ジムのあるイェシードシティを目指して、イェシード遺跡の森の出口を目指すロイナ一行。
「この森を抜けたら、いよいよあと少しでジム戦だからね」
「ダネ!」
共に歩くフシギダネと共にやる気を漲らせる。
挑戦するというのはいつだって熱が入るものだ。
おー、と盛り上がるロイナたちが森を抜けて2番道路へ出ようという辺りで、周りをキョロキョロと見回しては首を傾げる男性がいた。
何か困っているのかと思い、ロイナは声をかける。
「すいません、何かお困りですか?」
「おお、大したことではないよ。ただ、少し森が騒がしいものだったから」
「騒がしい?」
ロイナの疑問に、緊張状態とでも言いましょうか、と話を続ける。
「森が警戒を上げている様で」
「……もしかしたら」
思い当たる節があるロイナが少し前にあったので、大まかな話をすることに。
タイレーツのこと、タンジのこと、セーブ団のこと、ポケモンレンジャーのこと。
セーブ団のくだりで男性は緊張した様子を見せたが、ポケモンレンジャーの話をした辺りにはホッとしている様だった。
ちなみに、タイレーツのことも聞いてみたが初めて見た上に心当たりはないらしい。
「ほぅ、中々な冒険をしてるんだねぇ」
「いえ、僕なんてまだまだです」
「はっはっは、それでまだまだならいずれとんでもない体験をするかもなぁ」
ともあれ、と笑う男性が手を差し出してくる。
「この森を守ってくれてありがとう、私はミツタと言う」
「僕ができたことなんてほんの少しですよ、ロイナです」
ロイナが握り返す。
自己紹介が終わり、ミツタの話へ。
「ミツタさんは何をしにこの森へ?」
「私は毎週、ここで山菜を採っているんだよ」
なんでも、イェシード遺跡の森にはそれは沢山の種類の山菜があると言う。
セキミラ地方は中心の巨大なマングローブの上に積もった土で成り立つ大地だ。
セキミラ地方の内側の方は常に影が覆っているほどだ。
とはいえ全く日が差さない訳でもなく、植物たちはその恵みを漏らさず享受しようと繁殖していく。
その結果、多少冷え込みやすいが湿度が高く、様々な木々が生い茂る森が出来上がった。
そんな森ではきのみ以上にキノコが豊富なんだとか。
「キノコ……パラスやマシェードですか?」
「ふふふ、それらももちろんだが、もっと沢山いるのさ」
楽しそうに説明しながら、辺りを探し始める。
するとすぐに何かを見つける。
「ほらほら、これだよ、ノノクラゲのヒレがこの辺はとても多く取れるんだ!」
目を輝かせながら見せてくれるミツタ。
ロイナも習ってよーく目を凝らして見たら、かなり多くのヒレが落ちてるのが見える。
「手伝いましょう」
「いやいや、それは悪いよ」
「これも縁ですから。出て来て、フシギダネ、タイレーツ」
「ダネ!」
「タイレ!」
「タイレー!」
手伝うことを決めたロイナはミツタの軽い遠慮で止まらない。
パーティ総出で手伝うことにした。
今朝に合流したタイレーツのヘイも、元気に返事をしてくれる。
ポケモンレンジャーの手伝いをしていたことで、パーティにいることへの不安は無くなった様だ。
それからこの辺りに見えるノノクラゲのヒレをみんなで拾い始めた。
「ダーネ?」
「それは枯れた葉っぱだね」
「ダネ……」
「タイレ?」
「おぉ、それだよそれ、ありがとうね」
「レーツ!」
「タ、タイ?」
「ん? おぉ! これは、剥がれ落ちたパラスのキノコだ! 珍しいんだよこれは、ありがとう」
「レ、レーツ」
拾ってはミツタへ確認し、食べられるものはミツタが背負うとても大きいカゴに入れていく。
各々、ひょいひょい拾ってはミツタへ渡していく。
しばらく集めているとミツタが思い出した様に、ああ、そうだ君たち、と声をかける。
「分かってるかもしれないけど、これだけノノクラゲのヒレが落ちてるということは住処が近いということでもあるから、変に刺激しない様にね」
「ダネ」
「「タイレー!」」
ロイナのポケモンたちが元気に返事するが、肝心のロイナから返事がない。
まさか、と良くない想像をしたミツタの耳に、うわー! という声が届く。
ノノクラゲの住処には大抵、進化系であるリククラゲもいることが多い。
リククラゲのヒレもまた食材ではあるが、リククラゲは縄張りによそ者が来るのを酷く嫌う生態をしている。
敵に触手を絡ませて養分を吸い上げてしまうのだ。
よほどの長時間拘束されない限り、直接的な命の危機に陥ることは多くはないが、入院沙汰になるくらいは普通にあり得る。
これは大変よろしくない、とミツタは声のした方へ、フシギダネとタイレーツを連れて急ぐ。
(ロイナくん、無事でいてくれ!)