が5歳になったころ、父からの手紙が見つかった。
その内容は、幼い零那には残酷な内容だった。
父は消息が不明になっていたが、実はもっと前から死を覚悟しており、母が亡くなった1年後に死亡していた。
零那は悲しみに震えた。
どうして自分ばかりこんなに不幸なのか。
周りにはお父さんとお母さんがいて、手を繋いで帰っている光景をよく見る。
ーー妬ましくて仕方ない。
どうして私ばかり。
そして手紙の最後にはこう書かれていた。
この世界で起きている空間震、それは精霊と呼ばれる少女によって引き起こされるもの。
そしてAST(アンチ・スピリット・チーム)という部隊がその精霊を殺そうとしていること。
その二つが書かれていた。
幼い零那には全く理解できることではなかった。
なので、その手紙をずっと持ち続けた。
ーー5年後。
孤児院を出た零那に行く場所などなかった。
というのも、孤児院が火災で廃院になってしまったのだ。
あぁ、まただ。
また私ばかり不幸になる。
そういう運命が決められている。
10歳になった零那を絶望させるのは十分すぎた。
ただ行くあてもなく、空を眺めていた時だった。
『空間震の前兆が観測されました。ただちに避難して下さい。これは訓練ではありません。繰り返します…』
「空間震…」
そう、空間震が来た。
正直なところ零那に生きる意味などなかった。
それとも空間震が気になったからか。
零那はシェルターに避難しないで街に残った。
そして。
ーー辺り一体を空間震が吹き飛ばした。
零那の立っていた目の前に綺麗な穴が空いていた。
ーその中央には幻想的な、なんとも美しい少女が立っていた。
そして、玉座の様なものから剣を抜き、零那に向かって剣を振る。
「…お前も、私を殺しに来たのか」
その少女は酷く悲しそうな顔でそういった。
「…貴方を殺して私に何のメリットがあるの。逆に私を殺してよ。生きてたって意味がない」
「なに…」
流石に不意をつかれたのか。
零那の発言に目の前の少女は言葉を失った。
やがて。
「…お前も、私と同じか。生きている理由がわからないのだな」
少女が突然そんな事を言った。
「…そうだね。生きている理由がわからないよ」
零那がそう言った時、空中から無数のミサイルが放たれた。
すると目の前の少女は無言のまま左手で目に見えない壁を作り、ミサイルを全て弾いた。
「安心しろ。お前は私が守る」
不意に、少女がそう言った。
ーー私を守る?
守る?守る?何の意味があるの?
生きることに何の意味がある?
守って何になる?
そんな考えが頭をよぎった。
「〈鏖殺公〉(サンダルフォン)!!」
空中で少女が叫び、目の前の人間を蹴散らしていく。
そういえば。
父から貰った手紙に書いていたことを思い出した。
この少女は精霊。戦っている人間はAST。
そして、空間震はこの少女が起こしたものであると。
ーーなんで。なんでこの少女を殺すの。
意味がわからないよ。殺しあったって意味がないよ。
「ぐぁっ!!」
空中で少女の苦しそうな声が響く。
どうやら前方のAST隊員に手がいっぱいで、背後からきたAST隊員に気づかずモロに攻撃を食らったみたいだ。
少女の背中からは血が出ていた。
ーーどうしよう。このままだとこの少女も死ぬ。
零那はとっさに少女にかけより、必死に守ろうとした。
「そこの女の子!避難しなさい!ここは危険だ!」
「嫌だ!どうして殺し合うの!?意味がわからないよ!」
AST隊員の注意も聞かず、零那は必死で叫んだ。
でも。
私には力がない。何もない。
この少女を救えない。
ーーこの少女を助けたい。
零那が初めて抱いた感情だった。
初めて誰かを助けたいと思った。
「誰か、誰でもいい、私にこの少女を助ける力を…」
零那が血走った目で辺りを見回していると、目の前に”なにか”が現れた。
それは解像度が荒く、到底人とは思えない、ノイズのような何かだった。
『ねえ、力が欲しい?この娘を助けられる絶対の力が欲しい?』
それはそんなことを質問してきた。
「当たり前でしょ!」
零那がそういうと、それが一瞬笑った気がした。
『なら力をあげる。手を伸ばして…』
それは、黒い宝石の様な物を差し出した。
零那は迷わずその宝石を掴み取る。
「ああ、あぁぁぁぁぁぁああ」
瞬間、零那はもう一人の自分が現れ、絶大な力を手に入れる感覚を覚えた。
「な…」
AST隊員は目の前で起こった事態に言葉を失った。
さっきまで精霊、【プリンセス】と戦っていた筈だ。
しかし、その【プリンセス】を守るように、漆黒の羽織を着た精霊が現れた。
いや、少女が精霊になった。
「そ、総員目的変更!【プリンセス】とあの精霊を倒すのよ!」
「了解!」
AST隊員の声も。風の音も。何も聞こえない。
聞こえるのは自分の心拍音と倒れた少女の心拍音だけ。
「今助けるからね…」
零那は少女にそう言い残し、ASTに向かった。
「〈冥界覇者〉(ハーデス)」
天使の名を呟く。
何故だろうか。使ったこともない武器を扱い、戦ったこともない敵と対峙しているのにも関わらず、心は落ち着いていた。
「消えろ…消えてしまえ…【空間爆砕】(メギドラオン)!!」
瞬間。零那を中心として爆発が起こった。
「な…」
AST隊員も数人が巻き込まれる。
爆発の規模が空間震ほどだったため、ASTは混乱していた。
「今…」
その隙を突き、零那は少女を抱えてその場から離脱した。
「〈冥界覇者〉(ハーデス)ー【高等蘇生術】(フルヒール)」
ASTから逃れ、人気の無い裏路地に移動した零那は、『天使』〈冥界覇者〉(ハーデス)を使い少女の回復を試みていた。
【高等蘇生術】(フルヒール)
どんな状態からでも生物を蘇生させる〈冥界覇者〉(ハーデス)最強の技。
だが使うたびに膨大な霊力を消費するため、連続して使用できない。
零那は軽いめまいに頭を抑えた。
「ん…私は…」
「よかった…気がついた…」
少女が不思議そうに零那を見つめる。
…それもそうだ。さっき会ったばかりなのに精霊化していたのだから。
「私の傷はどうなったのだ?」
「私が塞ぎました。完治してるはずです」
「そうか…感謝する。ところで、お前は名を何という?」
「…私は零那。零那だよ」
「そうか…」
そして少女は小難しい顔で考えた後こう言った。
「私はそろそろ隣界に帰らなければならない。…零那と言ったな。またいつか会おう」
「…!」
少女はそう言うと光に溶け、次第に消えていった。
少女がいなくなった後、凄まじい頭痛と共に零那はうずくまった。
「ぐ…ああ…」
原因不明の頭痛が続く。
頭が割れる。痛い。
零那がもがき苦しんでいると、一人の少女が現れた。
「零那…ね」
自分の名前を口にした少女は、口にチュッパチャプスを加え、ツインテールに黒のリボンを付けた同じ歳くらいの少女だった。
「あ…なたは…」
耐え難い頭痛の中、必死に言葉を発した。
「…とりあえず私と来なさい。その頭痛を治してあげるわ」
「本当に治るの…?」
「大丈夫よ。ASTみたいに殺したりはしないし、貴方に居場所をあげるわ」
「居場所…」
それは零那が初めて言ってもらった言葉だった。
居場所。
自分の生涯で一度も聞くことがないと思っていたが、この少女は居場所をくれると言った。
ーーそう実感した途端、涙が溢れてきた。
幼い頃に泣き疲れ、とっくに涙など枯れていたと思った。
だが、こうして泣ける。
なんだか、とても嬉しいことに感じた。
「うぁあああああ…!!」
初めてかけてもらった言葉が嬉しくて。零那は声をあげて泣いた。
そんな零那の頭を少女は優しく撫でた。
「…辛かったね。大丈夫。私がいる」
それから零那はしばらく口をきかなかった。
嬉しさからか、実感がないからかはわからなかったが、口は開かなかった。
だが、その顔は今まで見たこともないような笑顔で満ち溢れていた。
後からあの時のツインテールの少女は五河琴里という名前だとわかった。
あれから零那は空中艦に連れて行かれ、隅々まで検査を受けた後、【ラタトスク】が保護することを約束した。
なんでも、零那の父は【ラタトスク】で働いていたらしい。
その為、琴里は零那の過去と名前を知っていたのだ。
ーーそして。
父の死が他殺だと言うこともわかった。
父はDEM(デウス・エクス・マキナ)社に殺害されたらしい。
理由はわからないが、幼い零那はこの時一つのことを誓った。
絶対にDEMを潰す。父を殺した奴をこの手で殺す。
それからまもなく零那は【フラクシナス】のクルーになった。
霊力の封印はしてないが、非常に安定しているということで、必要性がなくなったからだ。
それに、万が一の事があっても、琴里がいればなんとかなると思っていたからだ。
こうして、白闇零那はDEMを潰すことを目標に、【フラクシナス】クルーとして今まで生きてきた。
…これは、今から数年前の出来事だ。
だいぶ原作と設定が違いますね(蹴
ラタトスクは数十年前からあった設定にしてます。
なので「ここ原作と違うよ!」って所があってもわざとなので気にしないでくださいまし。