ポケットモンスター〜キセキ〜   作:龍崎悠司

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二章〜始めの〜
〜イェシードシティでの再会〜


 

 イェシードシティのベンチで少女がポケモンと戯れている。

 お手手を繋いで、くるくる回ってダンスを踊る。

 そのポケモンを少女は最近街で見かける様になった。

 ママは怖がっているみたいだったが、可愛いポケモンの何が怖いのか少女には分からない。

 今もこんなに楽しくまるで空で踊ってるかの様に遊んでいるというのに。

 と、ふと下に目を向ける。

 そこには、母親の姿があった。

 何故か()()()()()()()()()()に声を掛けて泣いている母親だ。

 

『ママ? ママ?』

 

 そちらへ行きたいのに何でかどんどん空へと昇っていく。

 

『返して! 返して!』

 

 泣きながら手を繋いでいる()()()()()()()()()()()にお願いするが降ろしてもらえない。

 その時、少女は理解した。

 このポケモンは自分を連れて行くつもりなのだと。

 逃すつもりがないのだと。

 だからママが警戒していたのだと。

 

『ごめんなさい、ごめんなさい……』

 

 しかし、もう何もかもが遅かった。

 このまま少女の声は誰にも届かず、連れ去られてしまうのだろう。

 

『助けて……』

 

 流した涙が地面を濡らすこともない。

 ママも地面にいる自分に話しかけるだけで、空にいる自分には気付いていない。

 そのまま目の前が暗くなりそうな時。

 

「ヘイ! 『かいりき』でヘイチョーを飛ばして!」

「タイレ!」

「ヘイチョーはそのまま『じごくづき』!」

「タイ!!」

 

 いきなり眼下から、黄色いボールの様なポケモンが飛んできた。

 そのポケモンはツノにエネルギーを溜めて、飛んできた勢いそのままに風船みたいなポケモンに体当たりをかました。

 次の瞬間、少女の視界が元に戻り、ベンチで目を覚ました。

 

「ママー!」

「アイサ!? アイサ!」

 

 意識の戻った娘を抱きしめて母親がその存在を確認する。

 娘のアイサも泣いて抱きしめ返す。

 空にいた時は感じなかった体温を感じて更に泣き声をあげる。

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「戻ったなら良かった! すぐに離れて!」

 

 少年に言われて抱えてその場を離れる母親。

 それを見送った少年──ロイナは手の平サイズに見えるほど高く空中にいるタイレーツと、その正面にいる風船のポケモン──フワンテに向き直る。

 高い上空にいるタイレーツは飛行のできない格闘タイプ。

 本来なら遥か上空にいるフワンテに攻撃は届かない。

 だが、格闘タイプらしい膂力でもってぶん投げることは可能。

 ヘイが思いっきり投げてフワンテの高度までヘイチョーを飛ばし、弱点となる悪タイプ技『じごくづき』を叩き込んだというわけだ。

 対するフワンテも連れて行くつもりだった魂を離してしまい、その原因となった障害を排除しようと攻撃体勢に入る。

 

「フシギダネ! 『つるのムチ』でヘイを飛ばして!」

「ダネ!」

「ヘイ、君も続いて『じごくづき』!」

「タイレ!」

 

 だが、そこにロイナの二の矢が放たれる。

 フシギダネがつるを器用に使ってヘイを高くぶん投げる。

 攻撃体勢に入っていたフワンテの死角から再び『じごくづき』がヒットする。

 悪タイプ技(効果抜群)の技2連撃を受けたフワンテはほとんど戦闘不能だ。負けを悟ればきっと逃げて行くだろう。

 そうしたらあとはそのまま真っ直ぐ落ちてくるタイレーツをキャッチするだけ。

 しかし、フワンテもタダでは倒されるつもりはない様だ。

 

「フゥワー!!」

 

 自身の身体を膨らませて吹き出すことで強風を起こす!

 フワンテの『かぜおこし』をまともに食らってしまい、タイレーツは飛ばされてしまう。

 

「「タイレー!?」」

 

 効果抜群の飛行タイプ技が空中で動けないタイレーツに直撃する。

 ヘイとヘイチョーが左右に大きく分かれてバラバラに飛んでいってしまう。

 ヘイチョーの脳裏にあの嵐の日が過ぎるが、今回はその結末にはならなかった。

 

「ワカシャモ! ピジョン! タイレーツを助けろ!」

「シャモシャ!」

「ピジョォ!」

 

 地面から大きく跳び上がり、落下するヘイチョーを抱えたワカシャモ。

 ヘイを空中で背中にキャッチし乗せて羽ばたくピジョン。

 この2匹がそれぞれ飛ばされたヘイチョーとヘイの元へ現れたからだ。

 そして、その2匹にロイナは見覚えがあった。

 

「まーた人助けしてんのかお前は、相変わらずだなロイナ」

「コギノリ!」

「まだ油断すんな、やる気みてぇだ」

「!」

 

 ライバルのコギノリだ。

 再会の挨拶と礼をしようとするロイナだが、コギノリはフワンテから視線を外さずに注意する。

 攻撃体勢を取るフワンテにすかさずコギノリが反応する。

 

「ワカシャモ! 相手は弱ってる、『つばめがえし』で追い払え!」

「シャッ!」

 

 ワカシャモがヘイチョーを抱えたまま、近付いてくるフワンテに攻撃を与えようと構えを取る。

 ふわふわとした動きでワカシャモに近付く。

 その速度は落下し高度の下がり始めたワカシャモより速い。

 戦闘不能一歩手前とは思えないほどだ。

 ロイナはその動きと雰囲気に強い覚悟を感じ、危険を察知するセンサーが警鐘を鳴らす。

 

「ダメだ! ヘイチョー! 前に出て『まもる』!」

「ロイナ!?」

 

 ロイナの指示を聞き、抱えられたワカシャモの腕から強引に抜け出し、ヘイチョーが盾を構える。

 

「シャモ!?」

「レーツ!!」

 

 コギノリとワカシャモが驚いた次の瞬間。

 ──ッドパァアアン!!!!! 

 フワンテが一瞬光ったと思ったら、その身体が勢いよく破裂した。

 フワンテの『じばく』だ。

 自分の体力をゼロまで削って相手に大ダメージを与える技だ。

 危険を察知したロイナとタイレーツのお陰でワカシャモにダメージは飛んで来なかった。

 だが、フワンテも二の矢を用意していたことには気付かなかった。

 タイレーツを更に爆風が襲ったのである。

 

「なっ!? タイレーツ!」

「レー!?」

 

 フワンテの特性『ゆうばく』を無理矢理発生させて、防御の隙を付く二段構えの爆発をしてきた。

 勢いよくタイレーツが飛ばされ、ワカシャモに当たる。

 

「シャモォ!」

「ワカシャモ!」

「シャモシャッ!」

 

 多少のダメージは受けた様だが、コギノリに大丈夫と返事してタイレーツをキャッチする。

 しかし、その勢いに押されてしまい、着地地点が海上になってしまった。

 

「まずい! フシギダネ、『つるのムチ』を!」

「ダ、ダネッ!」

 

 炎ポケモンが海に落ちるのはまずいとフシギダネに指示をするが、距離が遠い。

 

「ピジョンは……!」

「ダメだ、遠い!」

 

 空を飛んでいるピジョンを見るとやはりこちらも距離が遠い。

 間に合わない。

 海に落ちる。

 

「そこのワカシャモ! 防御姿勢!」

「!? シャモ!」

 

 突然飛んできた指示に従ってタイレーツを抱えながら身体を丸めるワカシャモ。

 一体誰の指示だとロイナとコギノリが声のする方を見る。

 指示を出した女性は腰の『スピードボール』からポケモンを繰り出すと。

 

「ピカチュウ、こっちに向かって『アイアンテール』で飛ばして!」

「ピッカ!」

 

 空中に出現させたピカチュウが鋼タイプのエネルギーを尻尾に蓄え構える。

 

「ピッカピカチュウ!」

「シャモッボッ!!?」

 

 防御姿勢を取った上で効果いまひとつの技を受けたというのに、目の前が揺れるほどの衝撃がワカシャモを襲う。

 予想外のダメージに危うくタイレーツを落としそうになるが、歯を食いしばって耐える。

 力に抗わずにいれば、ピカチュウが発揮したとは思えない力で陸まで飛んで来れた。

 綺麗に着地とは行かなかったが、海へ落ちる事態(ドボン)は避けられたのである。

 残るは移動のためのエネルギーを全てワカシャモとタイレーツを動かすのに使って海へ落ちるピカチュウ。

 女性が余裕を持ってピカチュウをボールに戻そうとしたところで。

 

「フシギダネ! 『つるのムチ』で引っ張って!」

「ダネェフッシェ!」

 

 今度こそフシギダネのつるが間に合う。

 しっかり捕まえたピカチュウを海に落ちない様に丁寧に陸に戻す。

 

「ピーカチュ」

「ダーネ」

 

 互いに礼を言い合って、つると尻尾でハイタッチ。

 それを見て、ひと段落とホッとしたロイナとコギノリがその場に座る。

 

「はぁ〜、何とかなったな」

「ふぅ〜、本当だね、助かったよ」

 

 コギノリとロイナも拳を合わせてお疲れ様を言い合う。

 

「ピジョー」

「タイ!」

 

 ピジョンとヘイのタイレーツも合流。

 ヘイチョーとワカシャモはダメージを受けてる様子だが、大きな怪我というほどのものではなく、全員無事だ。

 

「やー、サンクスサンクス。なんかこっちまで助けてもらっちゃったわね」

「いえ、何もしなければボールに戻されてましたし」

「ふぅん、それが分かっててつるを伸ばしたんだ?」

「なんか、身体が動いちゃいまして」

「コイツはそういう奴なんですよ、助けるってスイッチ入った時の行動力ったら」

「気付いたら走り出してるコギノリには言われたくはないかなー」

「まんまブーメラン返そうか?」

「ぷっ、アハハ! 君たち、面白いわね」

 

 いいわ、と座ったままの2人に女性が手を差し伸べる。

 

「ポケモンセンターの近くに美味しいカフェがあるの、そこで話しましょ」

「ああ、俺はコギノリ、よろしくです」

「僕はロイナです、よろしくお願いします」

「アタシはネリア、イェシードジムのジムリーダーよ」

「「え?」」

 

 ネリアの自己紹介に伸ばした手が固まる2人であった。

 

 

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