ロイナが気が付いた時、最初に見えたのは救護テントの天井だった。
「あれ……ここは?」
「やぁ、目を覚ましたかい」
突然掛けられた声に肩を跳ねさせながらも、その服装から自分が呼んだポケモンレンジャーなのだと当たりを付ける。
「あ、ありがとうございます、助けていただいて……」
「いやいや、こちらこそ助かったよ、虫ポケモンをいじめてる連中から森を守ってくれたんだって?」
「え、いや、その」
起きてすぐで頭が回っていないのでしどろもどろだったロイナ。
何か言おうとしてるうちに、セーブ団と名乗った輩の行為を思い出す。
虫ポケモンたちの傷付いた姿と奴らの自信満々な顔が連鎖的に浮かんだところで、目の前が真っ赤になる程の怒りがまた胸に込み上げて来る。
慌ててポケモンレンジャーに詰め寄った。
「あ、あの! 虫ポケモンたちと、あの連中は!?」
「虫ポケモンたちなら大丈夫、みんな治療は終わっているし、親ポケモンたちも落ち着かせた」
「良かった……」
その返答に心からホッとする。
ともあれポケモンたちが無事で何よりだ。
「ちなみにここを襲った連中のセーブ団、だったか?」
「あ、はい! アイツらは……」
「残念だが、どこにも見当たらなかったよ」
「そうですか……あの、一緒にいた同い年くらいの男の子は」
「ああ、彼なら情報提供をして先に行ったよ」
「やっぱり……」
何となく確信はしていたが、タンジはやはり自分のことは待っていなかったようだ。
相変わらずである。
「にしても彼、すごいね、治療薬に使うきのみが足らなくなったんだが、土と木々を見て必要なきのみの場所に案内してくれたよ」
「あぁ、タンジの家は元々きのみ農家だったんですよ。今は祖父母のお二人は農地を雇った人に管理させて会社を経営してます」
オオヤギ農園って聞いたことありませんか? と聞くとレンジャーが目を白黒させていた。
感心した様子ではぁーなるほどねぇ、とか是非うちに欲しい人材だ、とか呟いている。
オオヤギ農園は、マルクェット研究所や大手美容関係の研究部門と収穫物の売買契約を結んでいたりしてマルクェットタウンの田舎としてはそこそこの規模の会社だ。
農園はタンジの遊び場でもあって、手伝う時もあり同年代に比べれば知識は多分に豊富だ。
研究所でも色々言っていたのをロイナも覚えている。
「僕のポケモンは……」
「ああ、君のポケモンたちは救護活動を手伝ってくれてね、すごく助かったよ」
「ダネー?」
「タイレ?」
「タイ!」
タイミングよく
ロイナが目を覚ましたのが分かると走って近寄ってくる。
「あはは、くすぐったいよ。心配かけてごめんね」
「ダーネ!」
少し怒った顔のフシギダネに謝ってポケモンたちをボールへ戻す。
これ以上ここに留まっていたら救護活動の邪魔だろう。
それにタンジが先に行ったのなら自分も置いていかれるわけにはいかない。
「では、僕ももう行きます。ありがとうございました」
「なに、こちらとしても助けられたんだ、お互い様だよ」
荷物を回収して救護テントを出る。
「ああ、そうだ君」
「はい?」
いざ出発というところで声をかけられた。
「忘れるところだったよ、あの先に行った子から言伝を預かってたんだ」
「言伝、ですか?」
「何だっけか? ──『今は先に行ってさっさと追い越す。次は負けない』だったかな」
「あはは、タンジらしいや……」
先に進んでるのに追い越すってなんだ、とか、次会った時もバトルする気か、とか言いたいことは色々あるが、実にタンジらしい内容に苦笑してしまった。
なら、自分も追い越されないように次の街へ進もう。
「改めてありがとうございました」
「ああ、機会があれば支部に寄っていきな、お茶菓子くらいはご馳走様しよう」
楽しみにしてます、と笑いかけて森の出口へとロイナも向かうのだった。