いやっほぉぉぉぉ
という訳でお久しぶりです。デート・ア・ライブ マテリアルを購入して狂三のキャラが崩れすぎてて大爆笑した零丸です。
引き続きお願いします。
#22 王妃
『目標、〈プリンセス〉。AST各員は即時排除せよ』
「了解」
CR-ユニットを纏った超人、それが魔術師(ウィザード)。精霊を殺すことを目的としている。
そしてAST。陸自の対精霊部隊であり精霊が現れた場合その場に行って処理する 。要は殺すのだ。
鳶一折紙はASTに所属している。
そのため、今日も精霊と戦っている訳だ。
目標は〈プリンセス〉。4年前から反応が確認された精霊。
危険度はAAA(トリプルエー)ランク。最近になって頻繁に現界する様になった。
だがASTとの戦力差は明らかだった。
いくら超人でも精霊と人間には越えられない壁がある。今もそうだ、エースが倒れ、仲間の殆どはやられた。残るは自分と数人の仲間だけだ。
「今度こそ…」
レーザーブレードの柄を握り直し、鳶一折紙は〈プリンセス〉へ向けて剣を振るった。
あぁ、またか。
大きなクーデターの真ん中に突然出現した少女は溜め息を吐いた。
隣界で眠っていたら突然叩き起こされ、気づいた時にはこの場所にいた。
そして、現界した時にいつも現れる五月蝿い人間達。彼女らはいつも無駄な攻撃ばかりしてくる。
今日もそうだ。当たらない剣を振るわれ、憎しみと憎悪のこもった少女に睨みつけられる。
ーーあぁ、飽きた。
いつまでこの無意味な戦いを続けるのか。
「こんなものは無駄と、何故学習しない…」
少女はASTの放ったミサイルを片手で全て防ぎ、愚痴をこぼした。
いったい何度目の戦いかもわからない。
「零那は…どうしているのだろうか」
少女は4年前に出会った自分と同じ少女を思い出した。生きることに嫌気がさし、互いに死んだ目をしていた。その後零那に助けられたが、あれから会っていない。
「…」
少女は零那のことを考えながら、無駄な争いを長い間続けた。
それはとても歪で、不快で、耐え難い時間だった。
「ちょっと士道起きなさいよ」
「んー?今日は日曜だろ…寝かせろよ…」
「ていっ」
「うがっ…」
ベッドで起きるのを躊躇していた士道に琴里が容赦なく肘打ちする。
この野郎覚えとけよ…
「いいから起きなさいよ。また精霊が現れたのよ」
「はぁ!?出現頻度高すぎるだろ!」
そう、つい最近〈ナイトメア〉時崎狂三が現れ、封印を試みた。
その数日後には零那の霊力封印も行った。狂三の方は封印できなかったが、狂三が現れてからまだ一ヶ月と経っていない。いったい何故こうも精霊の出現率が高いのか少々謎だった。
「それで…今度はどんな精霊なんだ
?」
士道がベッドから上半身を起こし、眠い目を擦りながら琴里に問う。
琴里は口に飴を放り込みながら説明した。
「今回現れたのは〈プリンセス〉。今までとは桁違いに危険度の高い精霊よ」
「…ちなみにどれくらい?」
「そうね、時崎狂三までは高くないけど、あまり変わらないわね。AAAランクよ」
「…そうか」
琴里の言うAAAランクの具体的な危険性はわからないがとにかく危険だと言うことはわかった。
「ん…でも空間震警報は鳴ってないよな?」
「まあそうね。だって〈プリンセス〉が現れるのは天宮市から程遠い場所なのよ」
「…いや、それじゃあ対象しようがないだろ」
士道が顔に手を当てながら琴里に反論する。すると琴里ははぁと溜め息を吐きながら説明した。
「【フラクシナス】の観測機で観測した結果、次の〈プリンセス〉の出現予定場所は天宮市なのよ」
「なんだそのハイテク機械」
全く〈ラタトスク〉という組織は無駄なところに力を費やしている気がする。
あれ、精霊の出現予定場所を観測できる機械は無駄じゃないのか?
「とにかく、近いうちに〈プリンセス〉が現れるのよ。とりあえず覚悟はしてなさい」
「はいよ」
琴里はそれだけを伝えると、士道の部屋から出て行った。
士道が私服に着替えて一階に下りると、そこには琴里、四糸乃、八舞姉妹、零那という精霊達が勢揃いしていた。
「…えーと、これは女子会か何か?」
「かか、士道。今我らは互いの命運をかけて魔性の遊戯をしているところ。邪魔してはならぬぞ」
「説明。今夕弦達はトランプをでババ抜きをしています。ちなみに勝った人は士道を1日好きにできる権利を得ることができます」
「ちょ、ちょっと待て…俺は何も言ってないぞ」
士道が半眼をつくりながら問いかけると零那が代わって口を開いた。
「そりゃそうだよ。だってその提案したの私だし」
「何やってんだよお前!?」
零那がいたずらっぽく微笑む。
その隣で四糸乃は必死で耶倶矢から取るカードを選んでいた。
「どれにしようかな…」
『多分耶倶矢ちゃんがジョーカー持ってると思うんだよねー』
「助言。耶倶矢はすぐ顔に出ます。おそらくこの中で一番弱いのは耶倶矢でしょう」
「くく…夕弦よ、何を言って…え、ちょ、それマジ?」
どうやら耶倶矢は気づいてないらしい。ちなみに四糸乃が引いたカードはスペードの4、手札に4があったのでペアのカードを中央に置いた。
「後…2枚…!」
なにやら四糸乃までマジになっている。いったい士道の存在とは何なのか。
「なあ、琴里」
「ん?何かしら」
「なんだ、その…みんな楽しそうだな」
「そうね、零那も以前より笑うようになったし。何より”今”を楽しんでるみたいだしね」
琴里が四人を見てしみじみしながら言う。…なんだか琴里が妙に歳を食って見えた。
「うがぁぁぁぁあ!」
後ろから耶倶矢の叫び声が聞こえる。なにがあったのかと思って後ろを見ると、耶倶矢が何やら放心状態になっており、その隣で夕弦が「微笑。ぷぷぷ…」と笑っている。
「…誰か説明頼む」
「耶倶矢が負けたのよ」
「あっさりすぎる説明だなおい!」
零那がバッサリと説明するので思わずツッコミを入れる。
「あの…私が…勝ちました…」
隣で四糸乃がおずおずと手を挙げる。
「あーあ、ババ抜きなら自信あったからこういう条件にしたのになー」
零那が頬を膨らませながらぶつぶつ文句をいう。
ちなみに耶倶矢はというと涙目で放心していた。隣では夕弦が笑い続けている。
「まあ、その、なんだ。楽しそうでよかった」
「でも今回わかったのって耶倶矢がトランプ弱いってだけなんだよねー。士道さんを1日独り占めする権利も取れなかったしー」
「提案。ならばもう一戦やりましょう。四糸乃は勝ったのでやらなくてもいいですよ」
「は、はい…!」
…どうやらもう一戦やるらしい。
少なくとも士道の自由な日が2日は無くなることを覚悟しておかなければならない。
「ぷぷ…モテるわね士道…」
琴里が笑いを必死にこらえながらこっちを向いてくる。
何故だか無性にバカにされてる気がした。
「じゃあカードをシャッフルするねー」
零那が言ってシャッフルし始めた時。
耳に不快な警報音が鳴り響いてきた。
「空間震警報…」
士道が真剣な表情で琴里を見る。
琴里もまた、真剣な表情で【フラクシナス】に指示を出していた。
「ええ…うん…わかったわ。転送して頂戴」
琴里が通信を終わると、全員に聞こえる声で言い放った。
「全員、今から【フラクシナス】に移動するわよ。移動したら士道は現場へ、他のみんなはサポートに回って頂戴」
琴里が言った瞬間、士道の身体は浮遊感に包まれ、気が付いた時には【フラクシナス】に移動していた。
ーーあぁ、まただ。
また呼び起こされた。また来てしまった。
こちらの世界に強制的に呼ばれ、終わりのない戦いを続ける。
やはり、またあの五月蝿い人間達が空に浮いていた。
「…また貴様か」
先陣を切って斬りかかってきたのは、いつもの表情のない女。
たしか仲間からトビイチオリガミと呼ばれていた筈だ。
「…何故だ。何故貴様達は私を殺そうとする!」
「貴女は精霊。世界を殺す災厄。理由はこれで十分」
「…!」
少女の持つ〈鏖殺公〉(サンダルフォン)と折紙の持つレーザーブレードの刃同士が当たり火花を散らす。
ーーあぁ、また始まるのか。
少女はうんざりとした気持ちで〈鏖殺公〉(サンダルフォン)の柄を握り直した。
「…すげぇな」
【フラクシナス】に移動した士道は、モニターに映し出されているASTと少女の戦いに目を奪われていた。
両者とも人間とは思えない動きで武器を振るう。確かこのAST隊員は士道のクラスメイト、鳶一折紙という名前だった筈だ。
「士道は現場に行く準備を。他のみんなはーー」
「この人…」
不意に零那が口を開いた。
その目線の先には現界した精霊の少女をじっと見つめていた。
「四年前…私が助けた人だ…」
「なんですって!?」
琴里が琴里らしくもない大声をあげる。どうやら琴里もこの事は知らなかったらしい。
「私が空間震警報が鳴った時外にいた話は知ってるよね?その時にいた精霊と同じ人だよ、この人…」
零那の手が震え始める。それはもう一度会えた喜びからか、それとも別の理由か。
「…とりあえず現場には士道が行きなさい。零那は必要な時にこちらから転送して現場に送るわ」
「…了解」
士道は力強く頷き、【フラクシナス】の艦橋を後にした。
戦い始めてかは数分後。
天宮市は空襲でもあったかのような有様になっていた。
とはいえ、この状況は復興部隊が顕現装置(リアライザ)を用いてすぐに修復してくれるだろう。
だが問題はそんなことではなかった。
「はぁ…はぁ…」
いくら訓練を積んだAST隊員とはいえど人間。折紙の身体には疲労が蓄積されており、息も切れ始めていた。
「…まだやるか」
「当然」
もう一度レーザーブレードを構えなおし、少女に向かって斬りかかる。
が、少女はそれを大振りな剣で全て捌いていた。
「…ちっ」
折紙は小さく舌打ちした。
折紙といたAST隊員は全滅。絶望的な状況だった。おまけに随意領域(テリトリー)の使用による脳の酷使。
折紙自身の身体もボロボロだった。
ーー話が違う。
折紙は四年前の資料に目を通していたため、〈プリンセス〉のことは知っていた。〈プリンセス〉が人間の子供を庇い、庇った人間の子供が精霊になった、と。
当時の資料によれば〈プリンセス〉はここまで強くはなかったはずだ。
AAAランクは大袈裟だと思っていたのだが…
『折紙、一旦離脱しなさい。態勢を立て直すわよ』
AST隊長の日下部燎子から通信が入る。
「了解」
折紙はこれだけを呟き、重い身体を引きずってその場から離脱した。
ーー私を拒む者がいなくなった。
トビイチオリガミという人間はどこかへ消えてしまった。これで私に攻撃を仕掛けてくる人間はいない筈だ。だが、攻撃を仕掛けてくる人間がいなくなったところで、する事などなかった。毎回毎回現界するたびに思う。こちらの世界に来てもする事などないのだ。
と、そんな時。1人の少年を見つけた。
ーーあいつも、私を殺しにきたのか。
少女は溜め息を吐きながら、〈鏖殺公〉【サンダルフォン】の柄を握り直した。
士道が地上に転送された時、その場にASTはいなかった。
だから、その場に〈プリンセス〉と呼ばれる少女と自分しかいない。
霊力を封印する上では最高の状況だった。
『しっかりね、士道』
インカムから琴里の声が聞こえる。
その通信に短く応えてから、士道はその少女へと歩みを進めた。
どれくらい近づいた頃だろうか。
少女が突然こちらを向き、手にした剣で地面を切り裂く。
その斬撃は衝撃波となって士道の頬を掠めた。
「…お前も…私を殺しにきたのか」
「は…?」
突然少女が放った言葉。その言葉の意味がわからず、士道はしばし無言になってしまう。
「お前も殺しておいた方がよさそうだ。悪く思うなよ」
「え、ちょ、待った待った!」
「何…」
少女が剣を振りかぶったままこちらを向く。
「俺は五河士道!敵対する意思はない!」
「そんな言葉に騙されるとでも思ったか。悪く思うな、人間」
少女が振りかぶった剣を士道に振り下ろそうとする。いくら琴里の加護があるとはいえ、『天使』の一撃を喰らえばタダでは済まないだろう。
やむを得ない…
「〈氷結傀儡〉(ザドキエル)!」
士道は慌ててポケットから召喚器を取りだし引き金を引く。
目の前に氷の壁ができ、少女の一撃を間一髪防いだ。
「あ、あぶねぇ…」
「貴様…それは『天使』…なぜ貴様の様な人間が…」
少女が不思議そうな顔をして剣を下ろす。どうやら助かったみたいだ。
『ーー道さん、士道さん』
インカムに通信が入る。士道の名前に『さん』を付けるところと、この声からして通信の主は零那だろう。
「お、おう。どうした?」
『その人はね、私と同じ。周りに誰もいなかったから疑うことしか知らないんだよ。だから肯定してあげれば手っ取り早いと思うよ』
「…その情報源は?」
『…私の体験と勘…かな?』
いまいち信用に欠ける一言だ。
しかも最後に至っては何故に疑問系なのだろう。
ーーまあ今は信じてみるしかないだろう。
「貴様…何をブツブツ言っている。やはりさっきの『天使』は囮で他に殺す手が!?」
「なっ…そんな訳ないだろう!」
どうやら零那の言う通りかなり自意識過剰な少女の様だ。
これは扱いが難しい。
「ならば答えろ。貴様は何しにここに現れた」
「え、えーと…」
『士道さん、ちょっと私の言う通り言ってみて』
「わ、わかった…」
インカムから自信たっぷりの零那の声が聞こえる。この少女と関わったことがある唯一の少女、零那。
今は言うことを聞くのが懸命だろう。
「お、俺はお前と話をする為にここに来た!お前だって終わりの無い戦いに飽きていたんだろう!?」
「む…まあそうだが…」
お、これは今までに見たことのない反応だ。いけるかもしれない。
「だが、人間は私を殺そうとしている輩しかいない!私と出会った人間は皆そう言っていた!」
「そ、そんな訳ないだろう!」
たまらず士道が叫ぶ。精霊である彼女は地球に様々な害となる。
ASTが彼女を否定する行為はおかしくないのだが、やはり士道は納得していなかった。
…だって、この少女の意思とは関係なく空間震は起こり、現界するタイミングさえランダムなのだ。
彼女に罪を問うのは違う気がする。
「お前は…今まで否定され続けたかもしれない!でもそれは!ASTの連中だけだろう!でもな!俺はお前を…否定しない!」
「…ッ!!」
士道が思っている本心を力の限り叫ぶ。 すると少女は不意をつかれたかのような表情をし、顔を背けてしまった。
「……シドーと言ったな。本当にお前は…私を否定しないのか?」
「ああ、本当だ!」
それは士道の本心だった。この少女は今まで敵意と殺意を向けられ、ただひたすら否定され続けた。
それならば、士道が手を差し伸べてやるべきだと思ったからだ。
傲慢でもなんでもいい、やるしかないと思った。
「…人間というのは面白いな。私を否定しない人間は…シドーで二人目だ」
「そう…か…」
おそらくは士道と零那の事だろう。
わかってはいたが自分の存在を否定しない人間が二人しかいないというのはかなり辛いものだ。
「俺の話に耳を傾けてくれてありがとう。あ…えーと…」
そこで士道は少女の名を知らないことに気づいた。おそらく少女も気づいたのだろう。士道に向かって口を開いた。
「私の名か?済まぬが私の名は無い。覚えてない…の方が適当かもしれん」
「そうなのか…」
「だが会話を交わす相手がいるなら名前は必要だな…シドー、お前は私をなんと呼びたい?」
「……………は?」
物凄く長い沈黙の後に聞き返してしまう。名を付ける…ということはこの少女の名前はずっと士道の考えた名前になるということだろう。
なんというか…重い。
「ちょっと待ってくれ…考えるからな…」
士道は少女に背を向け、インカムを二回小突いた。
『……聞こえてたよ。なんというか…お疲れ』
零那が溜め息を吐きながら返してくる。顔が見えなくてもなんとなく表情が予想できた。
「零那…お前がこの女の子と会ったのは何日だ?」
とりあえず日にちを問う。精霊の名前には数字が入っているためヒントになると思ったからだ。
四糸乃なら4、八舞姉妹なら8、零那なら0、と言った感じだ。
「確か4月10日だよ。世間は入学式ムードだったから覚えてる」
「10日か…」
10日…じゅうにち…とおか…十香?
…なんだか凄く安直な名前になってしまったがこの際仕方ない。
「十香」という名前以外思いつかない、うん。
「シドーまだかー?」
「とお…か…十香ってのはどうかな?」
「とお…か?」
少女が首を傾げる。仕方のないことかもしれない。精霊が読み書きをできない可能性だって十分あるのだ。
士道は持っていたメモ帳に『十香』と書いてやると、十香は「おお!」と言ってから大きく頷いた。
「…シドー」
「なんだ?十香」
「十香…私の名だ。素敵だろう?」
そして十香は士道に向かって微笑みかける。
…ああ、この少女はこんな風に笑えるのか。それは士道が抱いた素直な感想だった。
その笑みは十香が初めて見せた笑みであり、心を奪われるくらい、可愛らしかった。
なんか久々すぎてすげー長くなった(蹴
若干0巻のネタが入っております。
次どうなるんだろ…(他人事