プロローグまでの主人公はめちゃ嫌な奴です。
俺は純正の赤袖茉莉ちゃんが好きだ! こんなもん絶対認めねぇ! との方がいましたらブラウザバック推奨です。
だけど一応本編の数少ないセリフを膨らませたつもりなので、どうかよろしくお願いします!
転生者 赤袖茉莉
この世界がイナズマイレブンの世界であると気が付いたのは、父が読んでいた新聞を覗き込んだ時だった。
松風天馬という、ゲーム越しに見知った名前が、紙面いっぱいに堂々と踊っている。そんな光景は、私の常識ではありえなかったからだ。
同時に、自分が転生者であるという事実も理解した。
そして私は、
「茉莉ちゃ~ん! 待った~!?」
「ナオ。ううん、全然。ほら、行こ」
サッカークラブへの道中は、いつも友達の
早くボールを蹴りたいという気持ちもあるが、ナオとの会話そのものも楽しい。
サッカーの話に華を咲かせながら歩く時間は、私にとっては楽しみの一つだった。
「ねぇねぇ、昨日の試合見た!?」
「うん、見た。剣城さん、凄かった」
「だよねだよね! 流石は元雷門のエースストライカー! あー! 私もあんなシュート撃ってみたいなー!」
「私は化身を出してみたい」
調べるまでもなく分かったことだが、この世界は円堂守世代でも、松風天馬世代でもなかった。
それどころか、初代雷門が日本一になってから、既に二十五年もの月日が経っているらしい。
円堂さんや豪炎寺さんはすっかりおじさんになり、天馬さん達は一端のプロ選手として国内外を問わず活躍している。
当然、星の生き残りをかけた戦いだの、未来の危機だの、管理サッカーだの、そういう物騒な話は存在しない。
……いや、前者については正直分からないけれど。
とにかく、今は平和な時代だということだ。
「そういえば今日って練習試合だっけ。相手どこ?」
「覚えてない。どうせ勝つから」
「うっひょ~! 茉莉ちゃんってば強気だね~!」
「うん。強気。楽勝」
「私も頑張る! 絶対勝とうね!」
ナオは気合を入れるために頬を叩いているが、私としてはそこまででもない。
今世ではまだ十歳。小学校四年生だ。精神年齢も、それ相応に下がっているという自覚はある。
普通なら、ナオのように気合を入れるのが当たり前なのかもしれない。
それでも私には、練習試合であることを差し引いても、余裕があった。
「おっ、来たな二人共!」
「おはようございます! コーチ!」
「おはようございます。アップしますね」
「ああ、しっかりな。今日は試合があるから、入念に頼むぞ。怪我でもしたら大変だからな」
「はーい!」
ジャージを脱ぎ、ユニフォーム姿になってアップを始める。
体操による柔軟、コート外周を走って体を温め、ナオと一緒に軽いパス練習。
その後はドリブル練と、的当て形式のシュート練だ。
「百発百中。当然」
「やっぱり茉莉ちゃんすごいね! 私は一発外しちゃった……」
「大丈夫。ナオも上手」
「流石は赤袖だな。星村はもう少し体幹を意識してみると良いんだが……正直、小学生としては十分過ぎるくらいだよ」
「そうですか~?」
ナオは、コーチの話をどこか不満げに聞いている。
「そうさ。上を見るのは良いことだけどな。そればかり見て、自分を叱ってばかりなのもよくない。お前にも十分才能がある! 今のプロ達にだって負けないかもしれないぞ!」
「ホント!? 私、天馬さん達みたいになれる!?」
「なれるとも! 赤袖もな」
「知ってるから大丈夫」
「相変わらず強気~……」
だって事実だから。
この世界に生まれてこの方、出来なかったことは一度もない。
サッカーを始める前も、始めてからもだ。
とても裕福な家庭に生まれたおかげで、色々なことを経験させてもらった。
特にスポーツはほとんど網羅している。そして、そのすべてで敗けたことはなかった。
天才。神童。
誰もが私をそう呼ぶし、私自身もそう思っている。
「あっ、来たよ! 稲妻EFC!」
コート外でボールを触っていると、練習試合の相手が姿を現す。
「ああ、アレ」
ナオの口から出た名前を聞いて、私は思い出す。
私達『稲妻KFC』と同じ稲妻町にあるサッカークラブ『稲妻EFC』。
名称は違えど、どちらも小学生以下を抱えるサッカークラブだ。
私はゲームに出てきたKFCの方しか知らなかったが、この時代の稲妻町は国内の他の地域と比べてもサッカー人気が段違いであるために、町内にも沢山のサッカークラブが存在する。
中でもEFCは雷門を始めとした名門中学からスカウトが来ることもある有名なクラブらしい。
「皆、集合!」
コーチの声に従い、私達KFCはコート中央に集まる。
横一列に並ぶ私達の向かいには、青いユニフォームの選手達が同じように並んでいる。
その中でも目を引くのは、取り巻きを従えながら偉そうにふんぞり返っている一人の男子だった。
いかにもガキ大将、という雰囲気。背は低いけど。
「あ! あの子だよ! あっちで有名な
「……誰?」
まったく知らない名前だ。
だがナオは、信じられないという顔をしている。
「茉莉、知らないの? 元雷門でプロだった嗚昇
「知らない。聞いたことない」
「うっそ~……」
ナオだけでなく、周囲も同じような反応をしている。
まるで私がおかしいかのような雰囲気。だけど本当に聞いたことがないのだから仕方ない。
正直、そのプロの名前すら覚えがなかった。
「おいテメェ! 聞こえてんぞ!」
少し声が大きかったのか、鎌瀬とかいう奴が噛みついてきた。
うん、やっぱり小さい。
「あっ、ごめん。でも本当のことだし」
ぶっちゃけ、モブでしょ?
「んなっ! ……まあいいさ! だったら俺がここで教えてやる! デカいだけの馬鹿女に、未来の雷門と日本を背負うエースストライカー、鎌瀬様の存在をな!」
鎌瀬と名乗った少年は、随分と気合の入った目で私を睨みつけてくる。
だけど、小さいし、モブ顔だし、あんまり強そうには見えない。
というか、雑魚臭がすごい。
「…………」
「なんだよ!」
「いや別に……ちっちゃいなって思っただけ」
「ぶっつぶしてやる!」
「やめないかお前達!」
一触即発。
喧嘩になりかけたところで、コーチの一喝が飛ぶ。
「闘争心が高いのは結構だが、そういうのはフィールドでぶつけな! ……それじゃあ、哀コーチ」
「ええ。皆やる気に満ちているようですし、早速始めましょうか」
「よし! それじゃあ皆、ポジションについてくれ!」
言われた通り、配置につく。
私のポジションはミッドフィールダー。
基本的に何でもできるし、できることは全部やる私にとっては最適なポジションだ。
『稲妻KFC』
棟方-秀山
喜多垣-赤袖-星村-東原
白岡-凍上-彼方-新庄
石守
『稲妻EFC』
嗚昇-場禍
亜捕-課素-語実-区図
武理-部李-結野孔-云虎
省弁
「それでは、
笛が鳴る。
まずはEFC側の攻撃。鎌瀬はボールを受け取るといきなり突っ込んできた。
「速い!」
抜き去られたフォワード陣からそんな言葉が聞こえてくる。
言うほどか? とは思うが、私はあえてその場から動かない。
わざわざ動かなくても、向こうからこっちに向かってくる。
「っしゃぁ! 潰してやんぜデカ女!」
「……”クイックドロウ”」
「へ?」
鎌瀬の動きが止まる。その足元にはボールはもう無い。
私の足元に収まっている。
「遅すぎ」
言い捨て、ドリブルを開始する。
取り巻き達がブロックに来るがスルー。行けそうだったのでそのまま走ってシュートを打つ。
相手キーパーは一歩も動けず、ボールはネットに吸い込まれていった。
「…………は?」
1-0。スコアボードの数字が変動する。
「ん、まずは1点」
「茉莉ちゃんナイスシュート!」
「楽勝だった」
笑みを浮かべて近づいてくるナオとハイタッチを交わし、配置に戻る。
「クソッ! あんなもんまぐれだ! 偶然だ! もっかい寄越せ!」
「う、うんっ!」
リスタート。
またしても鎌瀬がボールを持っている。
「俺の力を見せてやる! うおおおおおおお!」
暑苦しい叫び声をあげながら突っ込んでくる。
ただ流石に馬鹿じゃないようで、私のスピードを警戒し、隣の子にパスを出すタイミングを伺っているようにも見えた。
(二人がかりで突破する気なんだ)
丁度良い、やらせてみよう。
私が前に出るような動作をすると、鎌瀬は即座に取り巻きにパスを出す。
そして私の隣を駆け抜けていった。
「”ザ・ミスト”……」
「あ、あれ?」
「霧!?」
私を中心にして発生した霧に飲み込まれ、二人は動きを止める。
その隙に私はボールを奪う。
「ヤバい、またコイツだ!」
「止めろ! そいつはヤバい!」
わらわらとディフェンスが集まり始めたので、ナオにパスを出す。
そのまま走り抜けるとまたパスが来たので、シュートを打つ。
キーパーは存在意義を疑うほどに微動だにせず、ボールは再びネットを揺らした。
「やったね!」
「うん、”ザ・ミスト”使ってみたかった」
アニメで霧野蘭丸が使っていた技を使えて満足な私は、ナオと同じように笑みを浮かべる。
「クソ、クソ、クソ! もう一度だ!」
(……まだやるんだ)
そろそろ無理だとわかりそうなものだけど。
目線が冷めていくのが自分でもわかる。
「うおおおおおおお!!!!!!!」
「うるさい」
はっきり言って、ここからは蹂躙だ。
試合でもなければ練習でもない。ただ向こうが突っ込んできて、私が技で倒すだけの作業。
相手は必殺技すら持っていない。はっきり言ってどうして有名だったのかさえわからないような奴を相手に、私は淡々と技を出していく。
「でりゃあああああ!」
「”スピニングカット”……」
「どりゃああああああ!」
「”サイクロン”」
……いい加減鬱陶しくなってきた。
私が沢山技を覚えている。なのにコイツが突っ込んでくるせいでディフェンス技くらいしか使ってない。
もっとシュート技とかドリブル技とか、色々と使ってみたいのに。
これじゃあ何も楽しくない。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
膝をつき、それでも諦めそうにない鎌瀬を相手に、私は口を開く。
「あのさ……正直ウザいんだけど。さっきからずっと同じことして、なにがしたいの?」
「あぁ……!?」
「それでサッカーのつもり? だったら正直向いてないし、辞めた方が良いと思う」
「……な、なんだと!? 俺は!」
「プロの子供だか何だか知らないけど、才能無いから」
それだけ言って走り去る。
その時、視界の隅に鎌瀬と雰囲気の似た大人が見えた。
何やら呆れたような、失望したような表情を浮かべている。
まあ、私にはどうでも良いことだ。
「見せてあげる」
全身に力を籠める。フィールドに光が集まり始める。
私の体が浮いていく。その瞬間、風が吹き荒れた。
「ハァ――――――!」
私が上昇していくにつれ、風はどんどん強くなっていく。
風が突風に、突風は嵐に。
光を巻き込み、純白の竜巻は轟音を響かせ、唸る。
「…………嘘だろ? これって白竜選手の……」
流石にオリジナルには遠く及ばない。
それでもこれは紛れもなく。
「同い年のはずだろ……? なんで、なんで、プロと同じ技使えてんだよ…………!?」
正直、この程度の相手ならこの技を使う必要はない。
だけど少し鬱憤が溜まっていたこともあって、少し全力を出したくなった。
「”ホワイトハリケーン”!」
「あ、あ、あぁ……――――ッ! 敗けるかぁあああああああああああああああ!!!!!!!」
結局この後も鎌瀬の鬱陶しさが収まることはなく。
それでも私達は15-0で圧倒的な勝利を収めた。
最初は少し冷めたような空気が流れていたけど、終わってみればいつも通りの歓声の嵐だった。
「ねえ、ちょっと良いかな!?」
試合が終わった後、私とナオに向けられた興奮気味な声。
見るとそこには鎌瀬のお父さんと思しき男の人が立っていた。
「え!? もしかして夜須選手!?」
あ、やっぱりそうだったんだ。
「ああ、僕のこと知ってくれてるんだ? ……じゃあ改めて。今は雷門中サッカー部に務めています、嗚昇夜須と言います」
「わ、私、星村ナオです! お会いできて光栄です!」
「赤袖茉莉です。よろしくお願いします」
ナオと私は頭を下げる。
「よろしくね。早速で悪いんだけど、これを渡しておきたくてね」
「え、これって…………」
「雷門中のパンフレット……?」
渡されたのは一冊のパンフレットには巨大な校舎の写真が載せられている。
稲妻の形をした校章はこの世界の象徴的なものだと言ってもいい。
円堂守伝説に始まり、GOやアレスといったその後の全てのシリーズでメインを張った主人公学校。そしてこの時代において、王者の称号を欲しいままにしている強豪校。
それが雷門中だ。
当然そこのサッカー部に入ることは全てのサッカーを愛する少年少女の憧れと言える。
その学校のパンフレットを手渡されたということは。
「……スカウトですか」
「流石、察しが良いね」
「え、え、嘘!」
ナオは歓喜よりも驚きが勝っているようだ。
だけど私は嬉しさの方が大きい。歴代主人公が籍を置いた学校に入れる。
しかもスカウト。当然ではあると思うけど、それでも嬉しかった。
「元々二人の噂は聞いてたんだけど……実際見てみると凄いね! アレを見ちゃったら、せめてパンフレットくらいは受け取ってもらいたくてね」
「私達、雷門中に入れるんですか!?」
「勿論! まあ、今ここで決めちゃうわけにはいかないから。後日KFC経由で連絡すると思うから、ご両親にお話ししておいてくれるかい?」
「わかりました」
「やったーーーーーーっ!」
ようやく実感が持てたのか、ナオは飛び上がって喜んでいる。
家に帰って両親に伝えると、二人共とても喜んでくれた。
その後正式に雷門中で監督と話し、数年後、私達は雷門中へと進学した。