クリフォルドリーグ、そしてセフィルードリーグ。
この2つのリーグこそ、ポケモンリーグ運営委員会が
この2つは2年ずらしで開かれて、前シーズンにはクリフォルドリーグが終了しているのである。
ではこの2つのリーグ、違いは何か。
単純にバトル形式が違うのである。
クリフォルドリーグはダブルバトルのポケモンリーグ。
対するセフィルードリーグはシングルバトルのものだ。
それぞれ要求される能力や適した戦略の違いから、片方だけに参加を絞って目指すものは少なくない。
とはいえ、ロイナもコギノリもそれぞれの戦い方や目標を狭めているわけではない。
では、何故ネリアが固まったのかと言えば。
「ちょっ、マジ? 次のセフィルードって
次のセフィルード開催までの期間がとても短いからである。
これがリーグ経験者ならネリアも何も思わなかったが、ロイナもコギノリも
流石に挑戦が無謀すぎる。
「それは理解してるんですが──」
「次のクリフォルドは3年半も先で、セフィルードリーグなんて次回見送ったら5年半も先だろ? そんなの待ってらんねぇよ」
「そりゃそうかもだけど」
「まぁ、これがコギノリなので……」
「君も付き合うの?」
「──約束がありますから」
約束。
その単語を口に出した2人の空気が変わった。
「約束?」
「「最高の旅の仲間とリーグの大観衆の中で最高のバトルをする」」
これが2人が旅に出る前からしていた、たった一つの約束である。
コギノリには、自分の知らない強烈で鮮烈な強さを見せ付けたロイナとの約束はとっても大切で。
ロイナには、引っ越した未知の土地で自分を最初に認めてくれたコギノリから結ばれた約束はとっても大事で。
コギノリにとっては夢に見るほど叶えたい願い。
ロイナにとっては必ず応えたい期待。
だから、この約束は譲れないのだ。
「へぇ、いいね。すごくいいよ、君たち」
その熱が伝わったのか、2人の覚悟を、
なら、これ以上何か言うのは野暮だ。
「君たちのチャレンジを受けるよ、お先はどちら?」
「俺だ!」
名乗りをあげたコギノリに頷いて、3人はイェシードジムへ向かう。
イェシードジム。
街の東側に海を背にして建つそこへ、2人を連れたネリアが入る。
「ネリアさん、おかえりなさい」
「うん、ただいまー」
「ネリアさーん、コスメ新作出てたの聞きました?」
「それは後でチェックするつもりよ」
「ジムリーダー、ポケモンの世話は特にトラブルもありません」
「オッケー、そのままお願い」
ジムに所属しているトレーナーたちから帰還を歓迎されるネリア。
それぞれのジムには、大抵トレーナーが所属している。
場所によってはチャレンジャーを試したり、ジムで保護しているポケモンの面倒を見たり、街を警らしたりとその役割は様々だ。
その中にはもちろん、リーグ挑戦に関する手続きも含まれている。
「ネリアさん、そちらのお二人はチャレンジャーですか?」
「この子たち、これからセフィルードのジム戦だから、書類を2枚用意して」
「はい! ……え、セフィルードですか!?」
ネリアの指示にクリフォルドの書類を取り出そうとしたジムトレーナーが驚く。
先ほどのネリア同様、明らかに旅に出たばかりに見えるルーキーが1年半でリーグ挑戦というのは無謀に映るものだ。
何ならこういった時、本人にわざと挫折を与えない様に別リーグの方へ誘導するパターンが多いため、余計に驚いたのである。
「いいの、セフィルードで間違いないわ、よろしく」
「は、はい、分かりました……」
だが、ジムのトップが直接指示を出した以上はジムトレーナーは従うしかない。
新たに取り出した書類をロイナとコギノリに渡す。
「では、こちらに必要事項をお願いします」
2人は渡された書類に、名前、出身や電話番号から、現在のリーグ挑戦に有効な所持バッジ数、無効分も含めたバッジ総数、以前ラヌータウンのポケモンセンターで登録したトレーナーIDといった情報を書き込んでいく。
書き終えたそれらを受け取り、処理していくジムトレーナー。
やがてスマホと紐付けられて手続きは完了する。
「はい、これで手続きは完了です。最初のチャレンジャーは……」
「俺です」
「ああ、この子たちチャレンジミッションいらないから」
「え!? 新人の子にミッションも無しですか!?」
チャレンジミッションとは、ジムリーダーへの挑戦が妥当なものであるかチャレンジャーを試すためにジム側が出す課題である。
よくあるのはジムトレーナーを1人〜数人バトルで突破する事だが、この辺はジム毎に変わる。
時におつかいだったり、ジムの仕事の手伝いなど、課されるミッションは多岐に渡り、匙加減はジム側に一任されている。
ジムリーダー側がミッションなしでもOKを出す場合ももちろんあるが、
「いいんすか?」
「もちろん、君たちはもうクリアしてるからね」
「え、クリア?」
コギノリとロイナの疑問に首肯で答えるネリア。
ネリアからすれば、人助けをするために動いて野生のフワンテを撃退した時点で、チャレンジミッションクリア扱いに出来るほどだ。
そこに更に期待値を上げる挑戦熱を見せられて、これ以上2人を試すのは逆に失礼だとまで思っている。
「そういうことなら、おなしゃす!」
「えぇ、早速行きましょ、バトルコートに」
審判役となる手続きをしてくれたジムトレーナーを引き連れてコギノリとネリアは試合するコートへ向かう。
ロイナは途中で観戦席に行くために別れる。
「あ、そうだロイナ」
「ん?」
「コイツ、預かってくれるか?」
そう言ってコギノリがラルトスをボールから出す。
現れたラルトスはカフェの時の様にコギノリにくっ付こうとしたが、コギノリがそれを手で制す。
「ラルー♪」
「ラルトス、今はこのロイナに付いていってくれ」
「ラルッ!? ルールー!」
「お前にはこれからも一緒に戦ってもらうつもりだが、まずは俺たちの戦いを見てほしいんだ」
「ルト?」
「そうだ、だから今日はロイナと一緒に見ててくれ」
「ラスー?」
「大丈夫、ロイナは優しい奴だから、な?」
「ラル」
コギノリなりの理屈に納得したのか、渋々といった様子でロイナに付いてくる。
「よろしく、ラルトス」
「ルーラス」
「大丈夫だよ、コギノリは強いし、それに」
「ル?」
「きっと戦ってるコギノリはカッコいいから」
「ラル!」
ロイナがコギノリを褒めると、分かってるじゃないか、と言いたげに席まで先導するラルトス。
非常に分かりやすい。
席に着くとロイナもフシギダネとタイレーツをボールから出して観戦する。
「フシギダネ、タイレーツ、コギノリのバトルを見るのはとても大事になる、勉強していくよ」
「ダネ!」
「レーツ」
「レーツ!」
「ラルッ!」
早速仲良く固まって見てる様子に、コギノリはロイナに感心しながらもホッとする。
これで自分は目の前のバトルに集中できる。
「それではこれより、チャレンジャーコギノリのジムバトルを始めます! 使用ポケモンは2体、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます」
「よっしゃ! こっからが、俺の伝説の始まりだ!」
「ふふっ、かかって来なルーキー。人呼んで『快活スパーキーガール』のネリア。光って弾けて痺れさせちゃうから!」
コギノリとネリアのバトルが始まった!
「まずはお前だ! ピジョン!」
「ピジョォー!」
「行っといで、ピカチュウ!」
「ピッカー!」
それぞれピジョンとピカチュウを繰り出す。
飛行タイプと電気タイプの対面だ。
コギノリが不利となる。
(でも、コギノリがその辺のことを考えてないとは思えない。まぁ、ただのチャレンジング精神かもだけど)
何かしら策がある、もしくは今の自分がどれだけやれるのか知りたい。
そんな欲求の発露辺りだろうと長らく付き合って来たロイナは考える。
「ピカチュウ! 『でんきショック』!」
「ピーカチュウ!」
「ピジョン! 『かげぶんしん』!」
「ピジョ!」
ピカチュウから小手調べに飛んでくる電気技を、無数の分身で惑わすことで回避するピジョン。
距離のある状態での弱点攻撃など対処するに苦など無いと言外に伝えている様だ。
「お返しだ、『すなかけ』!」
「「「ピジョ! ピジョ!」」」
「ピッ!?」
「ふぅん、やるじゃん」
分身も含めて同時にかけられる砂。
ピカチュウはどれを避けていいのか分からず、思いっきり被ってしまった。
まともに目を開けられないピカチュウ。これでしばらく命中率が下がってしまった。
「ラルー!」
「上手い、けどネリアさん余裕そうだ」
「ダネ?」
応援するラルトスがテンションを上げる。
対してロイナはネリアの様子が気になる。
それに対してフシギダネが質問するが、試合の状況が動いていく。
「『かぜおこし』!」
「ピジョー!!」
「ピーカー!」
強風を起こして攻性に出るピジョン。
その強風に身体を持ってかれまいと目を瞑ったままのピカチュウが地面に張り付いて踏ん張る。
だが当然やられてばかりではない。
「ピカチュウ、狙いは付けなくていいわ。出来るだけ広くやってちょうだい。『ほうでん』!」
「ピィカー!!」
ピカチュウが目を瞑ったまま、広範囲に電気を放つ。
その勢いは凄まじく、フィールド全体を覆いかねないほどだ。
「ピジョン! 上に避けろ!」
「ピジョッ!」
『かぜおこし』を即座に中止。
天井ギリギリまで高度を上げて、電気の範囲外まで逃れる。
ピカチュウはその間に目に入った砂を落とし、開眼。
「ピッカ!」
「今度はこっちの番。『10まんボルト』」
「ピーカーチュウ!!」
「いや、主導権は渡さない! 『でんこうせっか』!」
「ジョッ!」
上空目掛けて放たれた電撃がピジョンへ届くより前に、その姿が掻き消える。
「速い!」
ロイナは目にも止まらぬ速さで消えたピジョンを一瞬見失い、当のピジョンがピカチュウの真後ろへ現れて身体ごとぶつかりに行く。
「行けっ!」
「『アイアンテール』」
「ピッカ!」
「ピジョッ!?」
だが、完璧に合わせられた『アイアンテール』が、ピジョンの側頭部へクリーンヒットする。
「ピジョン!?」
「『10まんボルト』」
「ピーカーチュウ!!」
続け様に放たれた電撃がピジョンへヒットする。
クリーンヒットと弱点技のコンボを喰らってピジョンは目を回していた。
「ピジョン! 戦闘不能!」
「くっそ!」
「これが野生のピカチュウ相手なら、君の勝ちだったかもね」
初手を制したネリアだが、思ったよりも余裕は無かった。
それほどに呼吸を合わせた良い攻撃だったのだ。
だが、その程度はジムリーダーである自身がもっと先を行っている。
格の違いを見せ付けられた様だった。
「どう? これがジムリーダーよ」
「へへっ、最っ高だな」
その上で、コギノリの瞳から熱はカケラも引かない。
もっともっと燃え上がり、獰猛な笑顔を見せる。
コギノリのジム挑戦はまだ始まったばかりだ。