ちなみに入試まで後に2週間くらいですグフォァ(吐血
「くっそぉぉぉぉ!!」
士道は叫び声を上げながら突進する。が、ニュクスの下まで辿り着く前に霊力によって弾き飛ばされた。
「くっそ…まだまだ…」
「まだ足掻くか、人間よ」
もう何度弾き飛ばされたのかもわからないくらい意識が朦朧とする。
なんでーーなんであそこまで届かないのか。
「人間一人で何ができる。連(つる)んだところで何も出来ないがな」
「くく…いつから一人だと思っていたのだ?」
「肯定。士道は一人じゃありません」
「士道さん…は、私達が…付いてます!」
「士道、情けない顔しないの。あなたは一人じゃない、私達がいるわ」
ふと後ろから四人の声がした。
士道が驚いて顔を上げると、そこには限定霊装に身を包んだ耶倶矢、夕弦、四糸乃、琴里がいた。
『〈颶風騎士〉(ラファエル)!』
耶倶矢と夕弦が同時に叫び、周囲に風を発生させる。ニュクスの霊力を風によって押し返そうとしているのだろう。
「〈灼爛殲鬼〉(カマエル)!」
琴里が灼爛殲鬼(カマエル)と言う戦斧を振りかぶった。斧を振るたびに火花が散り、辺りは熱気に包まれていた。
一方四糸乃は士道に駆け寄り、士道が立ち上がるまでの補助をしていた。
「青臭い餓鬼共よ、目を覚ますがいい。人間風情が群れたところで何も変わらない」
「はっ…一対多勢で何言ってるんだよ」
士道が四糸乃に肩を借りながら立ち上がる。士道の言葉にニュクスは不満そうな顔になる。
「…自分の足でしか立ち上がる事のできない人間が何を言う」
「そっちにばかり気を取られてていいの?」
ニュクスが士道に気を取られている隙に琴里が灼爛殲鬼(カマエル)で斬りかかった。だがニュクスは左手で灼爛殲鬼(カマエル)を防いだ。
「ちっ….」
琴里が小さく舌打ちしながらバックステップする。あのままでは攻撃を喰らいかねない、懸命な判断だった。
「呼応。耶倶矢!」
「応とも!」
耶倶矢と夕弦が手を取り合い互いの『天使』を合体させる。
【天を駆ける者】(エル・カナフ)。士道が一度だけ使用した〈颶風騎士〉(ラファエル)を合体させてできる弓。
その一撃はどんなものでも刺し貫きそうな威力を持っている。
『〈颶風騎士〉(ラファエル)ー【天を駆ける者】(エル・カナフ)!』
耶倶矢と夕弦が二人で持った弓の弦を同時に離す。
凄まじい速さとともに弓がニュクス目掛けて直進した。
「…【堕王剣】(エビルカリバー)」
ニュクスは静かに呟くと、手にした禍々しい剣で【天を駆ける者】(エル・カナフ)を防いだ。
「そん…な…」
「疑念…なぜ…」
〈颶風騎士〉(ラファエル)の最強の一撃。いくら限定霊装でフルパワーでないからとは言えかなりの誤算だった。
「なんなんだよあいつ…」
士道が槍を構えニュクスに向き直る。が、瞬間ぐらりと揺れ、その場に膝をついた。
「士道さん…無茶したら…駄目、です」
四糸乃が今にも泣きそうな顔で訴えてくる。
「四糸乃…」
(全く…見てられないよ)
士道が四糸乃の方を向くと、突然頭に聞き覚えのある声が響いた。
(私の”本当の天使”を…今なら…)
そう、この声は零那の声だ。
どうやら四糸乃にも聞こえたらしい。
(士道さん…召喚器を取って、私の天使を…)
「お、おう!」
本来召喚器で顕現できる天使は封印済みの精霊の天使のみだ。
未封印の零那の天使が使えるかどうかの確証はなかったがやるしかない。
「〈天界騎士〉(ウリエル)ー【聖王剣】(エクスカリバー)!」
士道が叫びながら召喚器の引き金を引くと、右手に【堕王剣】(エビルカリバー)と同じ形をした剣が握られる。だがニュクスの持つそれとは違い、【聖王剣】(エクスカリバー)は輝きを放つ神聖な剣だった。
「貴様…なぜその天使を…」
今まで決して弱々しい表情を見せなかったニュクスが初めて見せた恐怖の顔。この剣には嫌な思い出でもあるのだろうか。
「はぁぁぁぁぁぁあ!」
士道が【聖王剣】(エクスカリバー)を振るうと、霊力の刃がニュクス目掛けて飛んでいく。
ニュクスはその刃を【堕王剣】(エビルカリバー)で防ぐ、が、その時ニュクスが初めて揺らいだ。
「耶倶矢、夕弦!頼む!」
「応!」
「承知。わかりました」
耶倶矢と夕弦が天使を使い、士道の身体を宙に浮かせる。そしてそのままニュクスの方へと移動していく。
「くっ…」
ニュクスが態勢を立て直す方が早いか、それとも士道が懐に入る方が早いか。
一瞬早かったのは…士道だ。
「チェックメイトだニュクス。諦めな」
ニュクスが混乱している間にニュクスの懐に入り【聖王剣】(エクスカリバー)を向ける。
するとニュクスは唇の端を上げ笑った。
「面白い。人間、今宵よりお前が私の主人だ。なんなりと申すがよい」
「…その身体を零那に返しな」
「承知した」
ニュクスが満足したように笑うと身に纏っていた漆黒の羽織が光の粒子となって消え失せ、代わりに純白の羽織が姿を現す。
それと同時に零那の意識が戻った。
「士道…さん」
「約束通り助けにーー」
士道はそこで言葉を止めた。否、止めさせられた。理由は至極単純、零那が自分の唇を士道の唇に押し当ててきたからだ。
「うわあ…」
地上では耶倶矢と夕弦が興味深そうにそれを見て、四糸乃は顔を赤くしながら目を手で覆い隠し、琴里はやれやれと溜め息を吐いた。
やがて唇を離した零那が口を開いた。
「私を見つけてくれて…ありがとう」
「あ、いや…その……おう」
士道が曖昧に頷くと、零那の霊装が消え失せ、半裸状態になる。
それと同時に士道の中に暖かい物が流れ込んでくる感覚を覚える。
「またか…」
士道は着ていた上着を零那に被せ、とりあえず見ても大丈夫な状況にする。
…いやまぁそれでも色々とアウトなんですが。
「お疲れ、士道、零那」
琴里が霊装を解除し、満足そうに笑う。耶倶矢、夕弦、四糸乃もまた満足そうに笑っていた。
「帰ろう、日常へ」
士道の言葉と共に、士道達は【フラクシナス】へと転送された。
あれから一週間経った。
あの後零那は徹底的に検査を受け、安全が確認されたところでクルーとしての仕事を続けている。
同時に中学校にも転校生という形で入学したらしく、クラスは一様琴里と同じらしい。
琴里から話を聞くに、転入初日からモテモテで本人も迷惑してるらしい。確かに零那は天真爛漫な美少女だ。モテるのも無理はない。
「…大変だな」
士道は笑いながら空を見上げる。
いつもと変わらない放課後に見る空。零那が死ぬという最悪の過去を変え、いつもの日常に戻ってきた。
自宅への帰路の途中、そんなことを考えていたら背後から自分を呼ぶ声がした。
「士道さぁぁぁぁん!」
声の主は零那だ。満面の笑みを浮かべながらこちらへ走ってくる。ちなみに零那も学校帰りなので制服だ。
「おう、零那ーーー」
士道が零那の名を呼ぼうとした瞬間、零那が士道にダイブしてきたため言葉が詰まる。
ちなみに今士道の顔には零那の胸が押さえつけられているわけで。
「ちょ、零那!胸!胸が当たってる!」
「えー?別に士道さんなら気にしないしー」
「いやどういうことだよそれ!?」
これはまずい、非常にまずい。零那は2つ歳下だが、それでも胸は琴里より育っている。ちゃんと立派な女の子だ。いや、そうじゃなくて。まずい。
すると零那が士道の背後に回している手にさらに力を込める。
…他人から見たら道のど真ん中で抱き合っているバカップル(一方通行)にしか見えない。
と、その時、背後から二人の少年が走ってきた。
「え、ちょ、誰その人」
「…まさか零那ちゃんの彼氏?」
制服を見る限り零那と同じ学校みたいだ。いや、それ以前に自分は彼氏ではない。まずそれを否定しなければ。
「あ、えーと、俺は彼氏じゃーー」
「そうだよ、この人が私の彼氏。わかった?」
「うわ…マジかよ…」
「なんだよー、転校してきて早々に彼氏いるのかよ」
二人の少年はガッカリした様子でそのまま歩いていった。
「…おいどういうことだ」
「…ごめんごめん、あの二人しつこくてさ。だからつい勢いで『私彼氏いるから付き合えません!』って言っちゃったわけ」
「ああ、成る程な」
「…でも別に本当の彼氏でもいいし」
「ん?なんか言ったか?」
「あ、いや、なんでもない」
零那の声が小さすぎて何を言っているのか聞き取れなかった。まぁ多分大事なことじゃないから大丈夫だろう多分。
…不意に、零那が士道の手を握ってきた。
「…このまま帰ろ」
かなりびっくりしたが士道はそのまま首を縦に倒す。
「…構わないよ」
他人から見たら兄妹に見えるかもしれない。恋人同士に見えるかもしれない。でもそれでもいい。零那の笑顔がもう一回見られたのだから。
「じゃ、帰るか」
士道は零那の左手を強く握ったまま、決して離すことなく自宅へと帰宅した。
零那Route END
20話で終わらせたかったけど無理でした(´・ω・`)
まぁ…次回の精霊は…わかるよね?